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黒猫と12人の王  作者: 病床の翁


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346話 甲蟲人:蟻10

 少し時は遡り。マジックヘブンに甲蟲人が侵攻してきたと聞きつけてある男が動き始めていた。

 クロムウェル帝国より留学の名目でマジックヘブンにやって来ていた第二皇子、アルイ・クロムウェルである。

 彼は勇敢な男であった。

「甲蟲人が攻め込んできているのだろう?ここで私が出撃しなければ周りからは帝国の皇子は甲蟲人に恐れをなして街に引き籠もっていたと噂が立つだろう。」

「し、しかし、アルイ様。皇帝陛下は帝国に何かあった時の為にアルイ様をここ、マジックヘブンに留学と言う名目で亡命させて頂いているのです。ここで下手に甲蟲人に向かって行っては皇帝陛下のご意志に反します。」

 側近としてマジックヘブンに付いてきていた近衛兵が反論する。

「それはわかっておる。だが、私のせいで帝国が下に見られる事になっても困るのだ。ここはマジックヘブンの兵士達に混じって甲蟲人討伐に乗り出す時である。」

「しかしアルイ様。」

 1番年かさの近衛兵が必至でアルイを止めようとする。

 がアルイも一歩も引かない。

 そこで第三皇子から借り受けている手練れの兵士が口を開いた。

「なに。近衛兵の隊長殿。俺達がいるじゃないですか。第二皇子が戦場に出るのならば俺達が命懸けでお守りすればいい。簡単な話です。皇子が戦場に出たという実績さえあればご納得頂けるのでしょう?なら戦場に出ても無事に帰ってこれればいい。その役目は俺達がこなせばいいんですよ。」

 第三皇子から借り受けた兵士、名をカルダイヤと言う。カルダイヤはまるでカミソリで切ったかのような細い糸目をしていたが、この時だけはその細い目を見開いて進言した。

 普段あまり言葉を交わすことのなかった人物だけにいざと言うときの言葉の重みが違ってくる。

「た、確かに我々はアルイ様をお守りするのが仕事ではあるが、自ら危険地域に足を踏み入れる必要はないと申し上げているのです。」

 それでも年かさの近衛兵は反対した。

 だが第二皇子のアルイ様はカルダイヤの言葉に乗っかった。

「その者が言う通りではないか。私は街に引き籠もっていたという噂が立つことを恐れている。なら戦場に出るほかないのだ。戦場に出たのならばお前達、近衛兵が私を守ってくれれば良い。第三皇子から借り受けた精鋭の兵士がこう言っておるのだ。もともとの側近であるお前達がまさか私を守り切れないなどとは言うまい?」

「む…むぅ。わかりました。どうあってもアルイ様は戦場に出られると言うのであれば、我々近衛兵が命に替えてもお守り致しましょう。者共、それで良いか?」

「「「はいっ!」」」

 他にも皇子の護衛として付いてきていた近衛兵達も隊長の言う決定事項には反論する事はない。ただ、甲蟲人の脅威が未知数なので自分達だけで皇子を守り切れるのかが心配にはなった。

 だがアルイの意向により、マジックヘブンの兵士達に混じってアルイとその一向は甲蟲人がひしめく戦場に足を運ぶこととなった。


 甲蟲人:蟻は第二皇子はもちろん、近衛兵達にとっても楽観視出来る相手ではなく、むしろその外骨格の強度に翻弄されて1体倒すのも全員でかかってやっとと言った状態だった。

 近衛兵達の数は10名。そこに第三皇子から借り受けたカルダイヤを含む11名でアルイの警護を行っている。

 帝国内でも帝国騎士団に次ぐ実力のある近衛兵達からしても甲蟲人:蟻は脅威であった。

 だが暫くして戦場を駆ける戦士が関節部を狙えとの助言を言い回ってきた。

 これを聞いた近衛兵達は見事に巻き返しを見せた。

 ロングソードを振り下ろす甲蟲人:蟻の刃を受け流し、お返しとばかりに肘や肩を狙って剣を振るう。

 外骨格には傷付けるのもやっとだったのに、関節部を狙い始めてから明らかに戦いの流れが変わったのだ。

 もちろん関節部を狙えと言い回っているのは金獅子や銀狼なのであるが、アルイを始め、帝国近衛兵達はその事を知るよしもない。

 順調に近衛兵達が甲蟲人:蟻に対処し始めた頃、カルダイヤがポツリと呟く。


「これじゃダメなんだよ。蟲達には苦戦して貰わないと。」

 そこからのカルダイヤの動きは速かった。

 自分以外の近衛兵10名に対して後方から斬りかかり利き腕を使えなくしていった。

 突如後方から斬りかかれた近衛兵達は何が起こったのか訳がわからない。

 ただ前方からは甲蟲人が迫り来る。利き腕を使えなくなったからと言って戦いが終わるわけではない。

 利き腕に握っていた剣を持ち替えて甲蟲人:蟻に立ち向かう。

 近衛兵達が目の前の甲蟲人:蟻にかかりきりになっていた頃、カルダイヤは第二皇子アルイの首を背後から落としていた。

 第二皇子にしてもそこそこ剣術の腕はあったのだが、いきなり背後から斬り込まれる事は想定もしていなかった。

 カルダイヤの剣はいとも簡単に第二皇子の首を断ち斬ったのであった。

 近衛兵達が第二皇子の死に気付いたのは自身達が甲蟲人:蟻に撃ち倒されて地面を転がっていた時だった。

「なっ?!アルイ様…?!」

「アルイ様が亡くなられている?!」

「どうして?!後方に控えていたのに?!」

「アルイ様っ!!」

 全員が混乱の極みにいた。目の前には迫り来る甲蟲人:蟻。自分達は利き手を失い慣れぬ手で剣を持ち、なんとか甲蟲人:蟻を抑えていたはずが、後方に控えていた第二皇子の首が断たれている。

 そして甲蟲人:蟻に押し潰される中で全員が目にしたのは静かに微笑むカルダイヤの姿だった。


 第三次甲蟲人侵攻により帝国の第二皇子は、その護衛1人を残して側近達と共に命を落としたのであった。


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