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黒猫と12人の王  作者: 病床の翁


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345話 甲蟲人:蜂7

 法王は練りに練った魔力を全て魔石がくっついた杖の先端に集めた。

 杖の頭頂部にはとっておきの爆炎魔術が刻まれた魔石がある。

 準備は整った。後は確実に当てるだけである。

 そこで法王は夜王を頼った。

「黒猫殿ー!影縫いを頼むわー!」

 影縫いで動きを止めて確実に仕留める。

 その思いを受け取った夜王が素早く投擲用ナイフを取り出して甲蟲人:蜂の影へとナイフを投げる。

 勝負は一瞬。再び急降下しようとする甲蟲人:蜂の動きが止まった。今だ!

「エクスプロージョン!」

 魔石により自動的に集めた魔力ではなく、法王が自ら呪文を唱えて集めに集めた魔力を一気に解放したのである。

 その爆発は大気をも揺るがした。

 爆発の余波で地上にいた兵士達も甲蟲人:蟻達も、離れたところで魔術を放っていた魔術師連隊の面々すらも吹き飛ばされそうになる。

 爆心地の真下にいた夜王、破王、鬼王もただではすまなかった。爆発の影響で数十mほど吹き飛ばされた。

 辺りは静寂に包まれた。余りの爆撃音に皆一様に鼓膜を痛打されて一時的に難聴状態になっていたのだ。

 爆心地の真下には30mほどのクレーターが出来上がっていた。

 上空での爆発にもかかわらずである。その威力の程が知れるというものだ。


 そんなクレーターに1つの塊が落ちてきた。よく見ればそれは甲蟲人:蜂の頭部だった。

 複眼は割れて顎も吹き飛んでいる。

 辛うじて頭蓋骨が残った程度である。

 爆心地近くで立っていたのは術者の朱鮫のみ。あとは皆一様に膝を作りか、背中から倒れ込むか、両手を付いている者もいる。

 やがて静寂が晴れる。

 僅かに残るキーンと言う甲高い音は爆発の影響による耳鳴りだろう。

 次第に喧騒が戻りつつあった。

「敵将は討ち取ったでぇー!あとは蟻達だけや!気張りや!」

 法王は大音声で告げるとその場に崩れ落ちた。

 限界を超えて魔力を生成した為に精神力が尽きたのだろう。

 そこに群がろうとする甲蟲人:蟻達は復帰した破王と鬼王、夜王達により殲滅されていく。

 左肩に重症を負った破王であったが、聖王の聖術により癒されている。


 魔術師連隊の魔術や前線の兵士達、それに獣王や牙王といった遊撃隊と仁王ら聖王を守る陣形の者達によって甲蟲人:蟻もその数を大幅に減らしていた。

 魔石魔術によりあちらこちらで爆発が起こる。

 兵士達が甲蟲人:蟻の腕を切り裂き、首を断つ。

 それから甲蟲人:蟻を殲滅するのにそこまで多くの時間を要することなく、戦いは幕を閉じたのであった。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 戦いが終わって暫く後に意識を取り戻した朱鮫は先行していた魔術師連隊の第23小隊、第24小隊、第26小隊が全滅した事を告げられた。

 義理の姉、セプレーニも含まれていた。

 思えばあの川の先には兄と一緒にセプレーニの姿もあった。

 あの世で再び出会えたのだろう。

 朱鮫は静かに1人、大空を見上げる。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 戦いの後処理はマジックヘブンの兵士達に任せて、俺達は聖都セレスティアへと戻ってきていた。

「いやー。今回はまじで死んだかと思ったわ。お花畑に流れる川、対岸には死んだ兄貴の姿すら見えたんやで。ほんまに危ないところやったわぁ。」

 意気揚々と朱鮫が話す。

「本当に聖術が効かない時には命を落とされたのではないかと心配しましたよ。」

 緑鳥もその時を振り返って言っている。

「まぁなんにせよ、最後は朱鮫の魔術で片が付いたんじゃ。大金星だったな。」

 腹に空いた穴もすっかり塞がっている紫鬼が言う。

 皆一様に戦闘後に緑鳥の聖術を受けて怪我は治して貰っていた。

 戦闘中もかなりの回数聖術を行使しているはずだが、緑鳥の聖気が尽きる様子はない。ホントに計り知れない人物である。


「うむ。話を聞くに今回の敵将は技巧派だったと見える。俺様なんかは力押しでいくタイプだからな。相性は悪かっただろう。その点、白狐に紫鬼、それに黒猫ならちょうど相性も良かっただろうな。」

 腕を組みながら1人頷く金獅子。

「まぁオレもどっちかって言ったらパワータイプだしな。技巧派はやりにくい相手だな。」

 銀狼も続けて言う。

「えぇ。甲虫とも戦った私からすると、まだ刃が通りやすかった蜂の方が戦い易かったですね。朱鮫さんの魔術の影響もあるでしょうが、外骨格が割れて胸部や腹部にも刃が通りましたしね。」

 白狐もそれに続く。

「それにしても魔法は厄介だったな。魔術の影響力も再確認させられた戦いだったな。」

 俺は朱鮫の肩を叩いて言う。

「せやろ?魔石魔術は凄いんやで。ほんまに。」

「迷宮遺物も随分と役に立った。茶牛のアースクェイクには何度も助けられたしな。」

 碧鰐が言う。

「なんだ?アースクェイクというのは?」

 疑問符を浮かべた金獅子が問う。

「このバトルハンマーの能力だべぇ。地面を揺らすやつだぁ。アースクェイクって名前を翠鷹が考えてくれてなぁ。」

「単なる思いつきや。茶牛はんが気に入って使うてくれてはりますが。」

 茶牛が答えて翠鷹も頬を搔く。

「ウチが貰た細剣もなかなかに役立ちましたわ。電撃で相手を止めてちょちょいと突いてやりましたわ。」

「うん。迷宮遺物が役に立ったのなら良かったな。次は砂の迷宮に挑むか。」

「うむ。先日も砂の迷宮から湧き出たとみられるサンドゴーレムが獣王国付近に出てな。いずれにせよ調査は必要だな。」

 俺が話を振ると金獅子が反応した。

 また迷宮から魔物が溢れ出してるのか。どうなってんだろな。


 その後の話し合いでまだ王化が3時間に満たない碧鰐、翠鷹、茶牛、紺馬、朱鮫、藍鷲は居残り、残りのメンバーで砂の迷宮に挑む事にした。

 今日一日は緑鳥が聖王としての業務、各国に第3次甲蟲人侵攻についての状況報告書の作成にかかる為、明日から出発することにした。

 ドランはサイズ的に無理だけど、ヨルジュニアなら連れて行けるかな。

 連れて行けない代わりにその日はドランと目一杯遊んでやったのだった。


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