表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒猫と12人の王  作者: 病床の翁


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

339/547

338話 甲蟲人:襲来3

 その知らせは唐突に入った。

「哨戒中だった第25小隊が全滅したらしい。敵の数は一万強。マジックヘブンに向けて進軍してきているとの事だ。今は第23小隊、第24小隊、第26小隊が現地に向かっている。」

「なんやて!?第25小隊が全滅やと?プラセスはどうなったんや?逃げ帰ってきたんは誰や?」

 その報告に朱鮫は思わず起ち上がる。

「プラセス?あぁ第25小隊の小隊長か。伝令兵を逃がすために自らを囮とし、甲蟲人の群れに飲まれたそうだ。」

 朱鮫に状況を伝えに来た魔術師連合の連隊長、ドルトロスが苦々しく言葉を口にする。

「そんな。プラセスが…。ついこの前会うたばっかりやのに。それに第24小隊言うたら義姉ちゃんの部隊やんけ。」

「嘆いている暇はないぞ。お前はこの事を他の神徒に伝えてくれ。そして一刻も早く神徒達に集まって貰うのだ。」

「わかっとるわ。いますぐ連絡する。」

 そう言って通信用水晶に語りかける朱鮫。

「緑鳥殿。緑鳥殿聞こえてまっか?」

『朱鮫様ですね。この時期に連絡を頂いたと言うことはマジックヘブンに甲蟲人が?』

「せや。マジックヘブンの西側に甲蟲人の群れが約一万強迫っとるらしい。他のエリアの様子を確認して早う援軍を寄越して欲しいんや。」

『分かりました。すぐに確認して援軍を向かわせます。』

「ワイは先に戦場に向かう。敵はマジックヘブンの西側や。宜しゅう頼んます。」

『畏まりました。』

 そこで通信が切れた。


「連隊長殿も向かうんやろ?一緒に向かおうや。」

「おう。オレも連隊を整備して戦場に向かう。」

「すぐ動かせる連隊員はなんぼや?」

「いますぐとなると3千弱だろうな。追加で集められて総数5千だ。」

「敵は一万強やろ。数的には劣勢やけど魔石魔術がある限り負けとらん。行けるで!さっさと編成せいや。」

「ったく。連隊長たるオレにそんな口を聞くのはお前くらいだぞ。」

 2人は急ぎタワーを離れた。


 マジックヘブンの西側5km先に戦場は展開していた。

 先着した第23小隊、第24小隊、第26小隊が距離をとって魔術を繰り出して足止めしている。

「まだ援軍は来ないのか?我々だけでは押し切られるぞ!」

「言うてても仕方ないやろ!口より手を動かせや!」

 朱鮫の義理の姉、セプレーニの姿もある。

「「「ファイアボール」」」

 朱鮫の開発した魔石魔術によってタイムラグなしで魔術が放たれる。

 やはり魔術式の詠唱がない分、その攻撃はスムーズであり、3つの小隊、合計90名でもそれなりに善戦していた。

 しかし敵の数は一万強。甲蟲人:蟻はロングソードにサークルシールドを持ち、着実に前線へと向かってきていた。


 さらに多くの甲蟲人:蟻達を飛び越えて1体の姿形の異なる甲蟲人が前線に躍り出た。

 4枚の翼を持ち、胸部と腹部から腕を生やし、360度を見回す複眼と単眼の5つの眼を持つその姿は蜂の甲蟲人であった。

「オホホホホホッ。人間ガ魔法ヲ放チマスカ。ナラ、アタクシモ魔法デ対抗致シマショウ。ニードルショット!」

 蜂の甲蟲人が胸部から生えた右腕に持つ細剣を掲げると、その頭上に複数の針が出現し、小隊メンバーを襲う。

 ニードルショットは魔力弾を針の形にする事で貫通力を増した悪辣な魔法である。

「オホホホホホッ!アタクシノ魔法ノ威力ハイカガカシラ?ニードルショット!」

 次々と襲い来る魔力の塊の針の嵐に小隊メンバー達は貫かれ、その場に釘付けとなる。

「負けるな!こちらも魔術で応戦するんだ!」

「せや!ファイアショットで相殺するんや!」

「「「ファイアショット!」」」

 魔力針と火炎弾の応戦が始まった。

 その間にも甲蟲人:蟻達は進軍し、その距離を詰めてくる。

 甲蟲人:蜂が現れたせいで甲蟲人:蟻に向ける魔術の数が減りその進軍速度を止められない。

 やがて距離は0となり、ロングソードで斬りつけられる小隊メンバーも出てくる始末。

「援軍はまだか?!」

「もう持たないぞ!」

 慌てる小隊メンバー達。

「もう一踏ん張りや!もうすぐ援軍も来る。ひたすらに魔術を放つんや!」

 セプレーニの掛け声で魔術師達はさらに魔術の発動を早める。

「「「ファイアショット!!」」」

 それでも多くの火炎弾が魔力針と相殺される。

「オホホホホホッ!マダマダ、アタクシノ魔法ハコンナモノデハナイデスワヨ!ニードルショット!!」

 戦場に甲蟲人:蜂の哄笑の声が響く。


 そこに駆けつけたのは魔術師連合の3千名と朱鮫であった。

「なんや?蟻やないのが1体混じっとるな。敵将がもう前線に出とるんか?」

 朱鮫はすぐさま状況を把握する。

「敵将は魔法使いか?ワイも負けてられへん。王化!法王!!」

 朱鮫が声を上げると、左手人差しのリングにはまる朱色の王玉から朱色の煙を吐き出しその身に纏う。

 その煙は体に吸い込まれるように消えていき、煙が晴れると鮫を想わせる朱色のフルフェイスの兜に、同じく朱色の王鎧を身に着けた法王の姿となる。

「ファイアショット!ファイアショット!!ファイアショット!!!」

 三連続での魔術行使は王化した朱鮫にしか出来ない芸当である。

 これにより敵将と思われる甲蟲人:蜂の魔力針を全て相殺する。

「オホホホホホッ。次ノターゲットガ来タヨウデスワネ。」

 睨み合う両者。


 ここに魔法使い対魔術師の戦いが始まったのであった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ