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黒猫と12人の王  作者: 病床の翁


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337話 モーノ共和国15

 碧鰐が村に戻ってからというもの、安定の雑務に追われていた。

 何でも屋として働いていた事もあり、何かあればすぐに村人達からの相談事が舞い込んでくる。

 そんな碧鰐の元に今日飛びこんできたのは魔樹の薪集めの依頼だった。


 碧鰐の住むモードの村から北部に入ると魔樹5生息する森に入る事が出来る。

 魔樹の薪は、普通の薪と異なり延焼時間が長く村の生活には欠かせないものとなっていた。

 そんな魔樹、トレントの討伐依頼は碧鰐の元にやってくる依頼としてはよくあるもので、その作業は慣れたものである。


 碧鰐は今日も1人、森の中に入る。

 トレントに出会えたのは1時間もした頃だった。

 トレントは普段は普通の木々に擬態しており、それと知らなければ見逃してしまうことが多い。

 ただ、じっくり見てみると根が土に余り埋まっていなかったりと普通の木々との差異もある。


 そしてここで役に立ったのが新しく手に入れた魔道具のバトルアックスである。

 両手持ち出来るように柄を伸ばして両手でしっかりと柄を掴み、フルスイングでトレントの根元を狙って振り抜く。

 一撃でトレントの根元3分の1を切り裂く。トレントもやられてばかりではなく枝を伸ばして攻撃してくるが、トレントの討伐に慣れた碧鰐からすれば単調な攻撃である。

 迫ってくる枝をバトルアックスで切り裂き出来た隙を見て根元にフルスイングをぶちかます。

 その一撃で根元を3分の2も切り飛ばす。

 根を伸ばして足元を狙ってくるトレントではあるが、これも慣れている碧鰐からすれば防ぎやすい攻撃である。

 足を掴もうとしてくる根をバトルアックスで切り裂き自身に近付けないようにする。


 それと同時に枝を伸ばしての攻撃も仕掛けてくるが両手で持ったバトルアックスで根も枝も切り裂く。

 最後の足掻きで枝も根もさらに勢いを増していく。

 そこで碧鰐はバトルアックスの柄を戻し、腰に下げたウォーアックスを手に取ると両手に斧を持ち迫り来る根と枝を切り裂いていく。

 そんな碧鰐も足首を根に取られて逆さに持ち上げられてしまう。

 その間にも枝の猛攻は続き、足首に絡みついた根を切ることが出来ない。

 逆さ吊りにされたことでどんどんと頭に血が昇り顔が赤らんでいく。

 顔が真っ赤に染まった頃になってようやく枝の猛攻を押さえて足を拘束する根を切ることが出来た。

「ぷっはーっ!今のはキツかったな。」

 碧鰐は手斧をウォーアックスを腰に戻してバトルアックスの柄を伸ばして両手持ちに切り替えるとトレントの根元に向けてフルスイング。見事にその根元からの倒木に成功した。

 根元を切られたトレントは次第にその動きを止めて動かなくなる。


 碧鰐は不要な枝葉を柄を戻したバトルアックスで切り裂き、丸太状態にすると、ほどほどの長さに切り分けてから背中に背負った背負子に丸太を積む。

「む?なかなか重いな。これは年数が経っているトレントだったか。」

 トレントは魔樹であり、年数を経ることでその身を太くし、年輪を刻む。

 その為、長年生きたトレントの方が身が詰まって重くなるのだ。


 まだ背負子に余裕があった為、そのまま森の中を進む碧鰐。

 暫く歩いた碧鰐の前に現れたのは普通のトレントよりもその身を大きく成長させたグレータートレントだった。

 普通のトレントのサイズは5m程に対してグレータートレントのサイズは10m程と倍近くなる。

 その分枝葉も根も太く長くなり、トレントと比べても討伐の困難さは倍以上となる。

 碧鰐は背負子を下ろして片手にバトルアックス、片手にウォーアックスを持ち、グレータートレントに対する。


 突き刺すように迫り来る枝をウォーアックスで上へと弾く。

 その身の太さ故に簡単には切れなくなっており弾くに留まった。

 枝と共に根も足元を狙って伸びてくる。

 ランク的にはトレントがBランクに相当し、グレータートレントともなればAランクに至る。

 流石にAランク相当を生身で相手するのは不利と見た碧鰐は王化する事にした。


「王化!仁王!!」

 碧鰐が声を上げると、右手人差しのリングにはまる王玉から碧色の煙を吐き出しその身に纏う。

 その煙は体に吸い込まれるように消えていき、煙が晴れると鰐を想わせるフルフェイスの兜に碧色の王鎧を身に着けた仁王の姿となる。

 王鎧を纏った事で身体能力を数倍に迄引き上げた碧鰐の猛攻によりグレータートレントの枝と根はズタズタに切り裂かれる。

 それでもグレータートレントも負けておらず次々と枝葉を伸ばしてくる。

「うおぉぉぉお!」

 さらにペースを上げてウォーアックスとバトルアックスを振り乱す碧鰐。

 やがてグレータートレントの攻撃が下火になってくるとウォーアックスを腰に戻してバトルアックスの柄を伸ばし、両手持ちに移行する。

「せいやっ!」

 渾身のフルスイングがグレータートレントの根元に当たり幹の半ばまで刃を入れる。

「とうっ!」

 さらにフルスイング。切れ目を深くしていく。

「とうりゃっ!」

 三擊目でグレータートレントの討伐に成功。巨大な幹が倒れ込む。

 その後、枝葉と根を切り取り幹を手頃なサイズに切り分けて背負子に積み込む。

 それで背負子がいっぱいになった為、村へと戻る。


「あぁ。おかえりなさい。」

 魔樹の薪集めを依頼してきた村人が碧鰐を迎え入れる。

「結構今回は多めの丸太を持ってきたぞ。グレータートレントの丸太もあるから良い感じだろう。」

「おぉ!そいつはありがたい。いつも助かるよ。ありがとねぇ。」

 背負子を下ろして村人に丸太を渡す。

「ふぅ。これで今日の依頼は終了だな。」

 依頼を完遂して愛する妻子の元へと帰って行く碧鰐であった。


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