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黒猫と12人の王  作者: 病床の翁


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32話 激突1

 俺達が城塞都市モーリスに到着したのは聖都セレスティアを出て3日後の事だった。

 2人ずつを乗せて夜間も走らせた馬には随分と無茶をさせてしまった。

 すでにヘトヘトである。

 到着したのは南門で今は北門付近での戦闘を継続しているとの事だった。

 俺達は増援に来た傭兵団だと言って門を開けて貰った。

 街の南側には住民達が多く避難していた。

 魔族軍到来と共にすぐに避難指示が出たらしい。

 避難場所も最初から計画されていたそうで、この街の指導者は先を見越せる優秀な人物である事がうかがえた。

 馬を厩舎に預け、俺達はまず戦闘中の兵士のまとめ役に状況を聞くことにした。

「城塞都市モーリスの兵士長をしております、ミジャーノと申します。」

 どこか気疲れしたような頬のこけた兵士が挨拶してくれる。

 ここは代表して銀狼が話す。

「オレ達は聖都から来た傭兵団だ。魔族軍の侵攻を受けていると聞いてやって来た。戦況の方はどうなっているんだ?」

「ここでの増援は嬉しい事ですが相手は相当なものです。傭兵ランクをお聞きしても?」

「オレ達はAランク、Bランクで構成されている。だがBランクと言っても戦力的には問題ないと考えてくれて構わない。Aランクの魔物でも容易く相手取る事が可能だ。」

「おぉ!それは頼もしい。実は相手側にはゴブリン、ホブゴブリンなどの低ランクもおりますが、オーガ、トロールなどの高ランクも多数存在しておりまして。なぜか魔族軍は3㎞付近に陣を取り、今は低ランクの魔物に数名のオーガ、トロールを小出しにして城門に迫っております。こちらが疲弊するのを待っているのかもしれませんが。」

 ミジャーノが説明してくれた。

「そう言う事なら早速我々も戦場に出よう。そちらの指揮下に入るのではなく勝手にやらせてもらうが構わないか?」

「急遽来られた傭兵の皆さんを指揮出来るほど、私も大規模戦闘に慣れておりません。皆さんには遊撃として加わって頂いた方がいいでしょう。」

「ならこちらはこちらでやらせて貰う。」

 銀狼はそう言ってミジャーノに戦闘が行われている北門へと案内を頼む。


 北門付近では100名程度の兵士とゴブリン、ホブゴブリンが戦っていた。

 門は固く閉じられており、衛兵用の出入り口から兵士の出し入れを行っている状態だった。

 現在戦闘している中にはオーガやトロールと言った大型の魔物はいない。

 が、確かに少し離れた場所に北門からでもわかる巨体を揺らした魔物達が待機している。

「前にガダンを襲った単眼種はいないようだな。」

 銀狼が言う。

「俺様達は先に待機する大型種を狙っていこうではないか。戦闘がいつまで続くかわからん。いつ魔人が現れてもいいように王化は控えておこう。」

 金獅子が皆に言う。

「拙者の武がどこまで通じるか試させて貰おう。」

 いつもあまり喋らない紅猿が言って先頭を走る。

 見た目は完全におじいちゃんであるがその駆けるスピードは速かった。

 正直戦えるのか心配だったがなんの問題もなさそうだった。

 俺達は直近で戦う兵士達を置き去りにし、後方に控える大型種に向けて全員で駆けた出したのだった。


 元々は一度に相手取るオーガは2体までと自身に枷をしていた俺だったが、皆との旅をしていく中で対魔物戦闘にも慣れてきた。

 その為、ヨルに代わる事なくオーガと対峙する。

 ヨルはまだ俺のフードの中で、いつでも出られるように待機している。

『危なくなったらすぐに王化しろよ』

「わかってるって!」

 俺は言いながらもオーガの繰り出す棍棒の一撃を避け、その首筋にナイフを走らせる。

 他の皆もなんなくオーガ達を相手にしている。

 銀狼がその手にした双剣で足元を切りつけ、沈んだところを首を狩るように斬撃を走らせる。

 金獅子が手した幅広の巨大な大剣でオーガの腰辺りを一閃、真っ二つにする。

 蒼龍が手にした三又の槍で棍棒を振るってきたオーガの一撃を避けながら顔面を一突きする。

 紅猿が握った棍を振り回しながらオーガの眼球を一突きし、脳まで破壊する。

 黄豹が手にした武器でオーガの首を刎ねる。

 ありゃなんて武器だ?トンファー見たいな形状だが刃が付いている。

 特注品かもしれない。

 紫鬼は橙犬を守るように位置し、守られた橙犬が火炎魔術をオーガやトロールが溜まった所へとブチかます。

 対するオーガ、トロールの数は100体余り、このまま行ければ問題なく殲滅出来るだろう。

 と思っていたところで、4mは越える太った体つきのトロールと他のオーガ達よりも緑色の濃ゆい体をした4、5m級のオーガ3体が前に出てきた。

「ニンゲン…コロス」

「コロス」

 人語を話している。

 魔人化しているのだ。

「気をつけろ!そのオーガは普通のオーガじゃない!Sランクとも言われるオーガキングである!」

 紅猿が叫び注意を促す。

 魔人化したオーガキングとやらはただ体が大きいだけではなくその膂力も上がっているようだ。

 俺達との戦闘で傷ついたオーガを手にした棍棒で殴り飛ばしながら俺達に近付いてくる。

 Sランクともなれば普通には相手取る事は難しい相手だ。

 そもそもSランクとはAランクよりも遥かに強い魔物を指し、その上限はない。

 つまりAランクより強ければすべてSランクなのだ。有名なところではドラゴンなどがSランクに属するが、レッサードラゴンもハイドラゴンも同じくSランクという訳だ。

 つまりSランクとも言われるオーガキングとやらはどれほどの戦闘力を持っているのか未知数という事だ。

 金獅子が叫ぶ。

「Sランクともなれば普通に対処するのは難しいだろう。皆、王化し対応せよ!」

 自身が獣王国の獣王戦士団団長を務めるだけあって適格な指示を出す金獅子。

 ここで俺もヨルに代わる。

「任せたぞ。ヨル!。」

『任せろ。クロ!』

「王化!夜王!!」

 俺の左耳にしたピアスにはまる黒色の石から漆黒の靄が発生し、全身を包みこむ。

 その靄が晴れた後には猫の意匠を施した兜に漆黒の鎧を纏う夜王がいた。

 俺は体の制御権を失い、膜が張ったよな視界から戦況を観察する。

「Sランクだろうと儂に任せろー!」

 ヨルは影収納から黒刃・右月、黒刃・左月を取り出し、両手に構える。

 いつも通り左手は逆手、右手は順手で左手を前方に出す形で構える。

 銀狼が王化し、狼を象った兜に銀色に輝く王鎧を身に着ける。

 金獅子も王化し、獅子を想起させる兜に金色に輝く王鎧を身に着ける。

 蒼龍が王化し、龍の意匠が施された兜に蒼色の王鎧を身に着ける。

 紅猿が王化し、猿をイメージさせる兜に紅色の王鎧を身に着ける。

 黄豹が王化し、豹を想わせる兜に黄色の王鎧を身に着ける。

 後方にいる橙犬はまだ王化しないようだ。

 同じく後方まで来た普通のオーガを相手取る紫鬼もまだ王化していない。

 銀狼が繰り出した剣閃を難なく弾くオーガキング。

 その体の防御力も上がっているらしい。

「うぉー!」

 より重い一撃を放つ銀狼、今度はその左腕に斬り込みを入れるが切断までは至っていない。

 よほど固いのだろう。

 それでも構わず次撃を叩き込む銀狼。

 同じ個所にヒットしたらしく腕を切断する事に成功する。

 が、残った右腕により殴り飛ばされる。

 大剣を振り回し、オーガキングの腰上を狙う金獅子。その一撃は深く腹部を切り裂くがオーガキングは気にしていないかのように手にした棍棒で金獅子を殴り飛ばす。

 銀狼も金獅子もたいしたダメージにはなっていないようで起き上がりすぐにまたオーガキングに向かっていく。

 紅猿と黄豹は複数のトロールを相手に暴れまわる。

 紅猿が手にした棍でトロールの頭を突いて爆散させる。

 黄豹が手にした武器でトロールを切り刻む。あの武器はなんて名前だろう。

 戦闘が終わったら聞いてみよう。


 ヨルも固い皮膚を持つオーガキングに苦戦していた。

 黒刃・右月で左足を切りつけ、迫ってきた右腕を黒刃・左月で弾く。

 切り傷は出来るもののすぐさま切断には至らず、何度も切りつける。

 やがてずたずたになった左足で立ってはいられなくなったオーガキングは膝をつく。

 こうなれば後はいつものパターンである。

 ヨルは飛び上がると首筋に向けて2本のナイフを走らせる。

 が一撃ではその首を掻ききれず、2度3度と繰り返す。

 やがてその首筋を切断されたオーガキングは首元を抑えながら倒れ込む。

 出血が激しい。

 動脈を切断したのだろう。

 こうなればもう終わりである。

 ヨルは近場のトロールに狙いを定めて走り出す。

 3m以上飛び上がりトロールの首筋にナイフを一閃。

 その首を飛ばす。


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