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黒猫と12人の王  作者: 病床の翁


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327話 愚者の迷宮19

ヤバかった。首の骨を折られたらしい。

 緑鳥の聖術でなんとか持ち直したがあのままだったら死んでいたかもしれない。

 俺が瀕死の状態だった間にも白狐と蒼龍が果敢に攻める。

 2人同時の攻撃には文字通り手が回らず腹部や胸部に攻撃が当たる。

 だが、やはり皮膚が硬い。

 思ったようにダメージを入れられない。

 さて、どうしたもんかな。


 ここで俺は思い出した。

 ヨルがやっていた魔術剣だ。

「魔素よ凍れ、凍れよ魔素よ。氷塊となり給え。アイス!」

 黒刃・右月の刃に氷の刃が伸びる。

「魔素よ凍れ、凍れよ魔素よ。氷塊となり給え。アイス!」

 黒刃・左月の刃にも氷の刃が伸びる。

 これで斬れば凍傷を負わせられるはずである。

 俺は人型ベヒーモスへと駆け寄った。


「しゃっ!」

「ジャッ!」

「ざっ!」

「面倒くせぇ!」

「しっ!」

「ザッ!」

「ふっ!」

「面倒くせぇな!」

 3対1の攻防が始まった。

 白狐も蒼龍も慣れてきたのか人型ベヒーモスの攻撃を見事に防ぎ始めた。

「ったく。寸勁。」

 白刃・白百合で受けた白狐の体が僅かに浮く。

「なんで受けンだよ。面倒くせぇな。穿脚。」

 続く爪先蹴りも白刃・白百合で受け止めたい。

 その間にも俺はアイスの魔術を纏わせた黒刃・右月と黒刃・左月で人型ベヒーモスを滅多斬りにする。

 僅かに凍りつく体。微かにだが動きが悪くなっていってる気がする。やはり普通の攻撃より魔術を纏わせた攻撃の方がダメージが通っている気がする。

 相変わらず傷は浅いけども。


 白狐が斬る。蒼龍が突く。俺が斬る。

 そんな猛攻を受けながらも時折反撃を見せる人型ベヒーモス。

「旋風脚。」

 人型ベヒーモスが跳び上がりながらの回し蹴りを放ってきた。これには3人共に距離を取って避ける。

 そこで間スペースに人型ベヒーモスが入り込む。

「寸勁。」

 ガードしようとするも間に合わず腹部に痛打を受けて転がる俺。

「親愛なる聖神様、その比護により目の前の傷つきし者に癒やしの奇跡を起こし給え。ヒーリング!」

 緑鳥が言うと手にした錫杖にはまる魔石が輝き出し、温かな光が俺を包み込む。

 もう何度聖術を受けたかもわからない。

 緑鳥がいなかったらとっくに終わってたな。

 そんな事を考えつつも再び人型ベヒーモスへと向かう。


 長い長い戦闘に光が差したのは偶然だった。

「旋風脚。」

 跳躍しながらの回し蹴りを放つ人型ベヒーモスの左腕に白狐の放った斬撃が入った。

「クッ!痛ぇな。面倒くせぇ。」

 それを痛がる様子の人型ベヒーモス。大型だった時に傷付けた左腕は皮膚が破け肉が見えている。

 そこになら攻撃が入るのだと分かった。


「攻撃が入る場所があるなら私の出番ですね。」

 白狐が怪しく構える。

「まずは言葉を頂きます。破滅の刃、一の型:沈黙。」

 白狐の繰りだした斬撃が左腕の傷に当たる。

「…!…!?」

「ふふふっ。声が出ないでしょ?一の型は相手の声を奪うんです。」

「…!」


「次行きますね。破滅の刃、二の型:盲目。」

 またしても左腕の傷に剣閃が当たる。

「…?!」

「どうです?見えなくなりました?二の型は相手の視界を奪うんです。」

「…!」

 むやみやたらに振るわれる拳が空を切る。


「次、破滅の刃、三の型:難聴。」

「…。」

「何も聞こえなくなりましたよね?三の型は相手の聴力を奪うんです。ってこれも聞こえてないか。」

 人型ベヒーモスが蹴りを繰りだすも空を切るばかり。


「では次、破滅の刃、四の型:幻視。」

「…?!…!…!!」

「四の型は視界を奪った上で幻覚を見せるんです。今頃最も強大だと思っている相手が襲い掛かってくる幻覚を見ていることでしょう。」

 人型ベヒーモスは空中に向かって拳を突き出し、蹴りを放つ。あたかも底に敵がいるかのように。


「次行きます。破滅の刃、五の型:睡眠。」

「…Zzz。」

 白狐の白刃・白百合が左腕の傷に当たったと思った瞬間。人型ベヒーモスが眠りについた。立ったまま寝ている。

「五の型は強制的に眠りにつかせます。」

「…Zzz。」

 人型ベヒーモスは眠ったままだ。


「破滅の刃、六の型:麻痺。」

 白狐の切っ先が人型ベヒーモスの左腕の傷を抉る。

 すると人型ベヒーモスが痙攣し始めた。全身痙攣である。

「六の型は相手を麻痺させます。」

「…!」

 傷を抉られた痛みで睡眠が解けたようだが、代わりに全身が麻痺し、痙攣している。


「破滅の刃、七の型:狂化。」

「…!…!!…!!!」

「七の型は相手を凶暴化させてしまいます。バーサーカーってやつですね。複数の敵が相手の場合しか役に立ちません。」

「…!…!!」

 麻痺した体を懸命に動かそうともがく人型ベヒーモス。


「次。破滅の刃、八の型:錯乱。」

 ここで麻痺が解けたのか、人型ベヒーモスは自らの体を掻きむしり始めた。

「…!…!!…!!!」

 あれほど強固だった皮膚も同じく強固な指先に引っ掻かれて傷を作る。

「八の型は相手を錯乱させます。ここまで来たらあと一息です。」

 自らを傷付けつつ、空中に向かって拳や蹴りを繰りだす人型ベヒーモス。


「では最後に、破滅の刃、九の型:猛毒。」

 人型ベヒーモスが自らを引っ掻いて作った新しい傷跡に白狐が白刃・白百合を突き入れる。

「…!」

 人型ベヒーモスが倒れた。大きく痙攣を繰り返す。

「九の型は致死性の猛毒を相手に与えます。この破滅の型は一から始めないといけないから使い処が難しいんですよね。」

 白狐が独り言ちている間に人型ベヒーモスは動かなくなった。


 こうしてSSランクのベヒーモスは撃ち倒されたのであった。


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