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黒猫と12人の王  作者: 病床の翁


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324話 愚者の迷宮16

 未だ敵対行動のないベヒーモス。

 その足元に向けて白狐が斬り込み、蒼龍が突く。しかし、ダメージらしいダメージはない。微かに傷がつく程度。

 こいつはただの物理攻撃では倒せそうもない。

 俺は早速切り札をきる。

「王化、呪王!」

 言った途端に左手小指にはめたリングの橙色の王玉から橙色の煙が立ちのぼり俺の体を覆い尽くす。

 そしてその煙は体に吸い込まれるように消えていくと、残ったのはいつもの全身黒の鎧ではなく、所々に橙色の線が入った王鎧に身を包んだ呪王形態の俺が現れる。


 物理が効かないなら魔術である。

「魔素よ集まれ、集まれ魔素よ。火炎の力へとその姿を変えよ。」

 黒刃・右月の先に魔法陣が描かれ始める。

「魔素よ燃えろ、燃えろよ魔素よ。我が目前の敵を火炎となりて打倒し給え!ファイアボール!」

 2人が攻撃をしている前脚とは逆を狙って小手調べの初級魔術を放った。

 ドンッ!ボッ!

 着弾したファイアボールは皮膚で弾け軽く燃え上がる。


 これを嫌がったのか燃える脚を上げその場で足踏みしだしたベヒーモス。

 その一歩一歩が地面を揺らす。まるで迷宮自体が振動するかのように足元が定まらない。

 白狐も蒼龍もその場にしゃがみ込み、揺れが収まるのを待つばかり。

 やがて燃えだした脚の火が消えると足踏みを止めたベヒーモス。

 次の瞬間、その巨体からは考えられないほど素早くベヒーモスが振り返った。

 バチンッ

 最初はなんの音かわからなかった。

 だが壁面に叩き付けられる白狐を見て気付いた。

 振り返った時の勢いで地面まで垂れる尻尾で白狐を叩いたのだ。

 壁にもたれる白狐を見やると明らかに左腕が折れているのがわかる。

 たった一撃でこれだ。やべぇ相手だと改めて思った。


「親愛なる聖神様、その比護により目の前の傷つきし者に癒やしの奇跡を起こし給え。ヒーリング!」

 緑鳥の声が後方から聞こえる。白狐の骨折を治しているのだろう。

 火炎属性はそこまで効いてる様子がなかった。次は氷結属性で皮膚を切り裂いてやる。

「魔素よ集まれ、集まれ魔素よ。氷塊の力へとその姿を変えよ。」

 黒刃・右月の先に魔法陣が描かれ始める。

「魔素よ凍れ、凍れよ魔素よ。我が目前の敵を氷結した槍となりて打倒し給え!アイスランス!」

 先程燃やした脚に向けて1mほど、直径30cmの氷で出来た槍が飛ぶ。突き刺さる氷の槍。そこで初めてベヒーモスが声を上げた。

「ブボォォォォオ!」

 空気が切り裂かれるような大声。

 フェンリルの鳴き声のように明確な質量を持って俺達に襲いかかる。

 弾かれたように後方に吹き飛ぶ蒼龍。その先には緑鳥の癒やしを受けている白狐がいる。

 ドンッ

 2人が接触する音がする。

 ふと見やると回復した白狐が蒼龍を受け止めていた。

 氷結属性は効いたようでベヒーモスの脚からは血が流れている。

 ここが攻め時だろう。

 俺はさらに強力な氷結魔術を唱える。


「魔素よ集まれ、集まれ魔素よ。氷塊の力へとその姿を変えよ。」

 黒刃・右月の先に魔法陣が描かれ始める。

「魔素よ凍れ、凍れよ魔素よ。我が目前の敵を氷柱となりし槍となりて打倒し給え!アイシクルランス!」

 今度の魔術で構築した氷の槍は長さ5mほど、直径60cmほどの氷柱である。

 その槍がベヒーモスの足元へと飛ぶ。

 先程付けたアイスランスによる傷跡に沿うように巨大な氷柱が突き刺さる。

「ブボォォォォオ!」

 再びベヒーモスがその場で足踏みを始める。

 揺れる迷宮。立っていられない。

 揺れが収まるより速くベヒーモスが振り返る。

 尻尾が来る!分かっていても足元がおぼつかず避けることも出来ない。

 バチンッ

 骨まで響く音がした。次の瞬間には壁面に体が叩き付けられていた。

 ぐっ。左足が折れた。立っていられず座り込む。

 揺れが収まると白狐と蒼龍がベヒーモスへと走り寄るのが見えた。


「親愛なる聖神様、その比護により目の前の傷つきし者に癒やしの奇跡を起こし給え。ヒーリング!」

 緑鳥が呪文を唱えると手にした錫杖が光り出し温かな光が俺を包む。

 変な方向へと折れ曲がっていた足が元に戻る。

「さんきゅ。緑鳥。助かる。」

「いえ。わたしが出来ることは回復のみですから。」

「あっ!そうだ。魔導砲!あれで氷塊を放ったら魔術で飛ばすよりも強力なんじゃね?」

 そこで俺は氷塊を生み出す魔術を唱える。

「魔素よ凍れ、凍れよ魔素よ。氷塊となり給え。アイス。」

「アイス。アイス。アイス。アイス。」

 10個ほどの1m弱の氷塊を作った俺はその氷塊を緑鳥に渡す。

「これでアイツの脚を狙ってくれ。あの巨体だ。脚の1本も潰せば立っていられなくなるだろう。」

「分かりました。足元ですね。」

「あぁ頼んだ。」

 そこから俺もベヒーモスへと走り寄る。

「魔素よ集まれ、集まれ魔素よ。氷塊の力へとその姿を変えよ。」

 黒刃・右月の先に魔法陣が描かれ始める。

「魔素よ凍れ、凍れよ魔素よ。我が目前の敵を氷柱となりし槍となりて打倒し給え!アイシクルランス!」

 直径60cm、長さ5mほどの氷の槍を生成、足元に狙いをつけて射出する。

 先程の傷跡に見事に当たり、その氷柱は半ばまで脚に刺さる。

 皮膚は硬いが1度傷付けてしまえば中の肉はえぐれるようだ。

 その傷に緑鳥が追い打ちの魔導砲からの氷塊を叩き込む。

「ブボォォォォオ!」

 効いている。

 やっぱり物理攻撃が効かないなら魔術だな。

 ようやく攻略法が見えてきた。

 が、ここにきてベヒーモスが新たな動きを見せた。


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