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黒猫と12人の王  作者: 病床の翁


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323話 愚者の迷宮15

 さて、いよいよやってきました地下100階。

 作りは地下50階同様に階段下に真っ直ぐ伸びる廊下とその先には広大な広場が待ち受けている。

 大体100m四方だろうか。結構な広さがある。

 そんな広場の中央には目算で20mほどの河馬のような巨大な口に、犀のように鼻の上には巨大な角が2本生えており、頭には牛のような立派な角が左右に生えている巨大な生物が鎮座していた。

 それを見た緑鳥が言う。

「まっ。まさか。実在していたなんて。」

 どうやらこの生物に心当たりがあるらしい。俺は見た事も無かったから普通に聞いた。

「知ってるのか?なんだ?こいつは?」

「知らないんですか?あの容姿はまさに伝説のSSランク。ベヒーモスそのものじゃないですか。」

 ベヒーモス?聞いた事も無いな。

「ベヒーモスって言ったらあれですか?その足踏みは地を割り、その鳴き声は大気を震わせるってやつです?」

 白狐は聞いたことがあるらしい。

「そうです。曰く河馬のような口元に犀のような角を持ち、牛のような立派な角を生やした巨大生物。まさに目の前のあれがそうですよ。」

 興奮気味の緑鳥。

「ふむ。我々が降りてきたと言うのに戦闘態勢にもならないか。よほどだな。」

 蒼龍が呟く。

 確かに俺達が広場に足を踏み入れたと言うのにそのベヒーモスとやらはまだ広場の中央に座っていた。


「ひとまず王化して突っ込むか?」

 俺が言うと

「SSランクですよ?!この4人で挑む気ですか?」

 緑鳥が驚きの声を上げる。

 だって見た目そこまで強そうじゃないんだもの。4人で倒せそうじゃね?

「4人じゃキツいか?」

「別の日に改めて他の皆様も一緒に来て挑みましょうよ。」

 そこで白狐が声を上げる。

「いや。やってやりましょう。私も元SSランクとしての意地があります。やってやりますよ!」

 そう言うと1人、鞘に収めた白刃・白百合の鯉口を切ってベヒーモスへと走り寄る。

「王化!破王!!」

 白狐が叫ぶとの右耳にしたピアスにはまった真っ白い石から、白い煙が立ち上り白狐の姿を覆い隠す。

 次の瞬間、煙は白狐の体に吸い込まれるように消えていき、残ったのはどことなく狐を思わせる真っ白いフルフェイスの兜と、同じく真っ白い全身鎧に身を包んだ破王の姿となって走る。

「先手必勝!抜刀術・飛光一閃!」

 ガキンッ

 高速で振り抜かれた刀により放たれた一閃はベヒーモスの腹部に当たる。

「抜刀術・閃光二閃!」

 ガキンッガキンッ

 抜き身の白刃・白百合を目にもとまらぬ速度で振り上げるとベヒーモスの腹部を2度切り裂く。

「抜刀術・発光三閃!」

 ガキンッガキンッガキンッ

 その剣閃が通った先ではベヒーモスの腹部が3度に切り裂かれた。

 切り裂かれた?あれ?見事に腹部に吸い込まれていった白刃・白百合だったが、ベヒーモスの腹部には微かな切り傷が残っただけ。

「硬いですぅ。ものすごぉーく硬いですよ。こいつ。」

 白狐は改めて少し距離を取った。


 そこで初めてベヒーモスが動き出した。

 折っていた前脚を立てて、上体を起こすと、続けて後ろ脚を立ててゆっくりと起ち上がる。

 見た目通り愚鈍な印象だ。

 足はそこまで長くはない。だが、巨木のような太さの足は2mはあるだろう。

 立ち上がったベヒーモスの体は地上から背中までで10mほどになった。

 おのずと目線も高くなり、すぐ傍にいる白狐の姿などは目に入っていなそうである。

「ったくいつも1人で先行しやがって。俺らも行こう。王化、夜王。」

 俺が言うと左耳のピアスにはまる王玉から真っ黒な煙を吐き出しその身に纏う。

 その後煙が体の中に吸い込まれるように消えていくと猫を思わせる真っ黒な兜に、同じく真っ黒な全身鎧を身に着けた夜王の姿となる。

 俺は影収納から主力武器である黒刃・右月と黒刃・左月を取り出した。

「王化!龍王!」

 蒼龍が言うと胸に下げたネックレスにはまる蒼色の王玉から蒼色の煙が吐き出される。

 その煙は体に吸い込まれるように消えていき、残ったのは龍をモチーフにしたような兜に蒼色の全身鎧を纏った蒼龍の姿となり駆け出した。

「あぁんもうっ!王化。聖王!」

 緑鳥が王化し、額に輝くサークレットにはまる緑色の王玉から緑色の煙を吐き出しその身に纏う。

 その煙は体に吸い込まれるように消えていき、煙が晴れると緑色の鳥をイメージさせるフルフェイスの兜に緑色の王鎧を身に着けた聖王の姿となる。

「わたしは皆様で対処しようって言いましたからね!」

 いつになく緑鳥が強い語気で言う。

「大丈夫だって。俺らならやれるさ。」

 何の根拠もないがとりあえず緑鳥を宥めた俺は、蒼龍に続いてベヒーモスの元へと駆け出す。


 一方、すでにベヒーモスの足元に到着している白狐が何度も白刃・白百合を振るいベヒーモスの脚に斬りつける。

 ガキンッ!ガキンッガキンッ!

 まるで金属同士が当たるような音が響く。

「こいつ。とんでもなく硬いですよ。」

 白狐がぼやく。と、そこに蒼龍が到着。

「龍覇連突!」

 三叉の槍よる高速の刺突の連続刺突を繰りだす蒼龍。

 ガッゴッガッガッガキンッ!

 こちらも硬質な音を響かせるのみでベヒーモスの脚には僅かな切り傷がついただけ。

「硬いな。まるで金属だ。」


 未だベヒーモスは立ち上がっただけ。明確な敵対行動もなし。

 白狐も蒼龍もその身を傷付けられない相手にどう対処すればいいのだろうか?


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