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黒猫と12人の王  作者: 病床の翁


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322/549

321話 愚者の迷宮13

 やって来ました地下95階。

 ここに来て出てくる魔物がSランクになった。

 今も目の前にはフェンリルが行く手を阻むように立っている。

 フェンリルは体長5m程の巨大な狼型の魔物だ。その体には風を纏い、風系統の魔法も使用する。

 そんな奴の相手は生身では厳しい為、全員王化して挑む。


「王化!破王!!」

 白狐の右耳にしたピアスにはまった真っ白い石から、白い煙が立ち上り白狐の姿を覆い隠す。

 次の瞬間、煙は白狐の体に吸い込まれるように消えていき、残ったのはどことなく狐を思わせる真っ白いフルフェイスの兜と、同じく真っ白い全身鎧に身を包んだ破王の姿となった。

「王化!龍王!」

 蒼龍が言うと胸に下げたネックレスにはまる蒼色の王玉から蒼色の煙が吐き出される。

 その煙は体に吸い込まれるように消えていき、残ったのは龍をモチーフにしたような兜に蒼色の全身鎧を纏った龍王の姿となった。

「王化。聖王!」

 緑鳥が王化し、額に輝くサークレットにはまる緑色の王玉から緑色の煙を吐き出しその身に纏う。

 その煙は体に吸い込まれるように消えていき、煙が晴れると緑色の鳥をイメージさせるフルフェイスの兜に緑色の王鎧を身に着けた聖王の姿となる。

「王化!夜王!!」

 最後に俺が叫ぶと左耳のピアスにはまる王玉から真っ黒な煙を吐き出しその身に纏う。

 その後煙が体の中に吸い込まれるように消えていくと猫を思わせる真っ黒な兜に、同じく真っ黒な全身鎧を身に着けた夜王の姿となる。

 俺は影収納から主力武器である黒刃・右月と黒刃・左月を取り出した。


 フェンリルは早々に一鳴きすると前脚で前面の空間を一薙ぎし、風の刃を放ってきた。

「アオォォォォン!」

 見えない刃が俺達を襲うも王鎧によりダメージはない。

 そこで白狐が鞘に入った白刃・白百合を構えてフェンリルに近付く。

「はっ!」

 白狐が抜刀術で白刃・白百合を一閃させる。

 フェンリルは風に乗ったかのようにふわりと浮き上がり白狐の一閃を避ける。


 そこに追いついた蒼龍が三叉の槍を突き出してフェンリルの前脚を穿つ。

「アオォォォォン!」

 風の壁が蒼龍に迫り、その体を吹き飛ばす。

 俺は影収納から投擲用ナイフを5本取り出した。

 白狐がフェンリルに追いつく。

 そこで俺はフェンリルの影に向けて投擲用ナイフを投擲する。

「影縫い!」

 再び白狐の一閃を避けようとしたフェンリルの体が縫い止められてその動きを止める。

 そこに白狐が白刃・白百合を一閃。蒼龍が穿った前脚を膝下から切り飛ばす。

「キャイィィィン!」

 まるで子犬のように鳴き叫ぶフェンリル。

 そこで影縫いの効果が消えて後方に跳び逃げるフェンリル。

 それに追いすがる白狐が白刃・白百合を振るう。

 それに合わせて再びフェンリルの影に向けてナイフを投擲した。

「影縫い!」

 再びフェンリルの動きが止まる。

 白狐がフェンリルの胸部に一閃。真っ白い体毛を赤く染めた。

 そこで影縫いの効果が切れる。

 さすがはSランク。影縫いで動きを止められるのも一瞬しかない。だが、その一瞬が命取りだ。


 片方の前脚を切断されて3本脚になったフェンリルは風の塊を吐き出すように吼えた。

 ブワッと辺りが風に煽られる。

 ふと見ればフェンリルに迫っていた白狐が吹き飛ばされていた。

 相当な威力だったようで、立ち上がるもフラついている。

 蒼龍もフェンリルに迫るが後ろ脚立ちになったフェンリルが残った前脚の爪で目の前の空間を薙ぐと風の刃が蒼龍を襲う。

 蒼龍は三叉の槍で風の刃を受け止めた。が、やはり威力を殺しきれず後方へと跳躍する。


 睨み合う両者。一瞬の沈黙。先に動いたのはフェンリルだった。

 蒼龍に向けてその巨大な口を大きく開き噛みつきを敢行。案の定、蒼龍は三叉の槍を差し入れて口を閉じないように上顎と下顎を槍の穂先と石突きで押さえ込む。

 口を閉じれば槍が上顎を突き破る。

 そんの状態にもかかわらずフェンリルは口を閉じた。

 上顎を貫き三叉の槍がフェンリルの鼻上に姿を現す。

 代わりに蒼龍は右腕前腕を噛まれた。そっちは義手じゃなく生身の方だ。食い千切られれば両手が義手になっちまう。

 俺は慌ててフェンリルの顎下に移動しその喉元を黒刃・右月で突いた。

「ギャフッ!」

 その痛みによってフェンリルが口を開く。

 蒼龍の右腕は食い千切られる寸前だった。


「親愛なる聖神様、その比護により目の前の傷つきし者に最大なる癒やしの奇跡を起こし給え。ハイヒーリング!」

 聖王の持つ錫杖についた魔石が輝き出す。

 温かな光が蒼龍を包み込み、みるみるうちに腕の傷を癒す。

「助かる!」

 蒼龍の三叉の槍はまだフェンリルの上顎を突き破り鼻上に出ている。

「武器がなければ始まらないな。王化!武王!」

 そう叫ぶと右手親指にしたリングにはまる紅色の王玉から紅色の煙が立ちのぼり蒼龍を包み込む。

 その煙が右腕に吸い込まれるように消えていくと、右腕に紅色の線が入った王鎧を纏い、その手に燃えるような紅色の槍を持った蒼龍が立っていた。

「これでどうだ!龍覇連突!」

 紅色の槍による高速の刺突の連撃を繰りだす。槍の先端からは紅蓮の炎が上がる。

 刺突は見事にフェンリルの鼻先にヒット。連撃によりフェンリルの鼻が燃え上がる。

「キャイィィィン!」

 これには堪らずフェンリルも後方へと逃げる。


 それを追うのは復帰した白狐と俺。

 俺は跳躍して3本目のナイフをフェンリルの影に向けて投擲。

「影縫い!」

 瞬間的にフェンリルの動きが止まる。

 下からは白狐が、俺は上からフェンリルの首筋に黒刃・左月を突き入れる。

 そのまま掻き切るように黒刃・左月を振るう。

 首の下からは白狐が白刃・白百合を振り抜いた。

 だがまだ浅い。鮮血を振り乱しながらフェンリルご後方へと下がる。


 もうフェンリルの後ろは壁になっており後退する事が出来ない。


 そろそろ終演の時間だ。


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