表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒猫と12人の王  作者: 病床の翁


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

318/547

317話 愚者の迷宮9

 鵺との死闘を終えたのが昨日。

 そして今は地下54階を進んでいる。

 50階を越えてからと言うもの襲ってくる魔物はCランクが多数で来るか、Bランクが単独で来るかになっていた。

 今もゴブリンキングとオークジェネラルの混成群を討伐したところだ。

 何というか50階を越えてから魔物に出会す機会が増えた。もたつくとあっという間に別の群勢がやってきて混戦になるのだ。

 相手はまだCランク程度だから王化せずに対処出来てはいるが結構疲れる。


 そんな感じでどんどん敵が出てくるからゆっくり食事を摂る暇も無い。

 だからパンに薄切りにしたハム、チーズ、レタスを挟んで食べるくらいしか出来ていない。

 そろそろ落ち着いてカレーでも食べたい気分である。


 とまぁ若干疲れが出てきた頃に出会ったのがダンジョンシーカー、『不滅の牙』の面々である。

 猫獣人の男性剣士、ケレイブをリーダーとした6人組で、女性槍術師のミスティ、男性魔術師のマーカス、鬼人族の男性闘拳師の雷蔵、聖人のダンテ、女性弓術師のファルファからなるパーティーだ。

 あの50階層を越えて来ただけあって全員相当な腕のようだ。

 死霊系の魔物であるワイトに囲まれている所をちょうど通りかかり、緑鳥の聖術でワイトを撃退してやったのが出会いである。

 俺達は自己紹介しながら少し話をした。


「にしてもアンタら、あの鵺を4人で倒しちまうとかすげぇな!」

 ケレイブは明るい性格のようで、屈託なく俺達に接してくる。

「いや、俺達以外にも鵺を倒して50階を越えてきてる奴らがいるとは思わなかったよ。」

 俺も普通にケレイブと話す。

「確かにな。鵺はヤバかったな。死んだと思ったのも何回かあったしな。」

「空飛ぶ相手をよく倒せたな?」

「そこはほら、ファルファが撃ち落としてくれてさ。落ちてきてからは雷蔵が猛攻よ。」

「自分も感電するからか組み合ったら雷の攻撃も来なくなってな。」

 紫鬼以外で初めて遭遇した鬼人族の雷蔵も会話に入ってくる。

「それにしても助かったぜ。ワイトがうじゃうじゃと湧いてきてよ。あっという間に囲まれてどうしようかと思ってたんだ。ダンテもターンアンデッドで対抗してくれてたんだけど、浄化するよりも集まってくる数が多くてな。」

 ケレイブが今さっきの戦闘を振り返って言う。

「うちには聖王の緑鳥さんがいますからね。」

 白狐が何処か誇らしげに言う。

「聖王?!あの聖王様ですか?」

 ダンテが震えながら会話に入ってきた。

「何故聖王様がこんな迷宮に?え?何故ダンジョンシーカーなんてやっておられるのですか?」

 世界中の聖者聖女のトップである聖王に会って緊張しているようだ。

「わたし達はダンジョンシーカーと言う訳ではありません。近頃迷宮の魔物が外に出てくる事がありまして、迷宮に何か異常があったのではないかと思いやって来たのです。」

 緑鳥が説明した。

「迷宮の外に魔物が?知らなかったな。かれこれ俺達は2か月以上はこの迷宮内にいるからな。」

 ケレイブが凄いことを言い始めた。

「2か月?2か月間もずっと迷宮の中にいるって事ですか?」

 これには白狐も驚いている。

「じゃあ甲蟲人の侵攻も知らないので?」

「甲蟲人?なんだそれは?」

 ホントに知らないらしい。俺達は邪神の復活から第2次甲蟲人侵攻までの出来事を話してやった。


「まじかよ。邪神って神々に倒されたんじゃなかったのか?封印されてたなんて始めて聞いたぜ?」

「あぁ。俺達も神のお告げで始めて知ったんだ。」

「神のお告げって?」

 ミスティが聞いてくる。

「俺達は様々な神から加護を与えられた神徒なんだ。外にはまだ仲間がいる。」

「神様の使いって事か?すげぇな!」

 ケレイブは何の抵抗もなく受け入れたようだ。

「神の加護…?」

 ミスティは何の話をしているのか分からないように言う。

「神様が本当にいるって事?」

「あぁ。神々はいる。我等神徒がその証だな」

 ミスティの疑問に蒼龍が答える。

「はははっ!神の加護があるんじゃ鵺を4人で倒せるのも納得だな!はははっ!」

 雷蔵が頷きながら言う。


 ここで俺は思い立った事を言ってみた。

「なぁ。そろそろちゃんとした食事を摂りたいと思ってたんだ。食事中の護衛を頼めないか?もちろん、俺達もアンタらの食事の間の護衛をするからさ。」

「食事休憩か?いいぜ。先に食べちまいな。ワイトを追っ払ってくれたお礼だ。しっかり護衛しておくさ。」

 ケレイブが了承してくれたので、俺は早速影収納から鍋と魔道コンロを取り出して火にかける。

「おいおい。なんだよ。それは?」

「何ってカレーだけど。」

「カレー?!食事って携行食じゃねーのか?カレー?!どこからその鍋出したんだ?」

「まぁその辺りは秘密だ。ちゃっちゃと食べるから護衛よろしく。」

 そう言って俺はカレーライスを4人分よそって皆で食べ始めた。


 視線が痛い。

 今もオーガが3体同時に襲い掛かってきて『不滅の牙』の面々が戦ってくれているのだが、あいつら全然戦いに集中してねぇ。

 カレーライスをガン見してくる。

 2カ月間も迷宮に籠もってるって言ってたし、普通の飯を食う機会もなかったんだろう。仕方ない。だが、戦闘には集中して欲しい。


 その後なんとかオーガを撃退したケレイブ達が言ってくる。

「なぁ。そのカレーって余ってたりしねぇか?もちろんただでとは言わねぇ。おれ達が集めた迷宮遺産どれでもくれてやるからさ。一口ずつでもいい。暫く携行食以外食べてねぇんだ。一口ずつでいいから分けてくれねぇか?」

 迷宮遺産とは迷宮で手に入れた魔道具や魔剣などを指す。どれでもくれると言うのだ。カレーならまだ作り置きがあるし、分けてやるだけでいいのなら安い買い物だ。

「1人1皿な。」

「いいのか?やったぁ!みんな!ちゃんとしたメシが食えるぞ!」

「おー!」

「やったー!」

「まぢか!お前が神だぜ!」

「リーダー、交渉上手!」

「ご飯だぁー!」

 全員テンションぶち上がりであった。


 カレーライスの代わりに迷宮遺産を3つ手に入れた。

 1つ目は長さが伸びる片手剣。銀狼へのお土産にちょうどいいだろう。

 もう1つは重さの変わる籠手。紫鬼への土産だな。

 最後に中に入れた物を高速で打ち出す筒。片手で一抱えするほどの大きさだが、中に入れる物は石でもなんでもいいらしい。これは緑鳥が戦う術になりそうだからと選んだ物だ。緑鳥が持ってみても使えそうだってことでこれにした。


 って事で『不滅の牙』の連中とはここで別れて別の道を行くことになった。

 ファルファなんかは最後までカレーの礼を言っていた。よほどちゃんとした食事が有り難かったのだろう。


 そんな出会いもありつつ、4日目は地下57階まで降りてきたのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ