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黒猫と12人の王  作者: 病床の翁


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304話 ドワーフ王国13

 一方、先にドワーフ王国へとやって来ていた茶牛、蒼龍、翠鷹、紺馬、碧鰐はさっそく茶牛の働いていた工房『鋼の四肢』に到着した。

 到着するなり、店に出ていた店主に言って蒼龍、翠鷹の足の計測が始まった。

 蒼龍は片足、しかも膝下の為、残る左足の長さを測り終わりとなったのだが、翠鷹は太腿から。しかも両足と言う事で計測も腰から上を測り、だいたいの目安となる下半身の長さを想定して、腰から残った太腿の半ばまでを測ると言ったものになった。

「どうせなら8頭身になるくらい、足を長くしてもらえまへんか?せっかく身長が伸びるチャンスやからね。」

 すっかり元気を取り戻した翠鷹が言う。

「んー?伸ばしてもいいが、慣れる迄に余計時間がかかるぞぉ?慣れた足の長さじゃないと歩きづらいだろうしなぁ。」

 茶牛は答える。

「歩きにくいのは堪忍やわ。しゃーない。普通に測った身長で我慢するわ。」

 翠鷹が言う。


「なぁ。我の義手の事は忘れてないよな?計測してないが。」

「あぁ。お前さんの義手なら前に測ったからなぁ。もう計測は必要ないぞぉ。」

「そうか。良かった。」

「でも今回は生活し易いように義足から作るが、それでいいよなぁ?」

「あぁ。いつまでも車椅子に、補助着きじゃ悪いからな。」

「ウチもそれで構いまへん。蒼龍はんの分から先に作ったって下さい。」

「うん。そうするつもりだぁ。片足分だから2日もあれば出来上がるだろうさぁ。お前さん達はドワーフ王国に滞在する間の宿屋でも探して来てくれぇ。儂はさっそく義足作りに取りかかるからよぉ。」

 そう言って茶牛は工房へと向かっていった。


 紺馬が翠鷹の車椅子を押し、碧鰐が蒼龍の車椅子を押して街に出る。

 今から車椅子でも出入りが問題ない宿屋を探すのだ。

 数限りある宿屋の中でバリアフリー化がされている宿屋を探さなくてはならない。

 相当歩き回る事になるだろうと紺馬も碧鰐も考えていたのだが、一軒目に向かった宿屋は完全にバリアフリー化が進んでおり、なんの問題もなく宿泊する事が出来た。

 よくよく考えて見れば『鋼の四肢』はもちろん、他の店に関しても階段の他にも斜面になった場所が設けられており、街全体がバリアフリー化されていた。

 不思議に思った紺馬は宿屋の店主に尋ねる。

「なぜこの街はこんなにバリアフリー化が進んでいるのだ?」

「あぁ?そりゃぁおめぇ鉱山工なんかが鉱山で怪我する事が多くてなぁ。足のねぇやつなんかゴロゴロいるからなぁ。バリアフリー化してねぇと客が来ねぇのさぁ。」

「なるほど。そう言う訳か。」

「おたくらも鉱山でやっちまったんかぁ?ここには言い腕した義肢装具士がいるからなぁ。義足作って貰ったらいいさぁ。金さえあれば普通に動かせるって言う魔導義足も手に入るぞぉ。」

「あぁ。義足を作りに来たんだ。」

「そうかぁ。んじゃよかったなぁ。あんたらも足がねぇと不自由だべぇ。」

「だな。取り敢えず1週間連泊で頼む。」

「はいよぉ。4名様ご案内ぃ。」


 部屋に案内されたが気を遣ってか1階の部屋にしてくれた。

 隣通しの4部屋だ。

 部屋の中も完全にバリアフリーになっており、小さな段差すらない。徹底していた。

「部屋は取れたし、あと2日どうする?」

 紺馬が聞く。

「あぁ。それなんだが我の槍を直したいのだ。先の戦いで折られてしまってな。」

 蒼龍が車椅子の背後に括り付けた三叉の槍を指差しながら言う。

「なんだ。茶牛に直して貰えば良かろうに。」

 碧鰐が不思議そうに言う。

「いやな。茶牛は義足やら義手やらの作製で忙しいだろう?なら先に他の鍛冶師に先に直して貰おうかと思ってな。」

「確かに茶牛はんに頼もう思ったら義足と義手を作った後になるやろし、そもそも茶牛はんは鍛冶師やのうて義肢装具士やしな。」

「よし。決まりだな。武器屋の工房に行こう。」

 紺馬が意気込んで翠鷹の車椅子を押し始める。

「お薦めの武器屋でも茶牛に聞いておけば良かったな。」

 碧鰐もぼやきながら蒼龍の車椅子を押して後を追うのであった。


 宿屋の店主に聞いて見ると武具の修復なら『八百万(やおよろず)の槌』がお薦めだと言われてそちらに向かう事にした。

 そこは宿屋からは500m程の距離にあったが店先には誰もいなかった。

「すいませーん。誰かいますかー?」

 碧鰐が声を上げると店の奥から声が返ってくる。

「はいよぉー。ちょっち待ってねぇー。」

 奥から出てきた店主は見るからに剛毛な真っ白い髭をへそ当たりまで伸ばしている老人だった。

「どうたかねぇ?」

「店主か?すまんが槍の修復をお願いしたい。」

 蒼龍が車椅子の背後に括り付けた三叉の槍を取り出す。

「あれまぁ。こりゃ随分と曲がっちまったねぇ。」

「直るか?」

「あぁ。わしの手にかかれば折れた剣だろうと元通りよぉ。」

「本当か?」

 槍を手に取りまじまじと見る店主。

「あぁ。ん?こりゃオリハルコン製じゃねぇのかぁ。珍しいもん持ってるなぁ。」

「オリハルコン製だったのか?一族に伝わる由緒正しい槍なのだ。」

「そうかぁ。んじゃキッチリ直してやらなくちゃなぁ。」

「どのくらいで直る?」

「1日貰えるかぁ?明日の今頃取りに来てくれぇ。料金もその時貰うからよぉ。」

 と言う事で槍を預け、宿屋に戻った4人だった。


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