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黒猫と12人の王  作者: 病床の翁


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302話 甲蟲人:蟻9

 皆で蟻どもを蹴散らしていると見覚えのあるおっさんがいた。

「おぉ!その姿は黒猫殿か!」

「んお?おっさんは確か帝国の将軍の…?」

「バルバドスだ。忘れたのか?」

 完全に名前は忘れてた。でも誤魔化す。

「いや。覚えてたさ。そんな事より将軍様がこんな前線に出張ってきていいのか?もっと後方でずっしりしてるのが将軍なんじゃねーの?」

「うむ。俺は第3兵士団の将軍だからな。後方には第1兵士団の将軍が控えておる。」

「なんだ。あんたの他にも帝国には将軍がいたのか。」

「あぁ。先の魔族領侵攻には我ら第3兵士団が赴いていたのだ。その間の国防の事もあるからな。帝国には俺含め3人の将軍がおるのだ。」

 さすがは帝国軍の将軍だ。バルバドスも蟻の相手をしながら俺との会話を続ける。

 もちろんその間に倒した数は俺の方が多いけどな。

「ふーん。魔族領侵攻って大事だったのに全軍で来ていた訳じゃなかったのか。」

「当たり前だ。帰る国を失ったら元も子もない。国の防備はいつでも最優先だ。」

「へー。あんたがいるんじゃあの2人も来てるのか?なんだっけ?特例兵士だっけか?」

「あぁ。シャラマンにフェリオサもこの戦場の何処かにいるぞ。」

「そうか。他にもその特例兵士ってのはいるんだろ?」

「あぁ。いる。今は総勢30名の特例兵士が登録されている。この戦場には30名全員が参戦しているはずだ。それに帝国騎士団も参戦している。」

「帝国騎士団?兵士団とは別なのか?」

「兵士団は軍部配下の部隊だが、騎士団は皇帝陛下直轄の部隊上だ。命令系統が異なるのだ。」

「難しいな。でも戦える奴は多い方がありがたい。」

「だな!」

「あぁ。んじゃまたな。」

 軽く挨拶を交わして俺は次の標的を求めて戦場を駆ける。


 そんな中、遠目に紫鬼の姿が見えた。

 よく見れば翠鷹をおぶっているようだ。

 紫鬼の進行方向の蟻を倒すように紺馬も駆けて来ている。

 翠鷹と紺馬は王化が解けていた。

 おぶさっている翠鷹はぐったりしているように見えた。

「おーい!紫鬼!どうした?!」

 俺はそちらに向かいながら声をかける。

 鍬形との戦闘は終わったのだろうか。

「おぅ。クロか。翠鷹が大怪我を負った。すぐに緑鳥に見せたい。」

 近付いてみれば翠鷹の両足が切断されていた。

「緑鳥のところだな。よし、すぐに向かおう。朱鮫が魔術をぶっ放してる大元に3人ともいるはずだ。」

 俺は近くにいた碧鰐にも声をかけて、緑鳥へと続く道を切り開く為に蟻を殲滅していく。

 翠鷹の顔色が悪い。相当な出血量だったのだと思われる。

「蒼龍は?まだ鍬形と戦っているのか?1人で?」

「いや。鍬形は倒した。翠鷹が止めを刺したんじゃ。」

 紫鬼が答えてくれる。

「だが蒼龍の奴も義手と片足を失っている。王化が解けたら1人で戻ってくるのは難しいだろう。碧鰐よ。蒼龍をむかえには行ってくれ。」

「ワタシも一緒に戻ろう。ワタシも行けば場所がわかる。」

「だな。こちらはクロに任せて紺馬も行ってやってくれ。」

 紺馬は碧鰐を連れて敵の後方へとまた駆けていった。


 とその時戦場中に聞こえるような大音声でバッシュの奴の声が響いた。

『戦場にいる者達よ!見よ!敵将の首は勇者バッシュが取ったぞ!残るは先兵のみ!あと少しだ!気合を入れろ!』

 なんだって?あの口だけ勇者のバッシュが敵将を討ち取っただと?

「なんか言ってるぞ?鍬形は翠鷹が倒したんだろ?」

「あぁ。翠鷹の一撃で倒した。が、息の根を止めたかまでは確認して来なかった。まぁ言わせておけばいいじゃろ。現に兵士達の士気は上がっとる。」

 そう言う紫鬼だったが釈然としない。でもまずは翠鷹の治療が先だ。

 俺達は急ぎ緑鳥のもとへと走った。


 やっと緑鳥達のもとに辿り着いた時、翠鷹の顔は紫色になっていた。

「翠鷹様!いけない。血が流れすぎている。今すぐ癒やしの奇跡を。」

 言うなり呪文を唱え始める緑鳥。

「親愛なる聖神様、その比護により目の前の傷つきし者に最大なる癒やしの奇跡を起こし給え。ハイヒーリング!」

 みるみるうちに切断面の肉が盛り上がり傷口を塞いだ。

 それでもまだ顔色が悪い翠鷹。

「輸血の必要があります。すぐに衛生兵のいる場所に向かって下さい。兵僧達に任せれば輸血して貰えるでしょう。」

「分かった。翠鷹の面倒はワシが見る。クロは戦場に戻ってくれ。さっさと蟻を殲滅して戦いを終わらせてくれ。」

「うしっ。翠鷹は任せた。俺は戻るよ。」

 俺は再び蟻の中へと向かっていった。


 それから暫くしてあれだけいた蟻は総べて撃ち倒された。

 1番功労者は朱鮫だろう。1度の魔術で100体近い蟻を屠っていた。

 それに敵将の鍬形に止めを刺したと言う翠鷹だが、輸血を受けて無事に回復してきていた。

 まだ意識は無い状態だが、顔色が戻っている。緑鳥もこれなら大丈夫だろうと言っていた。

 蒼龍の方は無事に紺馬と碧鰐に合流出来たようで、碧鰐と紺馬に肩を借りながら戻ってきた。

 切断された足も勇者パーティーの聖女サーファによって回復して貰ったとの事。

 白狐に金獅子、銀狼に茶牛も無事に合流出来た。こちらは怪我も無く問題なしだ。


 こうして俺達は第2次甲蟲人侵攻を防いだのだった。


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