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黒猫と12人の王  作者: 病床の翁


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300話 甲蟲人:鍬形6

 遠目からでも敵将の鍬形が空を飛んでいるのが見えた。アレだ。前回の甲虫と同じで背中から翅が出てきてやがる。

「なぁ。碧鰐よ。前回の甲虫の突進はお前の障壁でどうにか止めて反撃したんだよな?」

 俺は隣にいた碧鰐に聞く。

「んあ?あぁ。オラァの障壁で突進を止めたんだ。それがどうした?」

「いやさ。アレ見ろよ。」

 俺は空飛ぶ鍬形を指差す。

「あの飛んでるの敵将の鍬形だろ?甲虫と同じだったらアイツの突進を止められるのはお前の障壁だけなんじゃねーの?」

「あ?あ。確かに。」

「やべぇだろ。蒼龍と紫鬼がいるって言ってもあとは紺馬と翠鷹だぞ。どっちも突進に耐えられる武装してねーだろ。」

 その時、空を飛ぶ鍬形に3筋の光が地上より放たれたのが見えた。

 3筋の光は見事に鍬形に的中して墜落させる。

「紺馬か!」

「矢で射ったんだな。」

 蟻の相手をしながらも碧鰐と会話を続ける。

「遠距離からの攻撃が出来るのは大きいな。」

「あれなら大丈夫そうだな。」

 俺達は頷きあって蟻の殲滅へと勤しむのであった。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 甲蟲人:鍬形が再び上空へと上がっていった時、精霊王の判断は速かった。

「雷の精霊よ。力を貸し給え。」

 1番最速の雷の矢を選択、且つ狙いがつけやすい3本の矢で敵を射る。

 見事に3本とも的中した甲蟲人:鍬形は雷撃を浴びて痺れ落下した。

 すくまさまその落下地点へと鬼王が走る。

「鬼蹴3連蹴り!」

 ハイキックの3連撃。

 振り抜かれた右足は地に降りる前に前蹴りとして甲蟲人:鍬形の腹部に吸い込まれる。

 吹き飛ぶ甲蟲人:鍬形。


 その先には龍王が待機している。

「龍覇連突・紅蓮!」

 紅色の槍が紅蓮の炎を吹き出して高速で甲蟲人:鍬形を穿つ。

 連続突きを左肩に受けた甲蟲人:鍬形は残っていた左肩から肘までをも千切れさせる。


「クソガッ!調子ニ乗ルナ!」

 甲蟲人:鍬形は迫る炎の槍を受けながらも前傾姿勢で龍王へと突進する。

 咄嗟に前蹴りを放とうと龍王が左足を前に出す。

 そこを狙われた。

 ガギンッ!

 甲蟲人:鍬形の頭のハサミが閉じられた。

 そこには龍王の左足が挟まれていた。

 王鎧によって辛うじて切断には至らなかったが甲蟲人:鍬形は龍王の左足を挟んだまま上体を起こす。


 人1人を持ち上げるほどの膂力だ。そしてそのまま再び背中の翅を広げて空中へと飛び立つ。

 頭のハサミでは未だに龍王の左足を挟んだままだ。

「うぁ!」

 足を締め付ける圧力が増す。

 ビキビキと王鎧の割れる音が聞こえる。

 精霊王なども助けに入ろうと弓矢を構えるが龍王を挟んでいる為、狙いがつけ辛い。

「フハハハハッ!足ノ1本貰ッタゾ!」

 ガギンッ!

 空中から2つの物体が落ちてくる。片方は龍王。もう片方は切り離された龍王の左足だった。膝下、すねの辺りから切断されている。


 龍王の落下地点に鬼王が走り、その体を受け止める。

「ぐぅ!すまない。」

「大丈夫か?蒼龍!」

「相手は両腕を失っているのだ。片足くらいくれてやる。」

 そう言うと紅色の槍を杖代わりに1人で立つ龍王。

「無理はするなよ。」

 鬼王はそう言い残し、上空の甲蟲人:鍬形を睨む。


 未だに上空にある甲蟲人:鍬形に向けて、精霊王が雷の矢を1度に10本も番えて射る。

 さすがに精霊王とは言え、10本もの矢を狙い通りに放つことは出来ず、雷の矢は甲蟲人:鍬形を追い越し上空へと逸れる。

 それでも構わず次々と10本の矢を射る精霊王。

「フハハハハッ!ドコヲ狙ッテイルノダ!全ク当タランゾ!フハハハハッ!」

 天高く総数100本もの雷の矢を放った精霊王は、次は1本のみ雷の矢を放つ。

 その矢は甲蟲人:鍬形へと迫る。


「知っているか。異なる電荷の電力同士は引き合うんだ。喰らえ。ハンドレッドスパーク。」

 精霊王は静かに言った。

 甲蟲人:鍬形へと迫る地上からの1本の雷の矢。そこを目掛けて集まってくる天高く飛ばされた100本もの雷の矢。

 自身のいる高度より更に上から降り注ぐ100本の雷の矢が甲蟲人:鍬形を襲った。

 バリバリバリバリッ!

 空中に一筋の光源が発生したと思ったら空気を揺るがすほどの大音声での感電の音が響く。


 甲蟲人:鍬形は全身から煙を立ち上らせながら落下していく。

 そこに追撃に入ろうとする鬼王を精霊王が止めた。

「鬼王待て。まだ感電しているはずだ。生身で攻撃すればお前にも電流が流れる。」

「ならウチの出番ですわ。光より速いウチの突きなら感電する前に引き抜ける。」

 賢王が落下した甲蟲人:鍬形へと迫る。

 感電して動けないように見える甲蟲人:鍬形。賢王が迫った瞬間、弾かれたように頭から賢王へと突進してきた。


 賢王は両足の太腿辺りを甲蟲人:鍬形の頭のハサミで挟まれる。

 龍王1人を持ち上げるほどの膂力がある甲蟲人:鍬形である。賢王もそのまま持ち上げられてしまう。

 しかし、甲蟲人:鍬形が頭を上げた瞬間、そのうなじが見えた。

「これで仕舞いや!タキオン・スラスト!!」

 うなじへと吸い込まれるように細剣が突き入れられる。

 バキバキッ!ガギンッ!

「うあぁぁぁ!」

 甲蟲人:鍬形の脊髄が破壊されるのと、賢王の両足が切断されるのはほぼ同時だった。

 両足を失った賢王が地面に叩き付けられる。

「「翠鷹!」」

「賢王!」

 龍王、鬼王、精霊王がその身を案じて集まる。

 目の前の甲蟲人:鍬形はピクリともしない。

「クソガッ!マダダ!我ハマダ負ケテハイナイ!」

 頚椎を損傷して体が動かせなくなった甲蟲人:鍬形であったが、まだ口は開ける。


 しかし、龍王の片足と賢王の両足を失う程の大ダメージを受けはしたが甲蟲人:鍬形を破ったも同然である。

 龍王、賢王、精霊王の王化継続時間残り10分での出来事であった。

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