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黒猫と12人の王  作者: 病床の翁


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299話 甲蟲人:鍬形5

 後方に陣を構える聖王達であったが、聖王はひっきりなしに運ばれてくる怪我人達の回復にてんてこ舞いだった。

 まだ自分の足で後方に戻ってこれる者はましで、仲間の兵士に担がれて後方の衛生兵のもとに戻ってくる兵士も数多くいた。

 そのほとんどは回復を受ければまたすぐに前線に赴き甲蟲人:蟻の相手をする。

 中には重篤な怪我を負った者もおり、それらは衛生兵のもと看護されている。

 万能に思われる癒やしの奇跡だが、その実部位欠損などには対応出来ず、あまりの出血量により命を落とす者もいる。

 そんな者達を見る度に聖王は思う。自分にもっと強力な癒やしの奇跡が起こせたらと。

 だが現実は厳しく甲蟲人:蟻を相手に多数の兵士が命を落としている。

 確実に聖王の癒やしの奇跡がなければすでに戦線は崩壊していてもおかしくない。

 それほどに甲蟲人:蟻は強く、帝国軍兵士達だけではとてもではないが倒しきることは出来そうにない。


 そんな中、右奥を見やれば夜王に破王、仁王に獣王、牙王に地王が一団となって甲蟲人:蟻を蹴散らしていくのが見える。

 そうだ。聖王には仲間がいる。

 すぐ隣では法王と魔王が魔術と魔法を敵後方左奥に向けて放ち続けている。

 彼等がいれば問題ない。

 強大な敵だろうと彼等ならば撃ち倒してくれる。

 そんな信頼があった。

 聖王はひたすらに怪我人の回復に努めた。

 自分に出来ることを一生懸命にやる事こそが今自分に求められた役割なのだと信じて。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 甲蟲人:鍬形の巨大斧による斬撃を避けながら鬼王は大技を繰りだす。

鬼蹴(きしゅう)!」

 これは鬼拳の蹴りバージョンであり、妖気を纏った蹴りによる打撃で、インパクトの瞬間、その妖気を相手に流し込む危険な技である。

 そんな危険な技を左肩に受けた甲蟲人:鍬形は蹈鞴を踏む。

 とそこに精霊王が風の矢を雨の如く撃ち込む。

 それを巨大斧で受けて躱すと次は龍王が二槍を使って猛烈な突きの嵐を繰りだす。

 甲蟲人:鍬形の巨大斧はその上半身を覆う程の巨大さではあるが、全身を隠せる程ではない。

 顔面への攻撃を防ぐため、眼前に巨大斧を構えると腹部が空く。


 龍王の槍は確実にその空いた腹部や巨大斧を持つ左手を突いてくる。

 堪らず巨大斧を振り回して距離を取る甲蟲人:鍬形。

 だが甲蟲人:鍬形の攻撃も確実に龍王達にダメージを与えている。

 何度も巨大斧を受けた三叉の槍は見るからに折れ曲がり、ガードしきれなかった巨大斧の斬撃を右腕に何度も受けている。

 オリハルコン製の義手でなければすでに千切れていたかもしれない。


 王鎧は肉体性能まで引き上げる為、防御力もアップするのだが、肉体ではない義手2関しては防御力の向上もない。

 単純に義手自体の防御力の王鎧の強度のみで攻撃を受けている状態だ。

 感覚的にはあと数回巨大斧での攻撃を受ければ義手が折れ曲がりそうな雰囲気である。


 唯一ダメージを受けていないのは遠距離から矢を居続ける精霊王のみである。

 甲蟲人:鍬形が精霊王を狙おうとする度に龍王や鬼王がその行動を阻止していた。

 三叉の槍をも折り曲げるほどの攻撃だ。精霊王の弓で受ければ確実に折れてしまうと思われた為、2人は必至に精霊王への攻撃を妨げていた。


 1番重傷なのは賢王である。

 右腕は上腕骨が折れ、持ち上げることも出来ない状態だ。

 幸い細剣を持つ左手は無事な為、戦線には復帰しているがなかなかにダメージを与えることが出来ずにいた。

 狙うは巨大斧を持つ左腕である。

 が、攻撃に防御にと絶えず動き続ける左腕を狙うのは相当なハードルの高さだった。

 しかし、攻撃の正確性と速度が賢王の権能である。

 必ず狙い目が来る。賢王はその時を待つのであった。


「鬼蹴3連蹴り!」

 甲蟲人:鍬形の振るう巨大斧を避けてから急速に近付いた鬼王がロー、ミドル、ハイの3連蹴りを放つ。

 いずれも妖気を乗せた攻撃であり、その威力は通常の蹴りとは比べるまでもない。

 そんな3連蹴りを受けた甲蟲人:鍬形が軽くよろける。

 巨大斧を持つ左腕を下に斜に構える体勢だ。

 賢王はこれをチャンスとみた。

「当たれ!タキオン・スラスト!!」

 自身の持てる最速の突きである。

 光速をも超えるその突きは見事に甲蟲人:鍬形の左肘に突き刺さる。

 そのまま細剣を横薙ぎに振るう賢王。

 それにより、甲蟲人:鍬形の左腕が前腕からもげて巨大斧の重みのままに地面に落ちた。

「グゥ!ヤリヤガッタナ!右腕ダケデナク左腕マデモ!!」

 甲蟲人:鍬形は後方に大きく飛び下がる。


「我ガ力ハコンナモノデハナイゾ!喰ラエ我ガはさみノ威力!!」

 甲蟲人:鍬形の背中が割れて薄い黄色の翅が現れる。

 ブンッと音を鳴らしながら甲蟲人:鍬形の体が宙に浮く。そして上空へとその身を持ち上げていく。

 次の瞬間、高速で飛行した甲蟲人:鍬形が頭から賢王に迫る。

「危ない!」

 ドンッと龍王が右手で賢王を押す。

 ジャキンッ!

 凄まじい音がして、甲蟲人:鍬形の頭のハサミが閉じた。

 龍王の右腕は三叉の槍を持つ肘から先が無くなっていた。

「蒼龍はん!」

「龍王!」

 賢王と精霊王がその身を案じる。

「問題ない。義手が切られただけだ。」

 片腕となった龍王が紅色の槍を構える。

 甲蟲人:鍬形は龍王の腕を切り落とした後、再び上空へと舞い上がった。

「フハハハハッ!我ガはさみノ切レ味、トクト味ワエ!」


 その真価を発揮しだした甲蟲人:鍬形。

 龍王、精霊王、賢王の王化継続時間は残り20分余り。


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