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黒猫と12人の王  作者: 病床の翁


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298話 甲蟲人:鍬形4

 俺と白狐、碧鰐が蟻を撃ち倒しながら前進を続けるとようやく蟻の最後尾に到達した。

 見れば敵の軍勢の中央付近から金獅子、銀狼、茶牛が同じように蟻の軍勢を掻き分けて後方に到達してきた。

「金獅子!敵将は見たか?」

 俺は大声で叫ぶ。

「左端の方で蒼龍達が戦っておる。敵将は鍬形の甲蟲人らしい。頭に挟みがついておる。」

「そっちに支援は必要そうか?」

「いや。紫鬼に紺馬、翠鷹が一緒に戦っておる。あまり大人数で押しかけても連携が取りづらいだろう。俺様達はこのまま蟻の掃討を行う。」

「ならこっちに来てくれ。後方でばらけて戦っていると朱鮫の魔術の邪魔になるだろう。右端から追い立てるように攻めていこう。」

「分かった。そちらに向かおう。」

 蟻を蹴散らしながら金獅子達がやってくる。

 するとそれを見越したように敵後方左型で朱鮫の魔術が爆発を起こす。

 蟻の数は一万を切ったくらいか?

 まだまだ戦闘は続きそうである。王化が解ける前に殲滅できるかが勝負の鍵となりそうだった。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 帝国騎士団の団長であるニーブルも、副団長であるラクサルスも戦いに参加できずただ見守るばかりである。

 甲蟲人:鍬形の戦闘力は明らかに自分達より格上である。

 しかし、今戦っている神徒達が敗れるような事があれば命懸けで自分達が倒しに掛かるほかあるまい。

 甲蟲人:鍬形は右腕を負傷して動かせないように見える。

 片腕となった今なら自分達でも通じるか?いや、神徒達の連携を崩す訳にもいかない。

 ニーブルとラクサルスは手に汗握りながら神徒対甲蟲人:鍬形の戦いを見守っていた。


 とそこに龍王と帝国騎士団が開いた敵の穴を抜けて勇者バッシュとその仲間達がやってきた。

「騎士団団長殿ではないか。何を悠長に観戦しているんです?貴方も戦って下さいよ。」

「いや。皇子。今はあの神徒達が戦い、優勢にあるように見受けられます。我々が出るのは彼等が敗れた場合の保険です。と言っても彼等が敗れるような相手に我々が敵うとは思えませんが。しかしその時が来れば帝国を護るために命を賭けましょう。」

 ニーブルが答える。

「ふん。また神徒ですか。それなら僕達の出番もまだですね。」

 勇者バッシュは余裕の表情で言う。

 目の前では高速での戦闘が今も続いている。

 それを見てもこの余裕。ニーブルは勇者の力を見くびっていたのかもしれない。

 帝国皇子として扱って来たがこの戦闘を前にしてもこの余裕。一流の戦士として扱う必要があるかと見直したニーブルであった。


 その実、勇者バッシュには目の前で繰り広げられている高速戦闘が半分も見えていなかった。

 2本の槍を持つ戦士が高速での連続突きを放っている。それはわかるが見えていない。

 敵には当たっているのか?防がれているのかすらよくわからない。

 かと思えばいつの間にか鬼のような兜を被った戦士が連続蹴りを放っている。

 次の瞬間には弓矢使いが矢を放ち、甲蟲人鍬形へと矢が当たっている。

 1度に数本の矢を射ているようだ。

 甲蟲人:鍬形も巨大斧で受けて躱そうとしているようだが数本は体にヒットしているのが分かる。

 かと思えば細剣を持った戦士が甲蟲人:鍬形に近付き、だらりと下がった右腕を斬り飛ばした。甲蟲人:鍬形の右腕が宙を舞う。

 その動きはまるでスローモーションのように見えた。

 次の瞬間には槍使いがまた槍を突き出している。

 とてもじゃないがこの戦闘に介入できる余地はないとバッシュもわかっている。

 別にいいのだ。最後の最後、止めを刺すところだけ自分が出張ればいいと思っている。

 そのためにはまずは神徒達が甲蟲人:鍬形を瀕死の状態にしてくれた方が良い。

 バッシュは自分の出番を静かに待つのであった。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 賢王が甲蟲人:鍬形の右腕を刎飛ばした時、カウンター気味に甲蟲人:鍬形の放った巨大斧が賢王にクリーンヒットし、賢王が吹き飛ばされた。

「翠鷹!」

「賢王!」

「うぉぉぉお!双龍覇連突!」

 鬼王と精霊王がその身を案じ、龍王は甲蟲人:鍬形へと追撃を放つ。

 2本の槍を交互に突き出し巨大斧を振り抜いた形の甲蟲人:鍬形の左腕を高速で突く。

 弾き飛ばされた先で右腕をかばいながら賢王が立ち上がる。

「ウチは大丈夫です!右腕が折れたようやけどまだ戦える!」

 賢王は左利きだ。その為、細剣を持つ分には支障はない。

「むぅ。緑鳥がおれば骨折くらいすぐに直してくれるのにな。」

「聖王があの蟻の群衆を抜けて後方に来るのは厳しかろう。」

「だな。翠鷹。痛むだろうが我慢してくれ!」


 龍王の連続突きを強引に巨大斧を振り回して止めた甲蟲人:鍬形。

 そこに精霊王の放つ風の矢が雨のように降り注ぐ。

「グッ!チマチマトウザッタイナ。」

 甲蟲人:鍬形が精霊王に向けて足を踏み出して巨大斧を振りあげる。

 そこに乱入したのは鬼王。

 振りあげられた巨大斧を持つ左腕にハイキックをお見舞いする。

 バランスを崩して巨大斧を降ろす甲蟲人:鍬形へとミドルキックを繰りだす。

 そこに合わせるように甲蟲人:鍬形も蹴りを放ち、お互いに一歩後退する。


 龍王、精霊王、賢王の王化継続時間は残り30分余り。


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