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黒猫と12人の王  作者: 病床の翁


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296話 甲蟲人:鍬形2

 甲蟲人:蟻の群れを越えて甲蟲人:鍬形の傍へとやって来たニーブルはラクサルスに声をかける。

「ラクサルス!他の面々はどうした?レボセチリジン達は?」

「団長!ヤバいっす。こいつはヤバいですよ!他の奴らは一撃でやられました。レボセチリジンの突撃でも刃が立たず、真っ二つにされました!」

「なに?!レボセチリジンまでやられたのか?!」

 男ばかりの帝国騎士団の中にあって、女でありながらもその突貫力が認められ、ナンバースリーの地位にあったレボセチリジンである。

 まさかそんな人物が一撃でやられたとは考えられないニーブル。

「総員!突撃態勢!盾を構えろ!仲間の死を無駄にするな!」

 ニーブルが檄を飛ばす。

 それに合わせて突撃していく騎士団の面々。

「やめろ!」

 鬼王も叫ぶが帝国騎士団の面々は止まらない。

「団長!ヤバいッすよ!突撃はやめた方がいいっす!」

「なにを言うか。ラクサルス。お前も剣を掲げて盾を構えろ。」

 そう言うニーブルの目の前で騎士達が宙を舞った。

「へ?」

 ニーブルも何が起きているのか分からない様子である。

 ラクサルスも最初はそうだった。

 まさか帝国騎士団の団員が一撃ではやられるなどと思ってもみなかった。

 だが、これが現実である。


 体を真っ二つにされて宙を舞う騎士団員を見ながらニーブルは高速で思考した。

 ラクサルスの言う通り、こいつはヤバいと。一般騎士団員よりは自分の方が強いとは認識していた。だが、その団員が手も足も出ない相手ともなれば自分でも手に余る。

 ラクサルスが1人残っていた意味がわかった。

「やめ!突撃はやめ!止まれ!!」

 ニーブルはすぐさま指示を撤回した。

 それでもすでに10人以上が体を千切れさせて宙を舞っていた。

「団長?」

 突撃しようとして動きを止めた騎士が振り返り団長を見やる。

 次の瞬間、その騎士が宙を舞う。甲蟲人:鍬形の射程範囲に入っていたのだ。

 残った騎士団はニーブルとラクサルスを入れても10名程度。

 誰も動けずにいた。


 そんの中で1人飛び出したのは鬼王。

「しゃオラー!」

 甲蟲人:鍬形の射程範囲に入る。

 振り抜かれる巨大斧。その側面を殴りつけ上方に浮かせた鬼王。そのまま甲蟲人:鍬形の懐に入り込むと胸部に強烈な右ストレートをブチかます。

 衝撃を受けて蹈鞴を踏む甲蟲人:鍬形。

「オ前モヤルナ。」

 とそこに三叉の槍で突きを放つ龍王。

 咄嗟に巨大斧を戻してガードする甲蟲人:鍬形。

 そんな甲蟲人:鍬形に向けて再び炎の矢を射た精霊王。

 甲蟲人:鍬形の体の上で小爆発が起こる。

 煙を上げる甲蟲人:鍬形に近付くと細剣による突きを放つ賢王。

 その細剣は甲蟲人:鍬形の斧を持つ腕の肩口に突き刺さる。

 巨大斧を振り回して賢王を突き放す甲蟲人:鍬形。

 そこに再度鬼王が迫り、拳を突き出す。

 肩口に拳を受けて吹き飛ぶ甲蟲人:鍬形。

 そこにさらに精霊王が追い打ちの矢を射る。

 もうもうと煙が上がる。

 それでも矢を射ることをやめない精霊王。

 ボンボンと炎の矢が当たる音がする。


 しかし、ブンッ!っと空気を斬る音がして矢が弾かれる。

 そこで一旦矢を射るのをやめた精霊王。

 煙が晴れた中には無傷の甲蟲人:鍬形の姿があった。

「ムウ。爆発スル矢カ。ナカナカ効イタゾ。」

 腰を落として巨大斧を肩に担ぐ甲蟲人:鍬形。

「次ハコチラノ番ダ。」

 一瞬にして距離を詰める甲蟲人:鍬形。狙いは鬼王だ。

 ブンッと音を鳴らして巨大斧が鬼王に迫る。

「ふんが!」

 巨大斧に左アッパーを放ち上に浮かせる。

 ブンッと音を鳴らしながら鬼王の頭上を巨大斧が通り抜ける。

 その時には鬼王が甲蟲人:鍬形の懐に入り込む。

「せいや!」

 強烈な右ストレートが甲蟲人:鍬形の腹部に突き刺さる。

「グッ!」

 思わず体をくの字に曲げる甲蟲人:鍬形。

 そこに鬼王のダブルスレッジハンマーが後頭部にクリーンヒットする。

 ガクンと上体を落とす甲蟲人:鍬形。しかし、地面に落ちるまではいかない。

 すぐさま上体を上げて巨大斧を持たぬ左手で鬼王の胸を打つ。

 掌底だ。

 体の内側に響く衝撃を受けて鬼王が後方へと下がる。

 そこにまたしても巨大斧が迫る。

 鬼王はバックステップでギリギリ巨大斧の刃を避けた。


「風の精霊よ。力を貸し給え!」

 精霊王が叫ぶと風の矢を番えて甲蟲人:鍬形に向けて射る。

 5本の矢は巨大斧を振り抜いた状態の甲蟲人:鍬形の肩口に全てヒットする。

「ムゥ。」

 矢は突き刺さる事こそないが、衝突の衝撃は甲蟲人:鍬形にも響いていた。


「敵さんはパワータイプと見えます。ウチらはスピードで勝負しましょ。力には速度で対抗するのがセオリーや。」

 賢王が言う。

 それを受けて鬼王が叫ぶ。

「王化!鬼王!斬鬼!!」

 紫鬼の左足につけたアンクレットにはまる青色の王玉から青色の煙を吐き出しその全身を包みこむ。

 青色の煙が紫鬼の体に吸い込まれるように晴れると、そこには額の中央に1本の角が目立つ鬼の意匠が施された兜に青紫色の全身鎧を身に着けた斬鬼形態の鬼王が立っていた。

「これで速度は十分じゃろ。」

「ワタシも風の矢が1番速度が出る。」

 精霊王も言う。


 甲蟲人:鍬形との戦いは始まったばかりである。


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