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黒猫と12人の王  作者: 病床の翁


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290話 甲蟲人:蟻4

 蒼龍に続いて戦場に降り立ったのは朱鮫だった。

「あかん。こうも混戦の中じゃ蒼龍殿を探せまへんな。」

 戦場はすでに帝国軍兵士達と甲蟲人:蟻が入り乱れての混戦状態であり、その中から蒼龍を見つけ出すのはなかなかにハードルが高かった。

「こりゃ合流は諦めてワイも後方から敵さんの後方に魔術をぶっ放すしかあらへんな。」

 朱鮫は長大な杖を掲げて魔術を発動させる。

「ファイアショット!」

 帝国軍兵士の中にも魔術師はいた。

 その魔術師達も混戦の中にあって魔術を行使し、甲蟲人:蟻と戦ってはいた。

 だが、朱鮫の放ったファイアショットは帝国軍兵士の魔術師達では到底実現できないような大規模な火球の雨となった。

 後方に控える甲蟲人:蟻達を一斉に焼く魔術を見た帝国軍兵士の魔術師達は何事かと辺りを見回す。

 そして次々と巨大で数多の火球を放つ朱鮫の姿を見つけた。


「む?朱鮫が来たか。」

 その魔術を見て蒼龍も朱鮫の到着を確認した。

 だが、位置的にすぐさま合流できそうもない。仕方なく蒼龍は目の前の甲蟲人:蟻を倒すことに専念する。

「ファイアショット!ファイアショット!」

 朱鮫の魔術により敵の後方で激しい爆炎が上がる。

 そんな中、戦場に到着したのは紺馬と翠鷹だった。

「朱鮫はんがようけ暴れてはるようやね。」

「法王か。ワタシ達も戦線に加わるか?」

「いや。まずは蒼龍はんを探しましょ。広い言うても帝国軍兵士達に比べれば敵を倒しまくっとるやろからすぐに見つかるでしょ。」

「まずは龍王を探すか。合流を優先という事だな。」

「えぇ。いつ敵将が現れるかわかりまへんからね。纏まってた方がええでしょ。」

「分かった。」

 そう言い合うと2人は1番敵勢力を削れている箇所に向けて走りだした。


 その次に戦場に現れたのは銀狼と金獅子だった。

 朱鮫の放つ魔術を見て2人も話し出す。

「朱鮫が暴れておるな。俺様達も戦線に入るか。」

「だな。蒼龍もどこかで戦ってんだろ。そのうち合流出来るだろう。」

「王化は控えておくか。敵の数が多いようだし、先に削れるだけ削ってからの方が良かろう。」

「そうだな。まだ2時間程度しか王化出来ないからな。この数相手だと2時間じゃ終わらないだろうし。」

「うむ。では行くぞ!」

「おう!」

 2人は目の前の甲蟲人:蟻に向かって行った。


 その直後、戦場に足を踏み入れたのは茶牛と紫鬼であった。

「敵が多いな。」

 紫鬼が呟くと

「んだなぁ。前回の倍、いや3倍近くいそうだなぁ。」

 と茶牛も返す。

「どうするか。蒼龍は何処に行ったか。他の面々も居場所がわからんな。あ、朱鮫は後方におるわ。」

「儂はひとまずは蒼龍を探すのがいいと思うぞぉ。1人で先に戦ってるんだろぉ。フォローが必要だろうさぁ。」

 戦場を見渡しながら碧鰐が言う。

「そうさな。ひとまず手分けして蒼龍と合流するか。」

「だなぁ。」

 そう言うと2人は王化もせずにばらけて戦線に突入した。


 最後に戦場に到着したのは碧鰐、白狐、黒猫、藍鷲、緑鳥の5名だった。

 緑鳥は癒やしの聖術が使える兵僧50名を連れたっていた。

「皆さんは後方で傷ついた兵士の方々の回復をお願いします!」

 緑鳥の指示により兵僧達が戦場の後方で控える衛生兵達のもとへと駆けていった。

「緑鳥さんと藍鷲さんは今回も碧鰐さんの障壁の中から支援をお願いします。」

 白狐が言う。

「なら朱鮫も入れてやれば?後方で魔術ぶっ放してるの朱鮫だろ。」

 確かに戦場の後方からとても1人で放っているとは思えない量の火球を放ち続けている術者がいるのが遠目からでもわかる。

「んじゃオラォは緑鳥と藍鷲を連れて朱鮫の所に向かってから戦線に加わるだよ。」

「分かった。俺と白狐は先に行こう。今回は蟻の数が多いって話だから最初は王化しないでいいだろ?」

「えぇ。途中でスタミナ切れになる事は避けたいですからね。せめて敵将の姿が見えるまでは王化は温存しておきましょう。」

 黒猫の提案に白狐も頷く。

 こうして13人の王も戦場へと集結したのだった。


 一方の蒼龍はと言えばまだ誰とも合流出来ておらず、皆が戦場へと集結したことすら把握していない状態だった。

 すでに数十体の甲蟲人:蟻の動きを止め、時には武器を持つ腕だけを刎ね飛ばし、帝国軍兵士達に引き継いでいた。

 しかし戦場に雪崩れ込んでくる甲蟲人:蟻の数が一向に減った感がない。帝国軍兵士達も途中から節々を狙うようになり、それなりに敵の数を減らしてはいるのだが、それでも三万近い数ともなれば数百倒した所で先が詰まっている。

「敵将は…まだ現れないか。もっとこの蟻どもを減らさなければなるまい。」

 三叉の槍を振り回し、迫り来る甲蟲人:蟻を打ち倒しながら蒼龍は独り言ちる。

 と、そこに後方から声がかかる。

「龍王!見つけたぞ!翠鷹。こっちだ!」

 紺馬である。

 敵を押し込んでいる箇所を重点的に探し回った結果、蒼龍を発見する事が出来たのだ。

「紺馬か。他の面々も来ているのか?」

「ワタシ達も朱鮫の次にこちらに来たところだ。他のメンツがすでにこちらに来ているかはわからない。」

 弓に矢を番え、次々に射ながら蒼龍のもとへと駆け寄る紺馬が答える。すぐ隣に翠鷹の姿もある。

「ウチらのすぐ後に金獅子はん達が来とるはずなんよ。ウチらの送り出す時に藍鷲はんが次は金獅子はんと銀狼はんの番やて言うてたからね。」

「そうか。まぁ奴らが来れば戦場にも動きがあるだろう。それで到着の有無が分かるだろう。」

「敵将の姿はまだ見えないん?」

 迫り来る甲蟲人:蟻の首筋に細剣を突き入れながら翠鷹が問う。

「あぁ。今回は蟻の数が多い。もっと数を減らさないと前面には出てこないだろう。」

「ならワタシ達のやる事は変わらないな。」

「あぁ。まずは蟻退治だ。」

 三叉の槍を突き出しながら蒼龍が答える。


 朱鮫の魔術により後方の敵もかなり削ってはいるものの、甲蟲人:蟻の数は未だに二万強である。


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