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黒猫と12人の王  作者: 病床の翁


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284話 モーノ共和国14

 モードの村に帰った碧鰐にとってはとても平和な日々を送っていた。

 時たま魔物の襲来はあるものの、ゴブリンなどの低ランクの魔物ばかりである為、片手間で片付ける事が出来ている。


 左目を失って戻った際には娘である碧玲にはかなり豪快に泣かれたが、妻であり碧玲の母親でもある玲美に諭されてやっと碧玲も落ち着いた。

 今では左目にした眼帯を格好いいと言うくらいには碧鰐の怪我を受け入れている。


 今日も村の何でも屋として、ドブさらいの仕事をこなして家に戻りシャワーを浴びた。

 村では浴槽を溜める習慣がない為、風呂と言えば常にシャワーだ。

 スキンヘッドの頭にはシャンプーも必要なく体を洗う石鹸で全身を洗っている。


 そんな日の昼下がり、またしても魔物の襲来があった。

「碧鰐さん!また魔物です!今度のはゴブリンじゃない、オーガだっ!!」

 村の警備を担っている太郎平が碧鰐の家に飛び込んできた。

「なに!?オーガだと?そいつは大変だな。よし、オラォも行こう。」

 玄関に立てかけてある手斧を手にして碧鰐が家を出ようとする。

「あなた、無事に戻ってきてちょうだいね。」

「お父さん、頑張ってきてね。」

「おう!任せとけ!」

 玲美と碧玲に見送られて家を出る。


 村の外までは太郎平の案内で移動した。

「碧鰐さん、あそこです。オーガが3体。こっちに向かってきます。」

「なるほどなぁ。よし、オラァが1体ずつ倒していく。太郎平は村にオーガが入らないようにだけ気を付けてくれ。」

 そう言うと1人前に出る碧鰐。

「王化。仁王。」

 碧鰐が声を上げると、右手人差しのリングにはまる王玉から碧色の煙を吐き出しその身に纏う。

 その煙は体に吸い込まれるように消えていき、煙が晴れると鰐を想わせるフルフェイスの兜に碧色の王鎧を身に着けた仁王の姿となる。


 向かってくるオーガは全員手に長大な棍棒を持っていた。

 走るでも無くゆったりと歩いてくる。

 そんなオーガに向けて碧鰐は駆け出した。

「うおぉぉぉぉお!」

 碧鰐は手斧を片手にオーガの手前で跳躍し、オーガの頭を狙う。

「ガァァァ!」

 オーガは手にした棍棒を掲げて碧鰐の手斧をガードした。

 手斧を受け止められた碧鰐だったが、慌てる事は無い。

 跳躍した勢いそのままに右膝をオーガの顔面にお見舞いする。

「ガフッ!」

 鼻先に膝を受けて仰け反るオーガ。

 碧鰐は棍棒に食い込んだ手斧を抜き取り、地に降りる前にオーガの首筋に手斧を叩き付ける。

「ガハァァァ!」

 首の半ばにまで手斧が食い込み、首の動脈を切断する。

 身長差がある為、碧鰐が地に降り立つ時には手斧は首から外れ動脈からの大量出血により、オーガがフラつく。

 動脈を切られてなおも動くオーガ、その生命力の強さには畏怖を感じる。


 なおも棍棒を振りかざして碧鰐に迫るオーガ。

 碧鰐はギリギリのところで棍棒を避ける。

 棍棒を振り下ろした際に下がった頭に向けて碧鰐は斬りつけた首とは逆の首に手斧を叩き込む。

 ガギンと頸椎に当たる確かな手応え。

 首を両サイドから斬られたオーガは流石に耐えきれずその場に崩れ落ちる。


「よし、1体やったぞ!あと2体だ!」

 そう言って振り返った碧鰐の目にオーガの棍棒によって殴り飛ばされる太郎平の姿が映った。

「太郎平っ!」

「だっ大丈夫です。ガードしてますから直撃は受けてません。」

 殴り飛ばされた先で太郎平が立ち上がる。

「碧鰐さん。おれはいいからもう片方のオーガを先にお願いします!」

「わかった!無理するなよ!」

 碧鰐はもう片方のオーガに向けて駆け出した。


 オーガの手前で跳躍する碧鰐。

 そこに向けてオーガが棍棒を振り下ろす。

 手斧で受けた碧鰐だったが、跳躍していた事もあり、激しく地面に叩き付けられる。

「ぐふっ。」

 すぐさま立ち上がり、オーガの腰に向けて手斧を振るう。

 身長差がある為、普通に手斧を振るった際には腰辺りを狙う事になるのだ。

 碧鰐の手斧が腰を抉り腰骨を砕く。

 腰骨を砕かれた事でオーガが膝をつく。

 その隙に下がった頭に向けて手斧を振り下ろす碧鰐。

 手斧は見事にオーガの頭頂部から眉間にまで食い込むと脳を破壊し、オーガを戦闘不能に追い込む。


 残りは太郎平が相手をしている1体だけだ。

 またしても太郎平に棍棒が振るわれ太郎平が宙を舞う。

 そんなオーガに向けて跳躍して近づくと手斧を振り下ろす碧鰐。

 手斧はオーガの棍棒を持つ腕に当たり、その肘先を切り落とす。

「ガァァァ!」

 棍棒を失ったオーガが残る片腕で碧鰐に殴り掛かる。

 クリーンヒットは免れない軌道のオーガのパンチだったが、碧鰐は慌てず権能を発動する。

「障壁!」

 ガンっ

 金獅子の全力の攻撃すら4回も防ぐ障壁である。

 オーガのパンチ如きに破られる権能ではない。


「その片腕も頂こうか!」

 碧鰐が手斧を振るい、無事だった方の片腕も肘から先を切り飛ばす。

 両腕を失ったオーガ。がむしゃらに足を振りあげて蹴りを放ってくる。

 手斧の刃で蹴りを受けた碧鰐。手斧の刃はオーガの足首に食い込み、足首から先を切り飛ばす。

「グガァァァ!」

 切り口を地に着け無事な足で再び蹴りを放ってくるオーガ。

 その膝に向けて手斧を振り下ろす碧鰐。

 膝先が宙を舞い、バランスを崩したオーガが倒れ込む。

「これで止めだ!」

 倒れ込んだオーガの後頭部に向けて手斧を振り下ろす。

 ガギッ!

 頭蓋骨を割られオーガが力尽きた。


「ふぅ。これで終わりだな。」

 オーガの頭蓋骨から手斧を引き抜く碧鰐。

「碧鰐さん、助かりました。ありがとうございます。」

 吹き飛ばされていた太郎平も碧鰐に近づいてくる。

「それにしても王化でしたっけ?その鎧、格好いいですよねぇ。」

 まじまじと碧鰐を見つめる太郎平。

「まぁ神様の力だからな。そんなにまじまじと見るなよ。ちと恥ずかしいじゃないか。」

「格好いいなぁ。良いなぁ。おれも王化してみたいなぁ。」

「流石に神の加護だからな。他人にそうやすやすと移譲出来るもんではないわな。」

 そんな事を話ながら村へと戻る碧鰐達。

 こうしてまた平和な日常へと戻って行くのであった。


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