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黒猫と12人の王  作者: 病床の翁


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282話 マジックヘブン3

 朱鮫の1日は早い。

 まずは5時には起きて魔石魔術に必要な魔石への魔術式の刻印作業を行う。

 現時点で増産出来ている魔術式を刻んだ魔石は3000個ほど。

 いずれも初級魔術であるファイアボールの魔術式を刻んであった。

 甲蟲人と聞いて蟲なら火に弱かろうと火炎系統の魔術を刻むことにしたのだ。

 今は中級魔術であるファイアショットとファイアアローの魔術式を刻んだ魔石を製造中である。


 複数の相手をする時にはファイアショット、単独の相手をするならファイアアローと魔石を使い分けて貰うようにするつもりである。

 魔石魔術については短杖に必ず2つの魔石を括り付ける。

 まずは魔素から魔力へと変換する為の魔術式を聞い魔石、そして実際に発動させる魔術式を刻んだ魔石の2つだ。

 このうち、魔素から魔力へと変換する為の魔術式を魔石に刻む作業は他の者にも任せられる段階に来ていたが、発動させる魔術式を魔石に刻むのはまだ朱鮫以外には難しく、短杖の生産が追いついていない状態である。

 その為、朱鮫はこの日も朝から王化して魔石に魔術式を刻む作業に没頭していた。


「よっしゃ。これでファイアショット100個、ファイアアロー100個の魔石の完成や。」

 魔術式を刻んだ魔石をテーブルの上に起き、椅子から立ち上がって伸びをする朱鮫。

 時刻はすでに12時に近い。

 かれこれ7時間近く椅子に座って作業していた事になる。

 その間にも王化して、クールタイムが過ぎたらまた王化してと王化継続時間を延ばすための特訓は続けている。

 1番遅くに皆と合流し、そこから特訓を始めた朱鮫であるが、最大王化継続時間を1時間半程度にまで延ばす事に成功している。


「さぁて、昼飯はどないしよかなぁ。黒猫はんのカレーが恋しいわぁ。ありゃ中毒性のある味やったからなぁ。昼飯はカレーにでもしよかなぁ。」

 とは言っても朱鮫は料理はからっきしである為、マジックヘブンでは毎食外食になる。

「『銀のスプーン』のカレーにしよかなぁ。それとも『ミラの食堂』に行くか。カレー専門店なら『スパイス天国』もあるなぁ。」

 外出の準備をしながら独り言ちる朱鮫。

 寝間着のまま作業していた為、朱色のトレーナーにデニムのパンツに履き替える。

 寝癖もついたままであった為、軽く水をつけて寝癖を直す。

 とは言え、元々が天然パーマでもじゃもじゃヘアーの為、寝癖もそこまで目立つものでもない。

 ものの数分で外出準備を終えた。


 朱鮫は研究者として、タワー内に研究室兼自宅を構えており、立場的にも魔石魔術の成功により上の地位になった事で上層階を割り当てられている。

 上層階は見晴らしがいいがタワーを出るためのエレベーターを待つ時間が長く、朱鮫的にはあまり上層階に住んでいる事についてはメリットは感じていない。

 しかし、タワーの上層階は研究者なら誰もが羨むステータスの1つでもある為、上層階に住んでいると言うことで周りの目も羨望の眼差しである。

 その点についてはやっと魔石魔術を実用段階にまで持っていった事の証明でもある為、甘んじて受け入れている。


 今日も長い事エレベーターの到着を待ってから1階に降りてタワーを出て街に向かう。

 この時は何があっても良いように魔石が16個も付いた自身の杖も忘れずに持っていく。

 カレーにしようと思ったらやはりカレー専門店がいいだろう。と言う事でタワーから500mほど進んだところにある『スパイス天国』に入った。

 店主は犬系統の獣人で、その鼻の良さをスパイス選びに十全に使い、他にはない独特なスパイスカレーを提供してくれる店だ。


 朱鮫は店の定番メニューであるチキンカレーをオーダーした。

 専門店らしく、辛さも選べるのだが、朱鮫はそこまで辛いものが得意ではない。

「チキンカレー、辛さは普通の5辛でお願いしますぅ。あ、ラッシーも付けたってや。」

 ラッシーはヨーグルトに牛乳、ハチミツ等を加えた酸味と甘味がカレーに良く合う飲み物だ。

 オーダーから10分もかからずカレーとラッシーが運ばれてくる。

「ほな頂きますぅ。」

 一口カレーを口に運ぶ。

「なんやろなぉ。どことなく黒猫はんのカレーに近いんやけど、どっかがちゃうのよなぁ。」

 カレーを口に運びながら独り言ちる。

 朱鮫もすっかり黒猫のカレーの虜だった。

 カレーを口に運び、時折ラッシーを口に含む。

 カレーの辛みが広がった口の中をほのかな酸味と甘味が中和してくれる。

 カレー、カレー、ラッシー、カレーと口に運びすっかり皿もグラスも空になった頃、店の外が騒がしくなってきた。

「なんや。魔物でも出たか?」


 会計を済ませて店の外に出る。

 すると自身の作製した魔石魔術用の短杖を持った兵士達が街の外に駆けて行くのが見えた。

 朱鮫は手近の兵士に声をかける。

「どないしたん?魔物でも出たんか?」

「はい。まだ影でしかないですが、相手は空を飛ぶ魔物。恐らくワイバーンの群れだと思われます。」

「ワイバーンかぁ。数はどんなもんや?」

「敵影は20体以上が観測されているとの事です。」

「ワイバーン20体かぁ。こりゃワイも行った方が良さそうやな。道案内頼むわ。」

 そう行って兵士と共に街の外へと駆けて行く朱鮫であった。


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