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黒猫と12人の王  作者: 病床の翁


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280話 ケイル王国6

 甲蟲人の侵攻予定日を10日後に控えた為、ケイル王国に出張っていた緑鳥が聖都セレスティアに帰って行った。

 その為、ゾンビアタックの訓練は出来なくなり、いざ本番で負傷中になっても困るので紫鬼は集団訓練をやめた。

 その代わり1対1の模擬戦を全員と繰り広げた。

 やっている事はほぼ変わらないが、紫鬼からの攻撃は当てずに全て寸止めにしている。

 それでも拳圧などで吹き飛ぶ兵士もいるが、実際にぶん殴られるよりは軽症で済んでいる。

 ケイル王国の兵士達は自分より格段に強い相手にも怯まず攻め込むだけの胆力を鍛える事が出来た。

 その戦闘技術は向上していないながら、格上にも怯まず攻勢に出られるようになった事で、格段に動きが良くなってきた。

 やはり格上相手だと身構えてしまい、普段のように動けず、実力を発揮できない者が多い。

 この20日間余りはそういった格上との戦闘時の心得を学ぶ良い機会となった。


 一方紫鬼自身はと言うと、王化継続時間は2時間半から延びず、苦戦している状態である。

 黒猫に聞いた通り、王玉の多重起動により、王化持続時間を半分にし、1日のうちの王化している時間を増やしてはみているがなかなかに難しい。

 そんな中、いつものように兵士達と訓練中の紫鬼の元にオーガの接近の一報が届いた。


 なんでも街に接近しているオーガの数は7体。

 街の塀に登り辺りを警戒していた兵士がその集団を発見したらしい。

 思えばここ最近思う存分に力を振るうことの無かった紫鬼は嬉々として1人オーガの相手に迎え出た。

 オーガの群れはなかなかに珍しい。

 普通親子連れなどで子供を連れたオーガの群れは見ることはあっても今回のように大人のオーガがしかも7体もとなると異様ではあった。

 だが、そんな事はお構いなしの紫鬼である。

「よーし。ワシが相手になっちゃるけー、掛かってこんかい!」

 時は王化の継続時間の限界を迎えた紫鬼がクールタイムを過ごしている時だった。

 その為、王化もせずにオーガ7体と対峙する紫鬼。

 対するオーガは皆片手に大木と見間違うような太い棍棒を持ち、身長も3~4mと紫鬼よりも大きい。

「ガオォォォォオ!」

 そして1体の咆哮を合図に7対1の攻防が始まったのである。


 まず跳びかかってきたのは3体。

 いずれも棍棒を振りかざして紫鬼へと迫る。

 中央、右側から襲い掛かる棍棒を半歩下がる事で避けた紫鬼。

 しかし、若干遅れてきた左側からの棍棒ら避けきれなかった。

 左腕を上げて手甲で受ける。

 ガシャン!

 余りの衝撃に足が数cm程地面に埋まる。

 だがやられっぱなしの紫鬼ではない。

 棍棒を当ててきた左側のオーガの心臓部に向けて右手の正拳突きをお見舞いする。

 正拳を受けて後退する左側のオーガ。だがその時には中央と右側からのオーガが再び棍棒を振りあげていた。

 空いた左側に避ける紫鬼。

 右側からの棍棒へ避けたが中央からの棍棒は避けきれない。

 右腕を上げて手甲で受けると左フックを中央のオーガの顎先に叩き込む。

 フラつく中央のオーガ。右側からのオーガが三度棍棒を振りあげる。

 今度は振り下ろされる前に懐に入り込むと顎先へ右手のアッパーカットをお見舞いする。

 吹き飛ぶ右側のオーガ。

 その時には左側のオーガが復帰し、棍棒を薙いできた。

 紫鬼は左腕の手甲で棍棒を叩き上げると左側のオーガの心臓部に向けて再度正拳突きを喰らわす。

 胸骨体を砕く確かな手応え。正拳突きを受けたオーガは数m程吹き飛んだ。

 その穴を埋めるように後ろから新たなオーガが棍棒を振りあげて迫る。

 中央のオーガも意識を取り戻して棍棒を振りあげる。

 ほぼ同時に振り下ろされた棍棒を左右の腕を上げて手甲で受ける。また足元が数cm地面にめり込む。

「んがー!」

 両腕を払い棍棒を払いのけた紫鬼。

 そのまま左側のオーガと中央のオーガの腹部に向けて左右の諸手突きを放つ。

 体をくの字に曲げるオーガ2体。

 その後頭部に向けてダブルスレッジハンマーをブチ込ます。

 連続で繰りだされた後頭部への打撃により、中央と左側のオーガは頭から地面にめり込んだ。空かさずその後頭部を踏み抜く。

 首の骨が折れる感覚が足から伝わってくる。

 これで2体倒した。残るは5体。


「そろそろクールタイムも終わりかのぅ!王化!鬼王!斬鬼!!」

 そう叫ぶ紫鬼の左足につけたアンクレットにはまる青色の王玉から青色の煙を吐き出しその全身を包みこむ。

 青色の煙が紫鬼の体に吸い込まれるように晴れると、そこには額の中央に1本の角が目立つ鬼の意匠が施された兜に青紫色の全身鎧を身に着けた鬼王・斬鬼形態となる。

「さらに王化!爪王!」

 すると左腕のバングルにはまった王玉から灰色の煙が立ちのぼり、左腕に吸い込まれるように晴れていった。

 そして左腕に灰色の鉤爪付きの籠手を身に着けた鬼王斬鬼・爪王形態の紫鬼が立っていた。

「ここからはテンポアップでいくぞぃ!」

 アッパーを受けて吹き飛んでいた右側のオーガと胸骨体を砕いた左側のオーガが棍棒を振りあげて迫る。

「先手必勝!」

 素早く動いた紫鬼は左側から迫るオーガの胸部に左腕に付いた鉤爪を叩き込む。

 胸骨の折れた胸部には何の抵抗もなく鉤爪が入り込む。

 そのまま下部に向けて鉤爪を振るう紫鬼。

 へそ下まで切り裂かれた左側のオーガは傷口から臓物を溢れさせながらその場に崩れ落ちた。

 右側から迫るオーガにはその頭部にハイキックをお見舞いする。

 その一撃で意識を手放したオーガ。ゆっくりと倒れていくその顎先に左手の鉤爪でのアッパーカットをお見舞いする。

 顎下から突き刺さった鉤爪はそのまま頭蓋を通って脳にまで達してその命を奪う。

 残りは3体。


 オーガ達は崩れ落ちた同胞の屍を踏み越えて紫鬼へと棍棒を振り下ろす。

 だが斬鬼形態で速度が向上した紫鬼には当たらない。

 半歩下がり棍棒を避けると右側から来たオーガへ向けて再びハイキックを決める。

 フラつきながらも耐えたオーガ。

 だがハイキックの勢いそのままに左の裏拳が顎差にヒットする。

 さらに鉤爪で頬を斬られるオーガは意識を手放してその場に崩れ落ちる。

 紫鬼はと言えば裏拳の勢いをそのままに中央のオーガに向けて右手のフックをかます。

 見事顎先を捕らえたフックはオーガの首を120度回転させて首の骨を折った。

 紫鬼はフックの勢いを殺さずに後ろ向きからの左足での裏蹴りを中央のオーガに浴びせる。

 腹部に強かに蹴りを受けて吹き飛ぶ中央のオーガ。

 その頃には左側のオーガが棍棒を振り下ろしてくる。

 まだ後ろを向いていた紫鬼だったが、右腕の手甲で棍棒を受けると振り返って左腕の鉤爪を振るう。

 千切れ飛ぶ棍棒を持つ腕。左腕のオーガの右腕が鉤爪によって千切れたのだ。

 武器を失ったオーガの腹部に深々と左腕の鉤爪を差し込むと大きく上へと腕を振るう。

 肋骨に鉤爪が当たるも気にせずに思い切り腕を振りあげる。

 鉤爪は肋骨、胸骨を切り裂き心臓部まで達してその命を刈り取った。


 紫鬼は目の前で意識を失っているオーガのうなじに左腕の鉤爪を突き入れる。

 残るは中央を飛んでいったオーガのみ。

 首の骨が折れた状態でもオーガはまだ生きていた。

 立ち上がり棍棒を構える。

 紫鬼は素早くその懐に入り込むと鳩尾に膝蹴りを叩き込む。

 蹲るオーガ。その顔面に左腕の鉤爪によるアッパーカットが炸裂する。

 3つの刃によって4つに分かれたオーガの頭部。

 オーガはそのまま物言わぬ屍となった。

「うむ。爪王形態での戦いにも慣れてきたな。」

 独り言ちる紫鬼。


 7つの屍はそのままに王化状態を維持したまま街へと戻っていく紫鬼であった。


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