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黒猫と12人の王  作者: 病床の翁


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279話 旧王国領サーズダル1

 サーズダルに待機する紺馬は、ひとまずの生活費用を捻出する為にも傭兵としての依頼を受ける日々を過ごしていた。

 今日受けた依頼はサーズダル周辺に巣を構えたホブゴブリンの討伐依頼だ。

 敵の数は不明。巣を形成するくらいだから10匹以上の群れだと思われる。

 現状ホブゴブリン以外は確認されていないが、もしかしたらゴブリンキングなどの上位種も群れにはいるかもしれない。

 その場合、討伐証明部位を持っていけば追加で報酬を受けられる。


 紺馬は西門から街を出て森の中に入っていった。

 ホブゴブリンの目撃された場所は街から2km先の森の中だ。

 森の中はゴブリン種だけでなく雑多な魔獣も出没する。

 その魔獣も討伐証明部位を持っていけば金になる。

 紺馬は弓に矢を番えながら矢を下に向けて森の中を進む。

 やがて開けた場所に出た。

 そこにはジャイアントボアの群れが食事をしている最中だった。

 ジャイアントボアはれっきとしたDランクの魔獣である。

 討伐証明部位は鼻先。

 紺馬は食事中のジャイアントボアを正面に捕らえられる位置へと移動した。

 弓には3本の矢を番えている。

 ジャイアントボアの数は8匹。

 1度に打てる精密射撃は3本まで。狙いをつけなければ5本まで同時に射れるが今回は精密射撃で3匹同時に眉間を狙う。


 3匹のジャイアントボアが草から顔を上げた瞬間、紺馬の弓矢が引き絞られた弦を解放した。

 真っ直ぐに3匹のジャイアントボアの眉間に突き刺さる矢は頭蓋を越えて脳にまで達する。

 その場に崩れ落ちる3匹のジャイアントボア。それを見た他のジャイアントボアが臨戦態勢を取る。

 しかし、その時にはすでに次の3本の矢を番えている紺馬。

 弦が絞られて残る5匹のうち、3匹の眉間に矢が刺さる。

 その時になってようやくジャイアントボアは紺馬の位置を確認した。

 残る2匹のジャイアントボアが紺馬へと迫る。

 だが、紺馬は慌てない。

 次の2本の矢を番え、突進してくるジャイアントボアの眉間を狙う。

 1本減っただけでも、狙いをつける時間はかなり短縮される。

 突進するジャイアントボアが到達するまであと1mを切った時に紺馬は弓を弾く。

 眉間に矢が刺さったジャイアントボア2匹が、紺馬のすぐ前まで滑り寄ってくる。

 あっという間に8匹のジャイアントボアを仕留めた紺馬は、解体用ナイフを取りだしてジャイアントボアの鼻先を斬り始めた。

 本当ならその肉も持ち帰って金にしたい所だが、今回はホブゴブリンの討伐が待っている。

 ジャイアントボアの肉は諦めた。


 紺馬は元々精霊の住まう森のエルフの里にて狩人として数十年生活しており、その気配を絶つ技術や、逆に気配を察知する技量は並の狩人と比較にならないほどである。

 そんな紺馬だからこそ、ジャイアントボアの正面に立っての奇襲などが成り立つ。

 普通食事中とは言え、正面に敵の気配があれば食事を中断して臨戦態勢に入るのが魔獣である。

 8匹、計3射もの時間を敵の接近なく放てる紺馬の技量の高さが窺える狩りであった。


 だが今回のターゲットはジャイアントボアではない。ホブゴブリンである。

 紺馬は気配を消しながら森の中を歩き続けた。

 辺りが薄暗くなる頃になってようやくホブゴブリンの巣であろう洞窟を発見した。

 洞窟の入り口に2体のホブゴブリンが立っている事からまず間違いないと思われた。

 狩人に必要な能力として夜目が利く事も重要である。

 獣や魔獣など、夜行性のものも少なくない為、月明かり程度の光源があれば夜でも行動できる事が求められる。

 その点、紺馬も十分以上に夜目が利く為、薄暗くなってきた今頃でも十分に戦える。

 まずは音も無くホブゴブリンを射れる位置に移動し、同時に2本の矢を射る事で見張り番のホブゴブリンに2体の首を貫き絶命させた。

 首を狙ったのは万が一の場合でも叫ばれたりしないようにとの配慮だ。

 暫く様子を見るが見張り番の交代などはまだないようで、洞窟内から他のホブゴブリンが出てくる様子はない。

 そこで紺馬は洞窟内に侵入する事にした。


 手には5本の矢を番えた弓がある。

 狭い洞窟内であればそこまで狙いを絞らなくてもそれなりの箇所に当たるように射る事は可能だ。

 一斉に掛かられる方が悪手な為、精密射撃よりも手数を優先する。

 洞窟内はそれなりの広さがあるようで、奥へ奥へと進んでいく。

 洞窟内は壁際に松明が焚かれ、適度な光源がある。

 その為、紺馬でも問題なく進むことが出来た。

 魔物の中には完全なる闇の中でも視覚を有する者もいるが、ホブゴブリンは多少なりとも光源が必要らしい。

 やがて数体のホブゴブリンの姿が見えた。

 洞窟の入り口方向、つまり紺馬に向かって歩いてくる。

 紺馬は静かに弓を引き、矢を放つ。

 矢は全てホブゴブリン達に当たり、1体は眉間を、1体は喉と心臓部を、1体は両の眼球を射貫かれてその場に沈んだ。

 幸い声を上げる者はいなかった。

 紺馬はぐんぐんと先へ進む。


 やがて開けた場所に出た。

 半円の形にくり貫かれた洞窟内には13体のホブゴブリンがたむろしていた。

 様子を覗うが、ゴブリンキングなどの上位種の姿はなかった。

 紺馬は5本の矢を1番身近なホブゴブリン達に向けて射た。

「グギャッ!」

 1体が声を上げた。

 それに気付いたホブゴブリン達が一斉に武器を取り紺馬へと殺到する。

「グギャッギャッ!」

「グギャーッ!」

「グギャッグギャッ!」

 紺馬は5本の矢を次々と射る。

 射る度に3~4体が倒れる。

「ギャッ!」

「ギェッ!」

 紺馬は次々と矢を射る。

 倒れていくホブゴブリン達。

「グギャッ!」

「グゲッ!」

 最後の1体が紺馬に肉迫し、その手に握った長剣を振り上げてきた。

「グギャッギャッ!」

 紺馬の持つ弓は鳥打が金属の刃で構成されており、矢が射れない場合でも接近戦闘が可能である。

 鳥打の刃で長剣を受け流すと、そのままホブゴブリンの首を刎ねた。

 洞窟内が静かになった。

「さて、討伐証明部位は耳だったな。」

 紺馬は1人、討ち取ったホブゴブリン達の耳の回収を始めた。


 紺馬がサーズダルの街に戻ったのは朝方になってからだった。

 まずは傭兵ギルドで依頼達成の報告を済ませ、報酬を得た。

 そのまま借家に戻り、シャワーを浴びる。

 最後に接近戦でホブゴブリンを斬った為、返り血を浴びていたので、そのまま布団に入るのは躊躇われたのだ。

 タオルで水気を拭ってから全裸で布団に入るとそのまま眠りにつく紺馬。


 サーズダルではそんな日々を過ごす紺馬であった。


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