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黒猫と12人の王  作者: 病床の翁


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268話 ドワーフ王国12

 王化した茶牛がミノタウロスを吹っ飛ばした。

「なんだ。王化したのか。あれくらい王化しなくてもオレならやれるってのに。」

 少しフラつきながらもその横に並んだ銀狼が言う。

「何言うかぁ。吹き飛ばされてたくせにぃ。儂ももう少しであぶないところだったわぁ。」

「まぁ確かにちょっと想定よりは強かったな。オレも王化するか。王化!牙王!」

 銀狼が声を上げると、左手中指のリングにはまる王玉から銀色の煙を吐き出しその身に纏う。

 その煙は体に吸い込まれるように消えていき、煙が晴れると狼を象ったフルフェイスの兜に銀色に輝く王鎧を身に着けた牙王の姿となる。

「うん。王化しても義手に違和感はないな。」

「問題ねぇべかぁ。そりゃ良かったなぁ。ただ今はそれより目の前の敵をどうにかしなきゃだべぇ。」

「だな。」


 茶牛に腹を打たれて吹き飛ばされてたミノタウロスが立ち上がって向かってきた。

「ブモオォォォォオ!」

 吹っ飛ばされてご立腹の様子である。

 頭の両脇から生えた角を前面に突き出して突進してくる。

「儂が止めるだぁ!銀狼は攻撃を頼むわぁ。」

「おうよ!」

 突進してきたミノタウロスの角を鎚で受け止める茶牛。

 その隙をついて銀狼が左横手に回り込み、ミノタウロスの腹部に双剣を突き立てる。

「ブモオォォォォオ!」

 狂ったように暴れるミノタウロス。

「うおりゃぁぁぁぁあ!」

 茶牛がミノタウロスの角を大きく弾き上げるとその顔面を鎚で殴りつける。

「ブモッ!」

 大きく左を向いたミノタウロスの顔面が銀狼の目の前に来る。

「喰らえ!双狼刃!」

 銀狼の持つ双剣が振り抜かれ、ミノタウロスの両目を潰す。

「ブモオォォォォオ!」

 手にしたバトルアックスを見境なしに振り回すミノタウロス。

 視界を奪った為、その狙いも粗くバトルアックスの振り下ろしを避けながら、時には弾きながら茶牛は腹部に鎚による打撃を加えていく。


 一方の銀狼もバトルアックスを避けながら着実にその手足を狙って攻撃を続けた結果、ミノタウロスはバトルアックスを持つ腕を切り離され、手元の武器を失った。

 しかしまだ角があると言わんばかりに前傾姿勢での突進を繰り返す。

 両腕を失い、視力も失ったミノタウロスはその後はいい的になった。

 茶牛が叩き、銀狼が斬る。

 そんなやりとりが暫く続くとミノタウロスは力尽きて地面に倒れ込んだ。

 この顔面に鎚の一撃を入れて絶命させた茶牛。


「ふぅ、大変だったべぇ。」

「でも義手と新しい双剣の試運転にはちょうど良かったな。随分と慣れたよ。前より手首の返しがスムーズだ。」

「だろぉ?手首の魔石をもう1段階良いやつに変えたからなぁ。銀狼は戦いの中で手首をよく使っとるけぇぴったりの義手になっとるはずなんだわぁ。」

 王化を解かずに会話を続ける2人。今は討伐証明の角を切り取っている。

「あぁ。ぴったりの義手だな。ありがとう。これでまた双剣が扱える。」

「なぁにぃ、儂の特技が活かせたんじゃしいいって事だぁ。」

 その後も会話を続ける2人。

 ようやく討伐証明の角を切り取り、森から街へと向かいながら2人は話をする。

「王化はこのまま続けたほうがよかんべぇ?少しでも延ばすのが重要だもんなぁ。」

「そうだな。このまま傭兵ギルドに顔を出すか。その後は藍鷲に連絡して迎えに来て貰おう。」

「だなぁ。やっぱ。実戦は疲れたわぁ。まだ慣れないなぁ。」

「そんな事言ってても敵は来るからな。戦闘経験を積んでおくのも重要だぞ?」

「だなぁ。もう少し戦いに慣れておく必要があるなぁ。」

 そんな会話を続けながら街へと戻る2人であった。


 街に着く頃には2人共に王化が解けた状態となり、傭兵ギルドに行って討伐証明の角を提出し、依頼達成の報酬を受け取った銀狼は、待たせていた茶牛のもとに駆け寄る。

「結構いい額の依頼だったからな。換金に時間が掛かっちまった。」

「別に構わないぞぉ。んじゃ王城の庭に向かうかぁ。」

 2人は王城の庭に建てられた茶色の旗を目指して歩き出す。


 その王城の門番に気付くと茶牛が駆け出した。

「トゥングーじゃねーべかぁ。王城勤務になったんかぁ?」

「おぅ。茶牛でねぇかぁ。そうだぁ。オラも立派な王城勤務よぉ。」

 顎髭を1本の三つ編みにしたドワーフが答える。

 追いついた銀狼が問う。

「知り合いか?」

「あぁ。姉ちゃんの旦那、義理の兄貴だぁ。」

「トゥングーと言いますだぁ。よろしくお願いしますだぁ。」

「義理の兄貴か。オレは銀狼。王城にはこれからも出入りすると思うからよろしく頼む。」

「えぇ。王様から聞いてますだぁ。神徒の方々が庭に用事があって来るとかぁ。」

「まぁ、いきなり王城内から現れる事もあるだろうけどな。」

「城の中からぁ?よくわかんねぇーけど、茶牛お前が神徒だったんだなぁ?」

「あぁ。いきなり大地母神様からお告げがおったんよぉ。お前は地王になる素質があるってなぁ。」

「大地母神様からかぁ。ドワーフとしては信じざる終えん話じゃのぅ。」

 鉱山での採掘を生業とする者が多いドワーフ達にしてみれば大地母神は1番振興が厚い神様だった。

「だろぅ。さて、立ち話もこの辺にして儂らはそろそろ行くだよぉ。また1ヶ月もしたら戻ってくるけぇ、その時に話でもしようやぁ。」

「あぁ。わかっただぁ。神徒が何してるんかわからんけど、感張ってなぁ。」

「おぅ。じゃあまたなぁ。」

 挨拶を交わして中庭に辿り着くと、藍鷲にゲートを開いて貰い、聖都へと戻っていく2人であった。


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