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黒猫と12人の王  作者: 病床の翁


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264話 ドワーフ王国10

『鋼の四肢』に戻った銀狼。

 工房では茶牛が金床に向かって一心不乱に鎚を振るっていた。

 声を掛けるのも躊躇われた為、その様子を暫く眺めていた銀狼であった。

 トンテンカンテン。

 トンテンカンテン。

 鎚が金属を叩く音が響く。

 ふっと顔を上げた茶牛が銀狼に気が付いたように振り返る。

「おぉ。戻ってきたかぁ。どうだぁ?いい剣は見つかったかぁ?」

 顎髭を引っ張りながら茶牛が問う。

「あぁ。気に入った双剣を買えたよ。義手の方はどうだ?」

「あぁ。義手の方は1から作る訳じゃなしに修理中さだからなぁ。でも手首の魔石が砕けてるようだから今日1日はかかりそうだぁ。先に聖都に戻るかぁ?」

 金床から銀狼を振り返りながら茶牛が言う。

「いや、1日程度ならここで待つさ。なんなら宿屋を取ってくる。あぁ、先に1人でドワーフ王に緑鳥からの手紙を渡して来よう。」

「おぉ、そうだったなぁ。手紙を預かってたの忘れてただぁ。んじゃ頼むわぁ。儂は急いで行ける義手を仕上げるでなぁ。」

「分かった。1泊してまた明日来る。」

「おぉ。そうしてくれぇ。」

 それだけ言うと茶牛はまた金床に向かって鎚を振るい始めた。

 トンテンカンテン。

 トンテンカンテン。

 その音を聞きながら銀狼は工房を後にした。


 1人でドワーフ王に手紙を渡すためにドワーフ王城に戻ってきた銀狼。

 すでに来るときに門番にも顔を覚えられていた為、スムーズに城には入る事が出来た。

 そればかりか、聖王からの手紙を預かっていると門番に伝えた所、ドワーフ王に繋いでくれると言って案内の兵士を呼んでくれた。

 今はその兵士の後をついて行き、ドワーフ王に謁見する為に城内を歩いている。

 普通の城なら廊下に花瓶や壺が並ぶところだが、流石に鉱石に関して思うところがあるドワーフらしく、廊下には様々な鉱石が並べられていた。

 中にはダイアモンドやエメラルドなどの宝石もあるが素人目には何なのかわからないよあな鉱石も並んでいる。

 そんな石を眺めながら廊下を歩くと謁見の間に辿り着いたようだ。


 案内の兵士が扉を守る兵士達に言伝すると、重厚な扉を警備の兵士が開けてくれた。

「聖王様からの使者の方がお見えになりました!」

 案内の兵士が大声で訪問を告げる。

「はぁーいぃ。こちらにどうぞぉ。」

 締まりの無い声で最奥に座るドワーフ王が言った。

 王の周りには警備の為か数人のドワーフが取り囲んで並んでいる。

 ドワーフは男女問わず髭が生えている為、一見しただけでは区別がつかない。ただ伸ばした顎髭にリボンを付けていたりする者もいる為、一定数は女性もいそうな雰囲気だ。

「よくいらっしゃいましたねぇ。聖王様からの使者だとかぁ?遂に邪神の侵攻が始まりましたかぁ?」

「はい。先日聖都へ甲蟲人の侵攻がありました。詳細はこちらの手紙に記載されている通りです。」

 そう言って銀狼は手紙を差し出すと王のすぐ右横に立っていたドワーフがやってきて手紙を受け取る。


 手紙を従者から受け取ったドワーフ王はその場で読み始める。

「ふむふむぅ。なかなかに大変な敵だったようですなぁ。それでも死者はなしですかぁ。流石都1つで他国と渡り歩く聖都の精鋭ですねぇ。」

「えぇ。兵僧達には随分助けられました。そこで、失礼ですがドワーフ王国の防衛機構はどうなっていらっしゃいますか?」

「ふむぅ。普通であれば国家機密なんですがねぇ。事態が事態だけに共有は必要でしょうねぇ。兵士長、今の我が国の防備はどあなってますかぁ?」

 ドワーフ王に言われて喋り出したのは髭を2つに縛り三つ編みにして鎧を着込んだドワーフ、マクベスだった。

「はいぃ。我が国のドワーフ王国兵士団は数にして1万になりますぅ。練度で言うと傭兵ランクのCランク相当、一部Bランクに相当する者もいるかとぉ。」

 兵士長と呼ばれていたが、ドワーフ特有のゆったりとした口調で言うのでホントに大丈夫か?っと軽く不安に思いながらも銀狼は返した。

「1万。思っていたよりも強固で安心しました。今回の侵攻では敵の兵士が1万程度だったと言う事です。次回も同等かどうかはわかりませんが。」

「ふむふむぅ。敵の兵士は蟻型で魔物のランクはAランクに近いBランクとお手紙にありますねぇ。まぁいざとなれば神徒の方々が集まるまでの時間稼ぎくらいは出来るでしょうねぇ。」

 ドワーフ王が言う。

 各国には聖王様からの使者が神徒についても話をしている。

 神の加護を持つ者として各国首脳陣には神徒の存在が行き渡っていた。


「で、どうですぅ?うちの国の神徒はぁ?確か義手作製技師の茶牛と言いましたかぁ。無事に戦えてますかぁ?」

 ドワーフ王に聞かれて困る銀狼。正直先日の戦いでは茶牛の働きを直接見ていない。

「えぇ。甲蟲人:蟻をバッタバッタと槌で薙ぎ払っていたと聞いています。オレは敵将と戦っていたので直接は見ていませんが。」

「そうですかぁ。我が国から出た神徒となれば我が国を背負っているようなものですからねぇ。頑張って貰うように伝えて下さいねぇ。」

「はい。分かりました。今もオレの壊れた義手を修理してくれてます。随分助かってますよ。」

「ふむふむぅ。それは何よりですぅ。」

 と言う会話を最後に謁見は終わった。


 銀狼はその後、ドワーフ王国に宿を取り、一晩過ごしたのだった。


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