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黒猫と12人の王  作者: 病床の翁


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263話 ドワーフ王国9

 数日後、緑鳥の手紙が書き終わり、藍鷲の王化も可能になった為、ゲートの魔法を通って銀狼と茶牛はドワーフ王国を訪れた。

 目的地は茶牛が働いていた工房。『鋼の四肢』である。

 勝手知ったる様子で街を歩く茶牛について銀狼も歩く。

 ドワーフ王国の城内の庭から『鋼の四肢』までは1時間掛からない程度の距離だった。

 工房に入ると以前も対応してくれた店主がいた。

「おぉ。茶牛でねぇかぁ。帰って来たんかぁ。」

「あぁ。こいつの義手が壊れてなぁ。直すのに設備が必要だったから一緒に帰ってきたんだぁ。」

「そうかぁ。まぁ工房は好きに使えぇ。」

 ドワーフ同士の会話はその間延びした話し方からとてもゆっくりに聞こえるが、ドワーフからしたらこれが普通なのだろう。

「んじゃ、銀狼も奥に来いぃ。」

「あぁ。分かった。」

 工房の奥へと進む。


 そこには大きな炉と鞴、金床や形成台などがところ狭しと置かれていた。

「んじゃもう一回義手の状態見せてくれるかぁ。」

 銀狼は前腕の中程から外側に折れ曲がった義手を差し出した。

「ふむふむ。こいつは付けたまま直すのは難しそうだなぁ。1回義手外すかぁ。」

「このままじゃ無理か。分かった今外す。」

 銀狼は聞いていた手順で義手を外して茶牛に渡す。

「うん。ちと時間掛かりそうだけぇ、先に1人で武具屋でも見てきなねぇ。双剣探すんだろぉ?」

「そうだな。時間がかかるならそうするか。」

 銀狼は右肩から先が無い状態で工房を出ていこうとする。

 その背後から声がかかる。

「剣の品揃えがいいのは三区画ほど東にいった所にある『愚者の剣』だでなぁ。行って見ろぉ。」

「『愚者の剣』ね。行ってみる。」

 銀狼は1人工房を後にした。


 茶牛に聞いた通り三区画ほど東に行った通りを散策する銀狼。

 聞いていた『愚者の剣』はすぐに分かった。店前にでかでかと剣の形をした看板に『愚者の剣』と彫られていたのだ。

 お薦めされるだけあって、店内は広々としており、展示してある剣の数、種類も多い。

「いらっしゃいぃ。何をお探しですかぁ。」

 店員らしきドワーフが声を掛けてくる。

「双剣を探しているんだ。アダマンタイト製の長さはこれと同じくらいで。」

 銀狼は右腰に下げた双剣の片割れを差し出す。

「双剣ですねぇ。少々お待ちをぉ。」

 店員は店の奥へと向かっていった。奥は工房になっているようで、今も金床を叩くハンマーの音が聞こえてきていた。


 店員が両手いっぱいに剣を抱きながら戻ってきた。

「アダマンタイト製の双剣は今はこの4種類ですねぇ。」

 台の上に置かれた剣は4対、8本の剣が並ぶ。

「ってもお客さん、隻腕じゃねぇですかぁ。もう一本は予備で使うですかぁ?それならもう少し種類も出しましょうかぁ?」

 店員ドワーフが銀狼の片腕がない事に気付き言う。

「いや、今義手を修理中でな。普段は義手を付けてるから双剣でいいんだ。」

「そうですかぁ。こりゃ出過ぎた真似をしましたなぁ。すいませんなぁ。」

 店員ドワーフは頭を下げる。

「気にしないでくれ。片腕の奴が双剣探してたらそりゃおかしいってなるよな。」

 言いながら出された4種の双剣を見ていく銀狼。


 4種はそれぞれ、長さが90cm程度の両刃の剣、100cm程度の両刃の剣、120cm程度の両刃の剣、100cm程度の片刃の剣となっていた。

 今使っていた双剣の長さは約100cm程度である。

 あとは重さだろう。

 銀狼は4種の双剣を手に持ってみる。

「ちょっと振ってみてもいいか?」

「いいですよぉ。展示台が多いから気を付けて下さいねぇ。」


 銀狼は90cm程度の両刃の剣から手にして振るってみる。

 長さは短くなるが、重さは今の剣と変わらないくらいだった。

「少し短いけど、重さは今と変わらないな。」

「ポンメル部分、あ、柄頭の部分が打撃にも使えるように幅広になってるからねぇ。重さはそのせいだろうねぇ。」

 言われて見れば柄頭がグリップ部分よりも太く殴打するにも適してそうな作りだった。

 振るってみた感覚も今の物に近い。

「うん。感覚的には悪くないけど、10cmくらい短くなるのか。」

「結構変わりますねぇ。」

 店員ドワーフも言う。


 次は100cm程度の両刃の剣だ。

 こちらは今の物より少し重く感じたが、振るってみた感覚ではそこまで大きく変わる訳ではなかった。

「これはちょっと重いな。」

「こちらも柄頭が殴打に適した形になっている分、今の物よりは重くなるかと思いますねぇ。」

「うん。振ってみた感覚は悪くない。」


 次は120cm程度の両刃の剣。

 こちらは手にズシンときて今までの物よりも明らかに重かった。

 振るってみても若干振り回される感じがある。

「これはちょっと重すぎるな。」

「流石に20cmくらい長くなると重さも随分変わりますからねぇ。」


 次は片刃の100cm程度の剣を持ってみる。

 こちらはファルシオンのようにブレード部分が若干幅広になっていた。

 その分、先程の同じ長さの両刃の剣よりも重く感じた。

「ちょっと重いかな。」

「そちらはブレード部分が厚くなっている分重みがありますねぇ。」

「うん。やっぱり両刃の方が慣れているし、そっちの方がいいかな。」


 今の候補は重さは今と同等だが10cm程度短くなる剣か、重さは少し増えるが長さは今と同等の剣のどちらかだ。

 交互に持って振るってみる。

 やはり長さは重要だ。今までの感覚で振るったら届かないなんて事にもなりかねない。

 重さの違いはあるものの、そこまで大きく致命的ではない。


 銀狼は今までと同等の長さの100cm程度の物にする事にした。

 料金の確認をするのを忘れていた。

「この100cmの両刃の双剣でいくらになる?」

「そうですねぇ。鞘付きで白金貨3枚と大金貨8枚になりますねぇ。」

 アダマンタイト製と考えれば妥当な金額に思えた。

「では、これを貰おう。」

 銀狼は白金貨4枚を店員ドワーフに渡す。

「はいぃ。大金貨2枚のお返しですぅ。ありがとうございましたぁ。」

 銀狼は新しい双剣を左右の腰に下げて、今までの双剣の片割れを背中に背負った。


 さて、義手の修復はどの程度進んでいるだろうか。

 銀狼は1人、『鋼の四肢』に戻るのであった。


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