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黒猫と12人の王  作者: 病床の翁


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261話 甲蟲人:蟻2

 黒い集団も数を減らし、ようやく隙間が見え始めた頃、敵将と闘っていた4人の姿が見えた。

 碧鰐に至っては王化も解け、顔面の左目付近から血を流していた。

 見れば他の3人の王鎧の胸部にも大きな凹みがついており、罅が入っていた。

 4人で相手をしてもそこまでのダメージを受けた事から、相手の強さが伺い知れると言うものである。


 俺と紫鬼は4人が緑鳥達の元へと辿り着けるように間にいた甲蟲人:蟻を次々と殲滅していく。

 紺馬の矢も加わって次々と甲蟲人:蟻は倒れていく。

 やがて4人が緑鳥達のもとへと辿り着いた。

「碧鰐様!今治療致します。」

 慌てた緑鳥が駆け寄る。

「親愛なる聖神様、その比護により目の前の傷つきし者に最大なる癒やしの奇跡を起こし給え。ハイヒーリング!」

 温かな光が碧鰐を包み込む。

 しかし、潰された左目は治らなかった。

 ハイヒーリングとは言えども部位欠損は癒やせないのだ。

「ありがとう。緑鳥。痛みが軽くなったよ。」

「そんな。左目が。」

「仕方ないさ。部位欠損は治せないのだろう?ただ穴が空いているのも不気味だろうから後で眼帯でも用意して貰えると助かる。」

「畏まりました。用意させましょう。」


「碧鰐の障壁があったからこその勝利だな。碧鰐がいなかったらあの突進を止める術がなかった。」

 緑鳥による癒やしの奇跡を受けながら金獅子が言う。

「えぇ。碧鰐さんのおかげですね。」

「あぁ。碧鰐がいなかったら危なかった。」

 白狐と銀狼も続ける。

 どうやら碧鰐の活躍で敵将を倒したらしい。

「王化が解けた碧鰐はんは休んでおってください。金獅子はん、銀狼はん、白狐はんはまだ戦えますか?」

 翠鷹が尋ねる。

「無論だ。」

「まだまだいけるぜ。」

「この蟻も殲滅しないとですね。」

 緑鳥により傷を癒された3人は再び甲蟲人:蟻に向き合う。

 兵僧の活躍もあり、敵影はもう少しだ。

「あと一踏ん張り!頑張ってくれ!」

 俺は声を上げた。

「「「「「おー!」」」」」

 皆の元気な声が辺りに響く。


 すでに翠鷹と紺馬の王化も解けていた。

 が甲蟲人:蟻は王化せずともなんとか2人も戦える相手であった。

 最後の1体は茶牛が鎚で頭を潰して倒した。

 その直後茶牛の王化も解けた。

 戦いは時間にして、1時間半程度であった。

 満身創痍な碧鰐、ヘトヘトになった金獅子達、敵将を倒した3人。

 俺達甲蟲人:蟻を相手にしていたメンバーも王化を解いてその場に座り込んだ。

 敵影は完全になくなり、緊張感が途切れた瞬間であった。

 共に闘った兵僧達もその場に倒れ込んだ。

 彼等の働きもあって、聖都は無事に守られたのであった。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 戦場の後片付けは兵僧達に任せて俺達は聖都の神殿内にある会議室に集まった。

 碧鰐には眼帯が渡され、左目を眼帯で覆っている。

 左目は敵将、甲蟲人:甲虫によって潰されてしまったのだ。

 集まったのは戦いの反省会と今後について話す為だった。

 進行は翠鷹に任せた。

「皆さん、お疲れ様でした。特に碧鰐はん、3人から活躍振りは聞きました。改めて礼を言わせて下さい。」

 翠鷹が言うが

「なに。仲間だろうに。改めて礼などいらんよ。」

 と碧鰐がなんでもない事のように言う。

 片目を失っても尚、堂々たる態度である。

 にしてもスキンヘッドに眼帯姿ってどんだけホードボイルドなんだよ。

 思わず突っ込みたくなったが、控えておいた。

 そこに朱鮫が声を掛ける。

「にしてもスキンヘッドに眼帯姿とは、ますます男っぷりがあがりましたなぁ。格好良ぉ。」

 こんな状態でも明るい男である。

「にしてもワイの王化が30分程度で切れたのには驚いたわ。」

「そうですね。初めて王化しての全力での戦闘でした。ウチも紺馬半も途中で王化は解けてしもたけど、相手が蟻で助かりましたわ。」

「う。ワタシも王化が解けた際には少し焦ったぞ。」

 翠鷹が続ける。

「茶牛はんもギリギリの時間やったもんね。やっぱり王化の継続時間を延ばすんが先決やと実感した戦いでしたなぁ。」

「あぁ。ワイの伸びしろはまだまだある。今度はここ聖都で王化継続時間を延ばす特訓や。」

「ワタシもだな。」

「儂ももっと特訓が必要だぁ。」

「わたしもですね。王化が解けて後半はあまり魔法の威力も出せず、皆さんには迷惑掛けましたから。」

「それはウチもですわ。じゃあ後から合流した組は聖都に残って特訓で決まりやね。」

 翠鷹の言葉に朱鮫、紺馬、茶牛、藍鷲が頷く。


「わたしはまずは今回の襲撃について改めて各国へと通達し、次回の侵攻に備えるよう注意喚起しましょう。」

 緑鳥が言う。

「ならその文書を帝国に運ぶのは我が請け負おう。今回は兵僧の役割も大きかった。帝国が狙われるとなれば帝国兵との連携も必要になってくるだろう。その辺りの事も話しておきたい。」

 蒼龍が言う。

「そうだな。オレもモーリスの兵達と改めて話をしておく必要があるだろう。だがその前にドワーフ王国で義手を直さなければならないな。」

 銀狼も続ける。

「それならワシもじゃ。尚更繋がりがない土地を担当しておるからな。仲間になり得る兵士達の練度も確認しておかねばならんしな。」

 紫鬼も続く。

「では蒼龍はんと紫鬼はんは緑鳥はんが手紙書いて、藍鷲はんが王化出来るようになったら守護エリアに移動ですなぁ。銀狼はんは藍鷲はんが王化出来るようになったらすぐにでもドワーフ王国に。」

「あぁ。」

「分かった。」

「うむ。頼むぞ緑鳥。」

「はい。すぐに手紙を用意致しましょう。」

「金獅子はんと黒猫はんはどないします?」

 翠鷹が聞いてきた。

「俺様もここで特訓の続きだな。獣王国の兵士達には蜚蠊の強さを伝えて備えさせてある。今から俺様が行かなくとも準備は出来ておる。」

「俺も特訓かな。やっぱり聖都にいた方が不測な戦闘もないし、王化を延ばすには適してるよ。」

「私も一緒に王化持続時間の延伸に努めます。」

「ほな、それでいきましょう。全員各地に散るのはまた1ヶ月後が近づいたらで。」

 翠鷹の言葉でその場はお開きとなった。


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