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黒猫と12人の王  作者: 病床の翁


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258話 甲蟲人:甲虫4

 紺馬の放つ矢は次々と甲蟲人:蟻の首筋や胸部と腹部の間の節に当たり、その動きを止めていく。

 しかし、止めを刺すには至らず、その動きを止めるのみである。

 そこで前に出たのは翠鷹。

「とどめは、ウチに任せてや!」

 左手にした細剣で矢が刺さった箇所にさらに突きを入れて傷口を広げ、その首や腹部を落としていく。


 翠鷹の権能はその速度と正確性である。

 目にも留まらぬ早さで繰り出された細剣の突きは狙い違わず矢突き刺さった箇所を直撃して甲蟲人:蟻を沈めていく。

 ただし、腹部を落とされても動きを止めることのない甲蟲人:蟻である。

 また動き出そうとするところに藍鶖のファイアストームが直撃する。

 炎に巻かれた甲蟲人:蟻は暫くは悶え苦しむが、腹部を落とされていることで体の中に熱が入りやすくなり、暫くはもがくとその体を縮ませて動かなくなった。


 魔石魔術は大気中の魔素を使って発動させる為、基本的に魔力切れの心配はない。

 その為、朱鮫はこれまでに自身が研究してきた全てを吐き出すように様々な魔術を発動させた。

 ファイアボール。ファイアショット。ファイアアロー。ファイアバレット。ファイアスピア。アイスボール。アイスショット。アイスアロー。アイスバレット。アイススピア。

 敵が昆虫類の為、炎熱系と冷却系の魔術を多用している。

 外殻が硬く、一撃では仕留められない敵であろうと、二擊、三擊と攻撃を与えていくうちに動かなくなった。

「あっひゃひゃひゃ。ワイの想定通りや。炎熱系に冷却系ならの甲蟲人相手にも効いとるで!アイススピア!」

 巨大な氷の塊で形成された槍が甲蟲人:蟻の外殻を越えて突き刺さる。


 しかし、それでも動き続ける甲蟲人:蟻。胸や腹に穴を空けたくらいでは止まらない。

 しかし、冷却系魔術の真骨頂はここからである。

 突き刺さった箇所から段々と冷却していき、仕舞いにはその身を完全に凍らせて動きを止めた。

 炎熱系で燃やし尽くすか、冷却系で凍らせるか。その2択で朱鮫の魔術は猛威を振るった。


 俺も負けてはいない。

 長剣の攻撃を受け流し、首筋に刃を走らせる。

 長剣の攻撃を受けて、その腕を肘から切り落とす。

 長剣の攻撃を躱してその首を刎ねる。

 ヨルジュニアも頑張っている。

 吐く黒炎の威力が弱まってきているが、その分、尻尾を刃にして甲蟲人:蟻を仕留めていく。

 時には黒雲から黒雷を落とし、その動きを止めてから尻尾の刃で首を落とす。

 兵僧達も復帰した事で戦線は維持できている。

 しかしまだ敵の数が多い。

 幸い、突飛な事をしてくる敵はいない為、順調に対処できている。

 敵将との戦いの様子が気になるがそちらを覗き見る余裕はまだなかった。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 体勢を低くし、頭頂部角を前面に向けて、腰に大剣を構えた甲蟲人:甲虫。

 その動きは予想通り突進からの斬撃であったが、その速度が速かった。

 仁王は咄嗟に戦斧で大剣を弾いたのだが、続く角の突進を見事なまでに胸部で受けてしまい、数十m吹き飛ばされた。

 王鎧の胸部にはありありと角の突撃痕が刻まれた。


 続いて狙われたのは獣王。

 大剣で受け止めようとするも抜刀術の如き動作で振り抜かれた大剣により、大剣を弾かれて、やはり胸部に痛打を受ける。

 吹き飛ばされるが大剣は手放さない。

 吹き飛ばされた先で大剣を杖代わりに立ち上がると、甲蟲人:甲虫に向かって駆けだした。

 目前で跳び上がると、

「雷撃・断頭斬!」

 雷を纏った斬撃を繰り出す。

 片腕となった甲蟲人:甲虫は大きく大剣を振るうことでその剣戟を弾いたが、纏う雷撃は大剣を伝ってその身を焼いた。

 プスプスと湯気を上げる体。しかし、その動きは止まらない。

 再び前傾姿勢の突撃を繰り出して獣王を数十m吹き飛ばす。


「困りましたね。斬撃が外殻に阻まれて通らないとなると私の妖術も効かないですし。」

 破王が呟く。

「オレが凍らせて動きを止める。その間に節々を狙って斬撃を叩き込んでくれ。」

 牙王が提案する。

「分かりました。」

 その言葉を受けて牙王が飛び出す。

「うおぉぉぉぉお!氷結狼々剣!!」

 しかし、甲蟲人:甲虫の持つ大剣により弾かれてしまい、突進をその身に受ける事になる。

 どうにか双剣で受け止める牙王。

「うおぉぉぉぉお!」

 全身に力を込めて双剣を振り抜く牙王。それにより甲蟲人:甲虫の突進を止める事には成功するも、右腕が変な方向に曲がっている。

「銀狼!お前さん、腕が!」

 仁王が心配の声を上げる。

「大丈夫だ。義手が折れただけだ。それよりまた、突進が来るぞ!」

 仁王に向かって甲蟲人:甲虫が突っ込んでくる。

 最初の大剣による斬撃を戦斧で弾いてどうにか体と角の間に戦斧を潜り込ませる。

 しかし、その突進力は凄まじくまたしても数十m吹き飛ばされた。

「飛剣・鎌鼬!」

 飛ぶ斬撃を放つ白狐。しかし、突進は止まらずやはり数十m吹き飛ばされる。

 王鎧の胸元にははっきりと角の跡が残る。

「あの突進を止めない事には反撃もままならんな。」

 獣王がぼやく。

「そうだ!碧鰐!障壁であの突進を止めてくれ。そこに3人で一斉攻撃を仕掛けよう。」

 牙王が閃く。


 仁王の障壁で甲蟲人:甲虫の突進を止められるかが、勝負の鍵となった。


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