256話 甲蟲人:甲虫2
俺はヨルジュニアも連れて来ていた。
Bランクのオーガすら倒せる実力があるんだ。甲蟲人相手にも闘ってくれるだろう。
そんな俺達の前に立ちはだかったのは蟻型の甲蟲人だった。
虫の蟻同様に胸から脚が3対出てて、1対は足になっており、残り2対は腕として機能している。
その腕の1本に長剣を持って襲い掛かってくるのだ。
俺は長剣を右手に持った黒刃・右月で受けて、その長剣を持つ腕を黒刃・左月で切り裂く。
しかしガギンと言う音を鳴らして黒刃・左月は腕の表面を滑った。外殻が硬い。
「黒猫よ!体の節々を狙え!節の硬度はそこまで高くない!」
蒼龍が声を掛けてきた。
節々ね。
俺は再び振り下ろされた長剣を黒刃・右月で受け止めて次は肘関節を狙って黒刃・左月を振るった。
同じくガギンと音を鳴らしたが、見事に腕が切り落とされた。
「Gishaaa!」
聞いたこともない声で叫び声を上げる甲蟲人:蟻であったが、残る手には武器はない。
掴みかかろうとする3本の腕をナイフで弾きながら肘関節を狙って黒刃・右月を振るう。
またしても腕の1本を切り落とした。
「Gyasha!」
それでも掴みかかろうとする腕を掻い潜り、胴体と胸部の間の細いくびれを狙って黒刃・左月を振り抜いた。
ガギンと音を鳴らしながらも胸部と胴体が切り離された。
しかし、蟻の手足は胸部にある。
そのため、胴体を切り離してもまだ動きやがる。
仕方なく、俺は再度腕を掻い潜り首を狙って黒刃・右月を振り抜いた。
首が落ちた事でようやく動きを止めた蟻だったが、次々と次の相手が襲ってくる。
しばらくは手を止める暇はなさそうだ。
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敵将である甲蟲人:甲虫が100mまで近づいてきた。
1番近いのは破王、仁王、獣王、牙王である。
「金獅子さん、銀狼さん、碧鰐さん!私達で甲虫を止めましょう。」
破王が言って前線を飛び出す。
「ちょっと待たんか!」
獣王も慌てて後を追う。
「チッ!先走りやがる。」
牙王も後を追いかける。
「オラァやるぞ!」
仁王も遅れて付いていく。
甲蟲人:甲虫は獣王の持つ大剣に勝るとも劣らぬ大剣を右肩に担ぎ、少し腰を落とした。強者の構えをとる。
その外殻は鈍く光っており、かなりの硬度がありそうである。
蟻達を掻き分けて、そんな甲虫に1番早く近づいた破王が抜刀術からの一閃を浴びせる。
ガキン!
素早く振り抜かれた大剣によりその一閃は弾かれる。
後に続いた獣王も大剣を振り下ろす。
ガギン!
またもや素早く振り抜かれた大剣により金獅子の大剣も弾かれる。
その後に続くのは牙王の双剣だ。
ガキン!ガギン!
素早く振り抜かれた牙王の双剣すらも大剣で防がれた。
「うぉぉぉぉお!」
気合の咆哮と共に振り下ろされた仁王の戦斧は大剣で受けられた。
力任せに戦斧を押し込む仁王。
誰よりも長身の仁王であったが、それにも劣らぬ体格をした甲虫。
戦斧と大剣の押し合いが始まった。
これをチャンスと見た残りの3人は一斉に甲虫に斬りかかる。
しかし、戦斧を弾いた大剣を振り回し、3人の斬撃を弾いた甲虫。
強い。
外殻の強度にかまけて攻撃を受ける事無く、全て大剣で防ぎきっている。
それも人では考えられない腕の関節の可動域が可能としている。
普通の人では曲がらない方向に腕の関節、肩の関節が曲がるのだ。
隙を付いたつもりでも、その可動域の広さ故に攻撃が弾かれ手しまう。
「我ノ相手ハ、オ前達カ。」
甲虫が声を出した。喋れるらしい。
「ほう。いっちょ前に言葉を話すか。そうだ。俺様達が相手になってやる。」
獣王が返す。
「イイダロウ。我ガ大剣ノ錆ニシテクレルワ。」
「舐めた事抜かしやがる!」
牙王が双剣で斬りかかる。
ガギン!
大剣で双剣を止められた。お互いに剣を弾こうと力を入れる。
「今です!」
破王が言い白刃・白百合を大剣を持つ腕に叩き込む。
獣王と仁王もその肩や腕に向けて剣戟を放つ。
しかし甲虫は少し体勢を変えただけで、その硬い外殻に攻撃を受けた。
火花が散るも体には傷1つ付かない。
大剣を振り抜き牙王の双剣を弾く甲虫。
攻勢に出た甲虫は獣王に向けて大剣を振り下ろしてきた。
大剣を大剣で受ける獣王。
しかし、段々と押し込まれて膝が曲がっていく。
物凄い膂力だ。
受けきる事を諦めた獣王は大剣を寝かせて受け流す。
その隙を付いて破王、牙王、仁王がまたしても斬りかかるが硬い外殻に阻まれてダメージを与えられない。
そんな攻撃を受けていること等、気にもせずに、大剣を振り上げて獣王へと振り下ろす。
これも大剣で受けた獣王であったが、逆に弾かれてしまう。
がら空きになった胸部に向けて甲虫が大剣を振り下ろす。
「危ねぇ!」
仁王が手を伸ばし権能である障壁を獣王の目の前に発生させる。
甲虫の放った斬撃は仁王の障壁により阻まれて獣王には届かなかった。
がこれで残りは3枚になってしまった。
決定的な攻撃を防げる便利な権能ではあるが、上限が決まっており、その数は16枚。
緑鳥達の周りに3枚、四方に展開しているため、すでに12枚使用していた。
しかし、今の斬撃は防がなければ、王鎧を纏っているとはいえ、大ダメージ必死の攻撃だった。
仁王の判断は間違ってはいない。
お互いに決定打は入れられないままに、5人の戦闘は続く。




