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黒猫と12人の王  作者: 病床の翁


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254話 甲蟲人:蟻1

 先頭に立ちながらも走り出す兵僧達を見送る白狐。

 万が一にも聖都に敵を入れる訳には行かない為、他の神徒の支援が来るまでは最後尾にて兵僧の集団を超えてきた者達だけを相手にするつもりだった。


「兵僧でも戦えてますね。」

 白狐が独り言ちる。

 敵である蟻の化け物達は兵僧達と良い勝負をしていた。

 数でこそ甲蟲人の方が多く、押され気味ではあるが兵僧達でも十分戦えている。

 おかしい。

 狂戦士の蜚蠊(ごきぶり)は王化した神徒の4人かがりでようやく倒せた程の強敵だった。

 言っちゃ悪いが兵僧程度では止められない程強かったのだ。

 それが甲蟲人の蟻に対しては兵僧達でも戦えている事から、蟻の化け物はあくまで先兵であり、大物が後部に控えていると見た方が良さそうだ。

「奥に本当の化け物が待ってるって所ですかね。」

 白狐は独り言ちる。


 中には兵僧達の防衛網を飛び出してくる甲蟲人:蟻もいた為、それらは白狐が相手をしている。

 外殻が硬質で刃を簡単には通さないだけの防御力はあるが、蜚蠊同様に体の節々を狙えば切断も可能だ。

 白狐は長剣を持つ腕を狙って白刃・白百合を振るう。

 ガキッと音がしながらも長剣を持つ腕を肩口から切断する。

「Gishaaaa!」

 聞いたこともない声で甲蟲人:蟻が叫び声を上げる。

 しかし長剣を持つ腕を失った今は残る3本の腕で掴みかかる他ない。

 白狐はその腕を掻い潜り、首筋に刀を一閃させ、その首を落とした。

 戦ってみた感覚器的に攻撃力はBランク程度。防御力の高さを鑑みてAランク相当と言ったところだろうか。


 今も1体の甲蟲人:蟻を斬って捨てたところである。

 そこに後ろから声が掛かった。

「白狐殿でしたな。敵の数はどんなもんで?」

 朱鮫である。

「朱鮫さん。敵は数千と言ったところでしょうか。今は聖都の兵僧達がどうにか侵攻を抑えているところです。」

「そないでっか。ほな、ワイの出番やな。魔石魔術の威力のお披露目や。」

 そう言うと朱鮫は前に出ていく。

「ファイアボール!」

 朱鮫の持つ長大な杖の先から燃え盛る火炎球が放たれる。

 放たれた火炎球は兵僧達が戦っている頭上を越えて、後方に控える甲蟲人:蟻達を焼いた。


「まだまだいきまっせぇ!ファイアショット!」

 長大な杖の先から燃え盛る火球が数十発生し、甲蟲人達へと迫り、その身を焼く。

「あっひゃひゃひゃ。ワイの想定通りの威力や!甲蟲人相手にも効いとるで!ファイアボール!」

 兵僧が留めている甲蟲人達の後方で火球が爆発し、控える甲蟲人達を焼く。

 その頃には翠鷹、金獅子、銀狼、蒼龍も戦場に駆けつけていた。

 翠鷹が3人に指示を出す。

「聖都に甲蟲人を近付ける訳には行きません。白狐はんと一緒に最後尾にて兵僧を超えてくる甲蟲人の相手をお願いします。」

「おぅ!」

「分かった。」

「任せろ!」

 3人は白狐の横に並んだ。

 この頃になると兵僧達も次々と押し込まれ、兵僧の防衛網を超えてくる甲蟲人が増えてきた。

「皆さん、相手は甲蟲人:蟻です。蜚蠊ほどの強固な外殻は持っていません。跳ぶ翅もないようですし、長剣を持つ片腕を落としてしまえば後は簡単に倒せそうです。」

 白狐が3人に聞こえるように大声で叫ぶ。

「蜚蠊並でなくて助かったな。」

「だがきっと蜚蠊並の奴が後方に控えてるぞ。」

「甲蟲人:蟻はあくまで先兵と言ったところだな。」

 金獅子達も大声で会話しながら甲蟲人:蟻の相手をする。


 次に戦場に辿り着いたのは紫鬼と碧鰐、茶牛だった。

 追加の3人にも聞こえるように白狐が同じ事を繰り返す。

「蜚蠊並は後方に控えてるのか。ワシが敵を掻き分けて奥に行くか?」

 紫鬼が言うが

「いえ。まずは甲蟲人:蟻の数を減らしましょ。ウチらで聖都に入りこむ輩をシャットアウトする必要があります。兵僧達もそろそろ限界でしょう。」

 翠鷹が言うように兵僧達の防衛網を超えてくる甲蟲人が増えてきた。

 相変わらず後方に控えてる甲蟲人には朱鮫が魔術をぶっ放してはいるが、兵僧達に影響が出ないように近場の敵には狙いを付けられない。

 必然、兵僧を超えてくる敵が増えてきていた。


 戦場には黒猫と紺馬の姿も現れた。緑鳥と藍鷲、それにドランも一緒だ。

 聖都以外に甲蟲人の襲来はなく、全員が聖都に集結した事になる。

「敵は蟻型の甲蟲人です。蜚蠊程の強固さはありません。1対1なら兵僧でも戦えてます。ですが数が多いです。朱鮫さんの魔術で大きく数を減らせてはいますがまだまだその数は多いです。」

 白狐が声を張り上げる。

 遅れてきた王達に状況を説明しているのだ。


 甲蟲人:蟻は決して弱くはない。

 その長剣を操る技術も相当なものであり、並の傭兵では手も足も出なかっただろう。

 しかし、王達は1人1人が王化を前でもAランクオーバーの実力を持つ。

 その為、まだ王化せずとも戦線は持続出来ていた。

 しかし、それも兵僧が防衛網を構築していたからである。

 数に押されて次々と倒れていく兵僧達。

 それにつれて王達が相手にする甲蟲人達も増えてきていた。


「負傷した兵僧は後方に!傷ついたらわたしが治します。まずは敵の前線から離脱して下さい!」

 その身に似合わず大音声で緑鳥が言う。

 すると倒れた兵僧を背負って次々と兵僧達が前線を離れる。

 必然、王達が相手取る甲蟲人が増えていく。

 そんな中、1番前線に近い常呂にいた朱鮫が気付き声を上げた。

「見えたで!敵将や!間違いない。あの角は甲虫(かぶとむし)や!」

 大剣を担いだ、強者の風格を持っ敵将の姿が目撃されたのだった。


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