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黒猫と12人の王  作者: 病床の翁


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251話 旧王国首都ワンズ4

 今日も今日とて王化の特訓に影縫いの特訓に明け暮れていた。

 影縫いの方は縫い止めるイメージは出来ているつもりなのだが、相変わらず不発に終わっていた。


 そんな特訓を終えてツリーハウスに戻ろうとした時、ツリーハウスの根元の祠があった穴から生き物の気配を感じた。

 もしかしてヨルが復活したのかも、と思って横穴に入ってみた。


 俺が壊した祠があり、猫の石像がある。

 その最奥に子猫だったヨルを更に小さくしたような黒猫がエジプト座りしてこちらをジッと見つめていた。

 ヨルが小さくなった?と一瞬思ったが子猫には尻尾が1本しかない。

 猫又ではないのだ。

 物の怪の類いは滅んでも時間を掛けて復活すると聞いた覚えがあったのだが、やはりヨルほ滅んだままらしい。


 ジッと見つめてきた子猫はゆっくりと立ち上がると俺に近づいてきた。

 随分警戒心がない。

 ごく小さな体といい、親猫とはぐれたのだろうか。

 俺に近付き擦り寄ってきた子猫を抱いて横穴を出る。

 子猫は俺の片手に収まるサイズだったので、持ち上げて運んでやる。

 ひとまずはミルクでも飲ませてやるか。


 俺はツリーハウスに登り、子猫にミルクを入れた皿を差し出した。

 子猫は顔を突っ込む勢いでミルクを貪り飲む。

 よほど腹が減っていたのだろう。

 結構な量があったのにすぐに飲みきった。

「まだ飲むか?」

「にゃー」

 まだ欲しそうな雰囲気だったので俺は皿にミルクを追加してやる。

 そんな事を何度か繰り返すとようやく腹が落ち着いたのか子猫はゴロンとその場で横になってしまった。


 そこまで強力な魔物が出ない街近くとは言え、たまにオーガなども出る森の中だ。

 このまま解放してもすぐに魔物か魔獣に喰われてしまうだろう。

 そうなる事が予想できる中で外に解き放つのはちょっと心が痛い。

 俺はひとまず子猫を保護する事にして、今日は眠りにつく。

 子猫にも風邪を引かないように毛布を掛けてやった。

 もう腹いっぱいになってすぐ寝てしまった子猫。

 どうにもその顔つきにヨルの面影を見てしまうのは俺のヨルに戻ってきて欲しいと言う願望からそう見えているだけだろうか。


 翌日も俺は森に出て王化持続と影縫いの特訓を行為にツリーハウスを出た。

 子猫は器用に縄ばしごを降りてついてきた。

 広場に出てから俺は言う。

「王化!夜王!!」

 左耳のピアスにはまる王玉から真っ黒な煙を吐き出しその身に纏う。

 その後煙が晴れると猫を思わせる兜に真っ黒な全身鎧、王鎧を身に着けた夜王形態となる。

 子猫は俺の姿が変わった事で一瞬身構えたが、すぐに警戒を解いて静かにスフィンクス座りして俺を見ていた。


 今日も影縫いが成功する気配はない。

 ホーンラビットが一瞬動きを止めたように思ったが、俺が投げたナイフに驚いてフリーズしただけだったようだ。

 と、ここで逃げたホーンラビットが子猫の方に行ってしまった。

 危ない!

 と俺がホーンラビットに近寄ろうとした瞬間

 ゴボォォォォ!

 子猫の口から黒炎が吐き出されてホーンラビットを丸焦げにした。

 一瞬俺が固まった。

 炎を吐く子猫?聞いたこと無い。

 やっぱりこいつは物の怪の類いでヨルの生まれ変わりなんじゃないだろうか。

 そんな事が頭をよぎる。


 そんな事を考えていたら白狐から通信用水晶での連絡が入った。

『クロさん、どうです?王化持続時間延びてますか?』

「いや、まだ3日目だからな。そこまで延びてる感覚は無いよ。」

『そうですかぁ。聞いて下さいよ。私、2時間10分の王化に成功したんですよ。』

「なんだよ。自慢かよ。」

 そんな会話をしている中でふと白狐ならわかるのではないかと思って子猫について話してみた。

「子猫を拾ったんだ。片手に乗るくらいのサイズで真っ黒な毛並みの」

『ヨルさんみたいですね。でもヨルさんは両手で持つくらいのサイズ感だったからもっと小さいですね。』

「あぁ。小さい。でもどことなく顔つきにヨルの面影を感じるんだ。で、今さっきなんだが、その子猫が黒炎を吐いた。」

『はい?』

「いや、だから子猫が黒炎を吐いてホーンラビットを黒焦げにしたんだ。」

『クロさん、普通猫は黒炎は吐きません。』

「いや、わかってるよ。でもこの目で見たんだ。これってやっぱりヨルの生まれ変わりで物の怪の類いだったりしないかな?」

『んー。物の怪が滅びた後にまた自然復活する話は私も聞いたことありますが、そんなにすぐ滅びてから復活するとは思えません。何十年、何百年の時を経て復活するものです。』

「そうか。やっぱり違うか。」

『でも黒炎を吐く猫とは面白いですね。私の方でも少し調べてみますよ。』

「あぁ。頼む。普通の猫じゃない事は確かなんだ。」

『はーい。ではまた。』

 通信が切れた。


 やっぱりヨルの生まれ変わりの線は薄そうだ。

 だが普通の猫ではない事も確か。

 俺は子猫に『ヨルジュニア』と名付けて飼う事にした。

 ヨルジュニアほその後もホーンラビットやジャイアントボアまでも黒炎で焼き殺していた。

 これなら1匹であの横穴に辿り着けた理由もわかる。

 相当な戦闘力だ。

 他にも何か出来るかもしれない。

 俺は王化が解けた際には積極的に子猫を構った。

 しかし、黒炎を吐く以外は今のところ見せてはくれない。

 能力はこれだけなのか。

 もうちょっと詳しく調べてみる価値はありそうだ。


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