245話 獣王国3
水辺で平和だなぁなんて思ってたのが嘘みたいに、その後は魔獣に襲われた。
まずはサーベルタイガー。
下から生えた牙が進化してサーベルの如く相手を串刺しにする体長3m程度の猫系統の魔獣だ。
それが一気に5体。
王化するまでではなかったが、顔を下に向けてサーベルと化した牙を剥いて突進してくる様は脅威を感じたね。
動きも機敏で下を向いて突進して来ているのにこちらが避けた方向を瞬時に判断して直角に曲がって追い掛けてくる。
ただ下を向いている為に、飛んで避ければこちらを見失い、頭を上げて周囲を見渡す。
何度目かの突進を俺は手にしたナイフでサーベル牙を受け流して、下を向いたまはまの頭頂部にナイフを突き立ててやった。
1度では刃が入りきらなかったが、2度、3度とナイフを叩き付けるうちに脳まで刃が達してその動きを止める事が出来た。
牙に頼りすぎて爪などの攻撃をしてこなかったのがあいつらの敗因だな。
牙さえ避ければあとは煮るなり焼くなりお好きにどうぞってなもんだった。
俺が1体倒すうちに金獅子が1体、藍鷲が1体、白狐が2体倒していた。
次に襲い掛かってきたのはボクサーカンガルー。
カンガルーの拳が進化してボクシンググローブ並の巨大な拳を持った2m程度のカンガルーだ。
そいつが7体。
左ジャブからの右ストレートと言ったセオリー通りの攻撃だけでなく、フック、アッパーなども使いこなし、多彩な攻撃を繰り出してくる。
こちらの攻撃もダッキングやスウェーなどを駆使して器用に避ける。
連携も見事なもので、1人につき2体かがりで襲い掛かってきた。
藍鷲には1体だけだ。
とはいえ、やってることは拳闘士と一緒だ。こちとら並の拳闘士の相手など腐るほど戦ってきた元殺し屋さんだぞ。
振りかぶった右ストレートを掻い潜り、首筋にナイフを突き立ててやったさ。
野性を忘れて技に走ったのがあいつらの敗因だ。
左右の首筋を何度かナイフで薙ぎ、最終的には首を刎ねてやった。
皆問題なく倒せたようだったが、流石に藍鷲は草臥れた様子だったので、少し休憩した。
やはり魔法使いは接近戦には向かないようだ。何度か良いパンチを貰ってしまっていたようで、肩で息をしていた。
その次はドリルライノス。
角がドリルになった犀で、4m程度と超重量の体からは想像できない早さで突っ込んでくる厄介な奴だった。
そいつが2体。
どう言う原理かわからないが、鼻先でドリルが回っている。
突っ込んできた所を避けて岩場に誘い込んだが、まるで削岩機の如く岩を削っていた。
何よりも外皮が、厚くてなかなか攻撃が入らない。
鼻先で回るドリルも脅威ではあったがダメージを与えにくいのが1番厄介だった。
白狐と金獅子、俺と藍鷲で1体ずつ相手にした。
藍鷲にはファイアストームで火達磨にして貰って、俺は必死にその首筋にナイフを叩き付けた。
最後は幾度となく斬りつけた首筋の傷からの出血多量で倒れたが、なかなかにハードな戦いだった。
その後はバジリスクに襲われた。
3m程度の大型のトカゲのようだが、その唾液には物を石化する能力を持つ。
長い舌を伸ばしては絡め捕ろうとしてくる厄介な相手だった。手足が短い為、急激な旋回等には対応出来ず、素早く動き回る事で舌の攻撃を避けた。
幸いにも1体で現れた為、俺が影収納から適当に出したナイフで舌を弾きながらナイフが石化したら次のナイフを取り出してと、攻撃を躱している間に白狐が近付きその首を刎ねて倒した。
最終的には合計23本ものナイフが石化して使い物にならなくなった。
1人で遭遇していたらと思うとゾッとする相手だったが、なんとか切り抜ける事が出来た。
その次はコカトリスだ。
4mもの大型のニワトリのような見た目だが、こちらも唾液に石化の能力を持つ。
こいつは舌を伸ばすのでは無く唾を吐いてくる厄介な相手だった。
基本はニワトリのようで羽はあるが飛びはしなかった。
だが飛び跳ねるくらいはしてくるので、唾を避けるので精一杯だった。
藍鷲がファイアストームで放たれた唾を蒸発させている間に俺はバジリスク戦で石化したナイフを手に飛び込んだ。
その後も飛び散る唾液を石化したナイフで振り払い、肉迫すると両手の石化したナイフをその口に突っ込んだ。
それで唾を飛ばしてくるのを抑えているうちに金獅子が大剣で真っ二つに斬って倒した。
こちらも1体だったから良かったが、複数で来られたら面倒な相手だと思ったものだ。
何にせよ、俺達のチームワークの勝利だった。
そんな、こんなで大量の魔物、魔獣に襲われながらも先に進み、ようやく魔術大国マジックヘブンの首都マジックヘブンに到着したのは獣王国を出て15日目の夜の事だった。
もう深夜近かった為、朱鮫への連絡は明日にして、ひとまず宿を取った。
何とか3部屋だけ空きがあったので、白狐、金獅子で一部屋、俺と藍鷲で一部屋で泊まる事にした。
危うく白狐と2人で同室になる事は回避した俺だった。
「戦闘続きで疲れただろう?」
俺は藍鷲に声を掛ける。
「えぇ。流石に疲れました。やはり接近戦になると辛いですね。もっと体を鍛えないと。」
自分の腕を曲げ伸ばししながら藍鷲が答える。
「いっそ銀狼にでも剣技を習うといいかもな。アイツが1番剣技に長けてるし。双剣使いだけど片腕の時は1本でも戦えてたから教えて貰えると思うぞ。」
「魔法使いで剣士とか、なれたら結構強いですよね。」
「あぁ、かなりの脅威になるだろうさ。」
「習って見ようかな。」
「まぁひとまず今日は寝ようや。疲れた時には寝るのが1番だ。」
「そうですね。おやすみなさい。」
「あぁ、おやすみ。」
2人して布団に入った。
そして夜が明ける。




