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黒猫と12人の王  作者: 病床の翁


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240話 旧王国領2

 5mほどのクリムゾンベアには白狐が向かって行った為、蒼龍と俺は3m級のクリムゾンベアを相手にする。

 3m級だからと言って甘く見ていたら痛い目に遭う。

 クリムゾンベアはレッドベアのように炎を纏う他、炎を吐き出しもする。それになにより膂力が違う。

 レッドベアが普通の熊同様に2t程度の膂力だと言われている中、クリムゾンベアはその倍、4t程度の膂力があると言う。

 その前脚には6cm程度の硬質な爪が生えており、生身の人間の手足など一撃でもげる。体に受ければ上下半分に分断されるほどだと言う。

 王鎧を纏っているからと言って舐めてかかれば逆にやられてしまいかねない相手なのだ。


 近付く俺にその左腕の爪撃が迫る。

 俺は黒刃・右月でその爪を弾くと、黒刃・左月で胸元に斬撃を与える。

 しかし、硬質な体毛に覆われた胸元にはうっすら赤い線が浮かぶのみ。体毛を切る程度のダメージしか与えられない。

 そんな中、獰猛な牙を見せたクリムゾンベアが噛みついてきた。

 俺は黒刃・右月の刃を上向きに顎下から突き上げる。

 ガキンッと音がしてクリムゾンベアの口が閉まり、黒刃・右月の刃を半分近くその顎下に埋めた。

 しかしそれで止まるクリムゾンベアではない。再び左腕の爪擊が迫る。

 咄嗟に黒刃・右月を引き抜けなかった俺は黒刃・右月から手を離して距離を取る。黒刃・右月はまだ顎下に刺さったままだ。

 続く右腕の爪擊を黒刃・左月で弾いた俺は、顎下に刺さったままの黒刃・右月の柄を蹴り上げる。

 顎下から入った黒刃・右月はそのまま鼻先にまで貫通した。

 これは随分堪えたらしく、クリムゾンベアが後方に下がる。

 攻勢に出るチャンスだ。

 俺はクリムゾンベアの左側に移動して黒刃・左月でその首筋を突く。

 一撃では刺さらない為、2度、3度と刃を叩き付ける。

 またその間にも足元を狙って左のローキックを当てていく。狙うのはちょうど膝下くらいだ。

 5発目のローキックに耐えかねたクリムゾンベアが膝を着いた。

 俺は鼻先にまで貫通している黒刃・右月の刃を黒刃・左月の柄で叩き、顎下から引き抜くと、先程まで黒刃・左月を突き立てていた首筋に向けて両手のナイフで斬りつけた。

 最初に突いて肉を露わにしておいたおかげて、斬りつけた際にも剛毛に邪魔されずにその首筋に切れ目を入れる事が出来た。

 それでもまだ首はしっかり繋がっており、黒刃・右月を引き抜いたことで口も開くようになった。

 クリムゾンベアは膝を着いたまま左手にいる俺に向けて大口を開けて噛みつこうとしてくる。

 俺はその口内に両手のナイフを差し込み、左右に大きく斬り開く。

 頬肉を斬られたクリムゾンベアは鳴き声を上げて仰け反る。

 ここが狙い目だ。

 黒刃・右月を顎下に突き入れた際に出来た穴に両手のナイフを突き刺して左右に傷跡を開く。

 顎下を大きく裁たれたクリムゾンベアは鮮血を撒き散らしながら後ろ向きに倒れた。

 そこにのしかかるように跨ぎ、開いた顎下から喉元に向けて黒刃・左月を突き刺す。

 黒刃・右月では大きく見開いた左目を突き刺して視力を奪う。

 突き刺した黒刃・左月が喉元に到達した為、さらに押し込み、喉に大穴を開ける。さらにそこに黒刃・右月も突き入れて左右に斬り開く。

 喉元を左右に大きく斬りつけられたクリムゾンベアはその動きを止め、浅く息をする。まだ死なないとは脅威の生命力である。

 俺は黒刃・右月と黒刃・左月を胸元に突き刺して全体重をかけて突き入れた。

 それでも刃が全て入らなかった為、立ち上がり、柄を踏みつけて刃を深々と刺した。

 心臓に達した刃はようやくクリムゾンベアの息の根を止めたのだった。


 横を見れば蒼龍によって体を穴だらけの水浸しにしたクリムゾンベアに藍鷲がサンダーテンペストで止めを刺していた。

 白狐は高笑いしながら5m級のクリムゾンベアを斬り刻んでいる。

 助太刀は不要そうだ。

 俺は蒼龍と藍鷲にも解体用ナイフを手渡して、クリムゾンベアの解体作業に入る。

 殺してすぐの血抜きをするかしないかで味に大きな差が出るのだ。

 首筋を斬ったクリムゾンベアを逆さにして血を抜く。

 滴る血が収まってきたら影収納に入る大きさに切り分ける。

 そんな事をしているうちに白狐もクリムゾンベアを倒し終えた。

 すでに細切れになっているクリムゾンベアを影収納に収めて、移動再開である。

 今日の夕飯は熊肉のステーキだな。


 セカンダルにを出発して4日目にしてサーズダルに到着した。

 街の回りをぐるりと高い壁に覆われた都市である。

 サーズダルには仕事で立ち寄った事しか無く、あたりその街並みには慣れていない。

 まずは宿屋を取り、昼食を食べながら作戦会議だ。

「何処に旗を立てるかだよな。」

「そうですね。街の出入り口付近に立てられれば1番ですけど、門番の方に引き抜かれてしまいそうですよね。」

 藍鷲が心配そうに言う

「となると、街の中ですかね?帝国の時みたいに郊外に一軒家でも借りますか?」

 白狐が提案する。

「サーズダルは郊外とかないぞ?塀の中はびっしり家々がひしめいている状態だ。」

 俺はこの街の構造を説明する。

「むぅ。いっそ、塀の外に刺してはダメなのか?」

 蒼龍が口を挟む。

「引き抜かれない事が重要ですからね。下手な場所は選べません。」

 藍鷲が言う

「じゃあ、やっぱり庭付きの一軒家でも借りましょうよ。」

「そうだな。それが1番かもな。」

 白狐の言うとおりにしようという事になった。


 となれば、まずは不動産屋で物件探しだ。


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