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黒猫と12人の王  作者: 病床の翁


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239話 旧王国領1

 ケイル王国の首都ケイルを出立して10日目にして旧王国領首都ワンズに到着した。

 道中は特に問題なく進んで来れた為、特に進行速度に影響はなかった。


 さて、ワンズには到着したが、何処に目印の旗を立てるべきか悩む。

 俺が待機する場所は自分の家、つまり北西の森の中のツリーハウスになるだろう。

 ツリーハウスの回りは獣道の為、馬で通るには向いていない。

 だからと言って街に立てるとなると領主なりに状況説明した上で誰も引き抜いたりしないようにと対策が必要になる。

 悩んだすえに、ツリーハウスの下に旗を立てる事にした。

 元々獣道で人の行き来もない為、誰かに引き抜かれる心配もないし、領主に話を通す必要も無い。

 時間が無い今のベストな選択だろう。


 ツリーハウスがある下の道の反対側には親父の墓がある。

 その隣に旗を立てて貰った。

 これなら万が一誰かに見つかっても墓の一部だと認識されるだろう。

 藍鷲が黒い旗を付けた短槍を全体重を乗せて地面に突き立てた。


 そんな中に現れたのが3体のオーガ。

 何やら既視感がありやがる。

「俺がやる!王化!夜王!」

 次の瞬間、ピアスについた黒い石から真っ黒な靄が噴出し、俺の体を覆った。

 と思ったら次は体に吸い込まれるように靄が晴れた。

 そして猫を模したようなフルフェイスの兜と丸みを帯びた全身鎧に身を包んだ俺は、1番手前のオーガに向けてスライディングをかました。

 1番手前にいたオーガの足にクリーンヒットしてオーガを転ばせる事に成功。

 そのまま倒れこんだオーガの首元に移動した俺は思いっきり頭を踏み抜いた。

 これだけでオーガ1体を倒した。

 次の2体目はスライディングをかました俺に気付き、棍棒を振り上げてきた。

 が、振り下ろされた棍棒は俺の右腕にしっかりと受け止められた。

 そのまま受け止めた棍棒を上に弾くと、2体目のオーガに向かって跳躍、左腕で繰り出したフックが見事に顎先に入り、2体目のオーガの意識を刈り取る。

 遅れて棍棒を振り上げた3体目には近付いて右膝を右の正拳突きで破壊、バランスを崩して倒れこんだところに廻し蹴りをクリーンヒットさせ首を折った。

 最後に意識のない2体目の頭も踏み抜いて戦闘終了。

 スライディングで飛び出してから1分足らずでの出来事だった。

 俺はヨルがやった様に、素手でオーガ3体を撃破したのだった。


 ワンズには泊まらず、そのまま南下してサーズダルを目指す事にした俺達は馬を走らせる。

 道は整備された街道であり、森との距離もある為、魔物に襲われる事もなく、順調に距離を稼いだ。

 時たま森から出てきたワイルドウルフやジャイアントボア、レッドボアなどに遭遇するも難なく撃破。

 夜も辺りが暗くなり足元が見えなくなるまで馬を走らせてから野営の準備を行った。

 そしてワンズを出てから3日目にして第二の都市、セカンダルへと到着したのだった。


 セカンダルに到着したのは夕方であった為、この日はセカンダルに泊まる事にした。

 魔物の出現が少ないとは言え、野営の際には見張りを立てて交代で眠っている為、たまにはベッドで休むことも必要だ。

 魔物に襲われる心配なく過ごせる時間はありがたい。

 俺達4人は夕飯を食べに街の食堂に行き、それぞれ好きな物を頼んだ。

 今日俺が選んだのはメンチカツ定食だ。

 ハンバーグはたまに作るにしてもさらにそれを衣を付けて揚げるなんて一手間は流石に旅の間は行えないからな。

 運ばれてきたメンチカツにソースをぶっかけ、半分に割ると肉汁滴ってくる。

 これこれ。

 衣に封をされた肉からは肉汁があふれ出す事無く、しっかりとうちに閉じ込められたままになっており、衣を割った瞬間に肉汁が溢れ出す。

 ハンバーグを作る際にも肉汁を閉じ込める為に片栗粉をまぶしてみたり、塩をタネ作りの際に混ぜてみたり、タネにマヨネーズを加えてみたり、牛乳で浸したパン粉をいれてみたりと色々やってみるが中々に難しいものである。

 そんな肉汁たっぷりのメンチカツを平らげて宿屋に戻り、いつも不足気味な睡眠を貪った。


 翌朝は宿屋で出されたパンとスープと目玉焼きとサラダと言う簡単なメニューの朝食を食べてからサーズダルへと足を運ぶ。


 街道の左右が森に近付いた分、出てくる魔物の数も増えたが、低ランクが多い為、王化する事無く撃破していく。

 そんな中現れたのがクリムゾンベア、Aランクの魔獣だ。

 しかもその数3体。

 高ランクの魔獣が群れを組むのは珍しいことから親子連れではないかと思われる。

 現に1体だけ異様にデカイ。5m程度はあるだろうか。残りの2体は3m程度とそれに比べれば小柄な方である。

 これに飛びついたのは白狐。

「我が愛刀の錆にしてくれましょう。王化!破王!!」

 白狐の右耳にしたピアスにはまった真っ白い石から、白い煙が立ち上り白狐の姿を覆い隠す。

 次の瞬間、煙は白狐の体に吸い込まれるように消えていき、残ったのはどことなく狐を思わせる真っ白いフルフェイスの兜と、同じく真っ白い全身鎧に身を包んだ白狐の姿となり駆け出した。

「うむ。王化!龍王!」

 蒼龍が言うと胸に下げたネックレスにはまる蒼色の王玉から蒼色の煙が吐き出される。

 その煙は体に吸い込まれるように晴れていき、残ったのは龍をモチーフにしたような兜に蒼色の全身鎧を纏った蒼龍の姿となり駆け出した。

「王化!夜王!!」

 左耳のピアスにはまる王玉から真っ黒な煙を吐き出しその身に纏う。

 その後煙が晴れると猫を思わせる兜に真っ黒な全身鎧、王鎧を身に着けた夜王形態となる。

 俺は影収納から主力武器である黒刃・右月と黒刃・左月を取り出した。

「藍鷲はフォローに回ってくれ。」

 それだけ言うと俺も駆け出す。

「はい。王化。魔王。」

 藍鷲が言うなり左手小指にしたリングにはまった藍色の石から、藍色の煙が立ち上り藍鷲の姿を覆い隠す。

 次の瞬間、煙は藍鷲の体に吸い込まれるように消えていき、残ったのはどことなく鷲を思わせる藍色のフルフェイスの兜と、同じく藍色の全身鎧に身を包んだ魔王の姿となる。


 俺達とクリムゾンベアの戦いが始まった。


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