237話 ララ法国14
ドワーフ王国を出て21日目にしてようやくララ法国の首都ララ・ダウトに到着した。
山を越える際に遭遇した山の主、フェンリルとの戦闘が激化した以外はまぁまぁ順調な旅となった。
フェンリルは常に風の膜を体に纏わせており、藍鷲の魔法がことごとく効かなかったのが痛かった。
藍鷲の魔法は全て風系統が含まれる為、より強い風系統の守りを突破出来なかったのだ。
だが最後には武王形態となった蒼龍が紅蓮の炎を吹き出す紅色の槍でもって心臓を一刺しし、体内から焼き殺す事で難を逃れたのだった。
と、まぁ色々あった旅ではあるが無事にララ・ダウトにも到着したので、宿屋で疲れを癒す。
明日には法王城に行って翠鷹からの手紙を渡して来なければならない。
軍師からの手紙とは言え、王との謁見にどの程度時間が掛かるかは未知数だ。
甲蟲人の侵攻まであと2カ月ちょっと。早くしないと獣王国にまで手が回らない。
若干の焦りもありつつ、その日は久々のベッドで快適に眠りについた。
翌朝、早々に法王城に向かう。
昨日は夜に到着したので気にもしなかったが、改めて街並みを見ると煉瓦造りの家や石材で出来た家、木造で出来た家など、統一性がなかった。
白狐曰く、これはララ・ダウトの周りの土地に森もあれば岩山もあり、様々な資材が手に入る環境だからだそうだ。
白狐ほ翠鷹を仲間に引き入れる際にも来ているだけあって足取りに迷いがない。
暫く歩いて辿り着いたのは国の規模の割にでっかい石材仕立ての4階建ての城であった。
法王城の周りにはぐるりと高い塀が取り囲み、侵入者の侵入を拒んでいた。
そんな法王城の門にはもちろん門番が立っており、白狐が軍師からの手紙だと言って門番に手紙を渡した。
門番はしばらく待つようにと言って城内に走って行った。
これはあまり待たずに謁見出来そうだ。
結局その場で待たされる事1時間あまり。走って行った門番が汗を搔きながらまた走って戻ってきた。
「法王様が今からお会いになられるとの事である。案内するのでついて来るように。」
と言ってまた、回れ右して城内に入って行った。
俺達もその後を追い掛けるように城内へと入って行く。
白狐は勝手知ったると言った様子で門番についていく。
どうでもいいけど、何処の城にも廊下に高価そうな花瓶が並んでるよな。
そのくせ花瓶には少量の花しか生けられていないでやんの。これは花を見せるってか、花瓶を見せてるんだな。高級な花瓶を置けるだけの財力がありますよ的なやつかな。
そんなどうでも良いことを考えていたら謁見の間に到着したようだ。
案内の兵士が大声を上げながら扉を開いた。
「聖王様の使者がお見えです!」
ほぅ。翠鷹は俺達を聖王の使者って事で手紙に書いてくれたようだ。確かにその方が話は早い。
俺達は一段高くなった位置に座する法王の前まで歩き白狐がするのを見ながら跪いた。
「お?そちらはこの前軍師を迎えに来た者ではないか?」
法王は白狐を覚えていたようだ。
「はい。今回は邪神の侵攻の対策についてお話があり参上しました。」
「うむ。軍師からの手紙は読んだ。ゲートなる魔術で瞬間移動して各地に散った仲間を侵攻があった場所に移動させるとか?」
「はい。その通りです。そのゲートの門を開くための目印をここララ・ダウトにも設置させて頂きたいのです。」
「うむ。話はわかった。手紙には馬での移動も考えているとあったし、法王城の中庭辺りにその印とやらを設置して貰うのが良かろう。宰相、それで良いな?」
「はっ。中庭であれば馬での出入りも可能でしょうし、問題ありませぬ。」
「うむ。と言う事だ。案内を1人つけよう。文官のうち1人が案内せい。」
「はっ。ではわたくしが。」
「うむ。任せた。」
「はっ。ではこちらへどうぞ。」
「それでは法王様、これにて失礼致します。」
白狐が頭を下げたので残る俺達も合わせて頭を下げておく。
そしてそのまま謁見の間を後にした。
緑鳥や金獅子と接してると忘れがちだが、普通一国の王なりに会うとなればあんな風に跪いたりするんだな。
その辺りは学がない俺にはさっぱりだった。白狐が一緒でよかった。
そんな事を考えていると中庭に到着した。
城も立派なだけあって中庭も広い。聖都の神殿の倍近くはあるだろうか。
「こちらが中庭になります。旗?を立てるとか?この通り広さは十分かと思いますがあまり邪魔にならない場所にお願い致します。」
案内してくれた文官に言われた。
「花壇もあるし、出口に近い方がいいから、この辺ですかね。」
藍鷲が翠色の旗を立てる。
ここでも抜けないように全体重を預けて短槍を埋める。
「それじゃ外からゲート開けて確認しますね。」
そう言って藍鷲は城の外に出ていった。
30分ほどしてゲートの門が開き、王化状態の藍鷲がゲートを潜ってきた。
「クローズ。王化、解除。」
王化を解いた藍鷲は汗だくだった。
走って街の外まで行ってゲートの魔法を使ったらしい。
「ご苦労様。」
「いえ、これが…わたしの…役割…ですから…。」
息も絶え絶えで答えてくれた。
ひとまずはゲートも無事に開けたし、ここでやるべき事は済んだ。
「それじゃこの旗を抜いたりしないように十分注意してくれよ。」
ゲートの魔法にまだ驚いている文官に告げて俺達は城を出た。
さて、次はケイル王国と旧王国領だな。




