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黒猫と12人の王  作者: 病床の翁


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236話 ララ法国13

 ドワーフ王国からララ法国へと向かう道中は山を2つ越えなければならない。

 そんな中、最悪の出会いをしちまった。

 山の主であるフェンリルとばったり遭遇してしまったのだ。

 いや、違うか。

 奴は自分のエリアに入ってきた強者の気配を察知して縄張り争いを仕掛けてきたのかもしれない。


 フェンリルのランクはSランク。

 体長は5m程と魔族領で遭遇した個体よりも大きかったが、スピードは健在だった。

 以前戦った時はヨルが影縫いを多用して一瞬動きを止め、その間に肉迫して左右に持った黒刃・右月と黒刃・左月での斬り込みを行えたが、今は影縫いが使えない。

 今思えばやはり一瞬とは言え、その動きを阻害出来る技はとても重宝された。

 今もまだ影収納には200本近い投げナイフが保管されている。

 何処かのタイミングで影縫いを習得できないか本気で考える必要がありそうだった。


「相手はSランクだ!王化して挑むぞ!」

 俺は皆に声を掛ける。

「王化!夜王!!」

 左耳のピアスにはまる王玉から真っ黒な煙を吐き出しその身に纏う。

 その後煙が晴れると猫を思わせる兜に真っ黒な全身鎧、王鎧を身に着けた夜王形態となる。

 俺は影収納から主力武器である黒刃・右月と黒刃・左月を取り出した。

「我が愛刀の錆にしてくれましょう。王化!破王!!」

 白狐の右耳にしたピアスにはまった真っ白い石から、白い煙が立ち上り白狐の姿を覆い隠す。

 次の瞬間、煙は白狐の体に吸い込まれるように消えていき、残ったのはどことなく狐を思わせる真っ白いフルフェイスの兜と、同じく真っ白い全身鎧に身を包んだ白狐の姿となる。

「うむ。王化!龍王!」

 蒼龍が言うと胸に下げたネックレスにはまる蒼色の王玉から蒼色の煙が吐き出される。

 その煙は体に吸い込まれるように晴れていき、残ったのは龍をモチーフにしたような兜に蒼色の全身鎧を纏った蒼龍の姿となる。

「はい。王化。魔王。」

 藍鷲が言うなり左手小指にしたリングにはまった藍色の石から、藍色の煙が立ち上り藍鷲の姿を覆い隠す。

 次の瞬間、煙は藍鷲の体に吸い込まれるように消えていき、残ったのはどことなく鷲を思わせる藍色のフルフェイスの兜と、同じく藍色の全身鎧に身を包んだ藍鷲の姿となる。


 まだ俺達の周りを回って様子見しているフェンリルに向かって藍鷲が魔法を放つ。

「食らえ!ファイアストーム!」

 火炎を伴った暴風がフェンリルを襲う。しかし、ここで思いも寄らない事が起こった。

 火炎渦巻く暴風がフェンリルの体表を滑るように避けてしまった。

 フェンリルが避けたんじゃない。魔法がフェンリルを避けたのだ。

「ウィンドカッター」

 無数の刃となった風がフェンリルに向かうもやはり避けられてしまう。

「ウォーターブラスト。」

 高圧の水流がフェンリルの巨大に迫るもやはり避けられてしまう。

「サンダーテンペスト。」

 雷を纏う暴風がフェンリルに向かうもやはり避けられてしまう。

「ロックハリケーン。」

 土石流を含む風の猛襲すらも避けられてしまう。

 避けられてるんじゃない。魔法の方がフェンリルを避けるのだ。

 これには藍鷲も慌てた。

「そんな。わたしの魔法が一切通らないなんて…。」


「シャァァァア!」

 魔法を防ぎきったフェンリルがその巨大を猛スピードでぶち当てに来た。

 俺は藍鷲の前に出て、黒刃・右月と黒刃・左月をクロスさせてそのタックルを防いだ。凄まじい勢いに押されて足元が数十cm下がる。

 そこに白狐と蒼龍が攻撃を仕掛ける。

「?」

「!?」

 刀を振るった白狐と三叉の槍で突いた蒼龍が不思議そうに首を傾げる。

「どうした?」

「あのですね。真っ直ぐ刀を振り下ろしたはずなのに狙いが逸れたんですよ。」

「うむ。我もだ。何かに弾かれるように狙いがズレた。」

「どう言う事だ?何か魔法的な物を纏ってやがるのか?」

「それです!フェンリルの中には体に風の魔法で膜を作って防御力を上げている奴がいると聞きました。」

「なるほど。風か。突きがズレたのも風に煽られて狙いから逸れたのかもしれんな。」

「風の膜…。それならわたしの魔法は全て風属性を含んでいますからより強固な風の防御に弾かれたのかもしれません。」

 藍鷲の魔法が効かなかった理由にも説明がつきそうだった。


「風の膜で狙いがズレるなら、最初からポイントをずらして攻撃するだけです!」

 白狐の白刃・白百合がフェンリルの首筋に当たる。

 しかし、強靱な肉体に鋼のような体毛を持つフェンリルには傷をつけられない。

「一撃でダメなら連撃で仕留めるまでです!」

「龍覇連突!」

 蒼龍も連撃を選んだようで高速突きを足元に叩き込む。

「抜刀術・飛光一閃!」

 高速で振り抜かれた刀により放たれた一閃はフェンリルの前脚にヒットする。

「抜刀術・閃光二閃!」

 抜き身の白刃・白百合を目にもとまらぬ速度で振り上げるとさらにフェンリルの足元が斬られる。

「抜刀術・発光三閃!」

 その剣閃が通った先ではフェンリルの足元から鮮血が溢れ出す。


 これによりフェンリルの速度がかなり低下した。それでもまだ目で追うのがやっとと言ったレベルで動き回るフェンリル。

 俺はフェンリルの動きの先を読み、黒刃・右月と黒刃・左月を振るう。

 狙った通り、ナイフを振るった先にフェンリルが到達した。

 目元を狙った為、片目を房潰すことに成功する。

 片目を失い遠近感が曖昧になったはずだが、フェンリルは的確にその爪を振るってくる。

 爪劇を三叉の槍で受け止める蒼龍。その後ろから跳び上がりフェンリルの顔面を狙い刀を振るう白狐。

 俺は首元に移動して喉元にナイフを突き入れる。


 やはり強靱な肉体に阻まれて傷は浅い。

「こんにゃろ!」

 突き刺さったナイフに蹴りを入れてさらに、深く突き刺す。

「キャイィィィン!」

 初めてフェンリルが鳴いた。

 喉元への攻撃が効いたようだ。

 黒刃・右月が突き刺さったまま距離を取られる。

 やべぇ。このまま逃げられたら主力武器が無くなる。

 焦った俺は退いたフェンリルを追って首下に潜り込むと突き刺した黒刃・右月をさらに食い込ませてから一気に引き抜く。

「キャイィィィン!」

 首元から鮮血を滴らせてフェンリルがふらつく。

 その隙を見逃す白狐ではない。蒼龍もだ。

 蒼龍は俺と同様に首下に移動すると三叉の槍を突き上げて首筋を狙う。

「水撃・龍翔閃!」

 高圧水流がフェンリルの首筋に穴を開ける。


「抜刀術・飛光一閃!」

 高速で振り抜かれた刀はフェンリルの首筋に叩き込まれる。

「抜刀術・閃光二閃!」

 抜き身の白刃・白百合を目にもとまらぬ速度で振り上げるさらに首筋に赤い線を付ける。

「抜刀術・発光三閃!」

 その剣閃が通った先では首の肉が見え始める。

「抜刀術・残光四閃!」

 見えた肉をさらに斬り刻み、その傷を深くする。

「抜刀術・無光五閃!」

 1度に5度振るわれた刀がフェンリルの首の骨を露わにする。

 それでも止まらぬフェンリル。1度退いたかと思えば再び高速で走り回り、強烈なタックルを仕掛けてくる。


 再び俺が黒刃・右月と黒刃・左月をクロスさせてそのタックルを受け止める。

「王化!武王!」

 蒼龍がそう叫ぶと右手親指にしたリングにはまる紅色の王玉から紅色の煙が立ちのぼり蒼龍を包み込む。

 その煙が右腕に吸い込まれるように消えていくと、右腕に紅色の線が入った王鎧を纏い、その手に燃えるような紅色の槍を持った蒼龍が立っていた。

「外からのダメージに強いのなら内側から焼くまでだ!」

 タックルを止められて動きを止めていたフェンリルの胸元に向かって紅蓮の炎を纏う槍と三叉の槍を交互に突き刺していく。

「双龍覇連突!」

 その槍は強靱な肉体をも突き刺し、体の深部に辿り着く。

「食らえ!炎擊・龍翔閃!」

 右腕に持った紅色の槍からさらに炎が燃え盛り、フェンリルの体内を焼く。

「キャイィィィン!」

 その槍はフェンリルの心臓部まで達してその息の根を止めたのであった。


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