232話 ドワーフ王国5
街道を行く事で4日目。
目の前に車輪が壊れた馬車とそれを取り囲む武装した男達に出会った。
よくみれは数人のドワーフがすでに斬られて倒れており、今も数人のドワーフ達が抵抗していた。
これは完全に山賊である。
俺達は馬で走り寄ると、武装した男達を次々と倒していく。
抵抗していたドワーフ達は何事が起きたのか理解が追いついていないようであたふたしていた。
山賊達は皆、シミターと言う刀身が湾曲した刀を持っていた。
シミターは直剣と事なり斬る事に重点を置いた武器である。
打つ、突くをメインに据えた直剣よりも殺傷性が高い。
ようするに、こいつらは殺す気満々と言うと事だ。つまり殺される覚悟もあるのだろう。
と言う事で俺達は遠慮無く山賊達を斬って行く。
振り下ろされたシミターを右手の順手のナイフで弾いて左手の逆手のナイフで首元を斬りつける。
シミターを左手の逆手に握ったナイフで受けて、首筋に右手の順手のナイフで突く。
ものの数分で山賊達を倒した俺達は車輪が壊れた馬車に近付く。
「大丈夫か?数人は斬られてるようだが?」
「あ、あぁ。助かったぁ。斬られた者達も今は気を失っているだけで命に別状はないよぉ。」
リーダー格らしき長い髭を持ったドワーフが答えてくれる。
「あぁ、それよりも馬車の中の姫君はご無事かぁ?」
姫君?これはフラグが立った感じがするな。
馬車の扉が開かれてドワーフの髭面にリボンを巻いた女が降りてきた。
ドワーフは男も女も髭が生えるため顔だけで性別を判断するのは難しい。
だがリボンを巻いているのだ。このドワーフが姫君なんだろう。
降りてきたドワーフが言う。
「この度は危ない所を助けて頂きありがとうございましたぁ。私はドワーフ王国の王女、ベアトリスと申しますぅ。是非にもお礼がしたいのでこの先のドワーフ王国にお立ち寄り頂けませんかぁ?」
「いや。もともとドワーフ王国に向かっていたんだ。」
「まぁ。そうですかぁ。ならちょうどいいですわぁ。ドワーフ王国の王城にお招きいたしますわぁ。」
ドワーフの姫君が言う。これはチャンスだ。茶牛は王族に伝は無いと言っていたが思わぬ所で繋がりが出来た。
「まずは馬車を直さないとだな。」
俺が言うと藍鷲が前に出た。
「これは前から創っていた魔法なんですが、リペア」
藍鷲が言うと壊れていた車輪が元通りになった。
「壊れた部品などを直す魔法です。あったら便利だと思って王化出来るようになって最初に創った魔法なんです。」
藍鷲が言う。
全く魔法ってやつは何でもありだな。
そのおかげで馬車が直ったのだから喜ばしいことではあるが、魔法の利便性、そして、魔王の魔法創造の権能の凄さを思い知ったね。
「できればドワーフ王国までの警護もお願い出来ませんかぁ?」
と姫君に言われた為、一緒にドワーフ王国に向かうことになった。
馬車の車輪が直ったことで走行可能になった、馬車を取り囲むように俺達は馬を走らせる。
途中ワイルドウルフに遭遇してこれを撃退したり、ワイルドベアに出くわしてこれを撃破したりしながら旅を続けてさらに4日目にして俺達はドワーフ王国へと到着したのだった。
ドワーフ王国の街は土壁で出来た1階建ての家屋が並ぶ。
街道を以外の三方を岩山に囲まれた土地だった。
「早速お礼をしたいので、王城までご足労願えますかぁ?」
ドワーフの姫君の言葉に頷きながら俺達はドワーフ王国の王城に近付いて行く。
王城は流石に土壁ではなく、切り出された石材で作られた3階建てだった。
城壁に囲まれており、馬車が到着すると
「かいもーん。開門。」
と警備兵が声を上げ門が開かれる。
馬車を停めるところに、馬も手綱を結びつけて王城の中に案内される。
やがて、謁見の間に到着した俺達は姫君に続いて謁見の間に入る。
中には玉座に座った1人のドワーフとその周りを囲む警備兵が立っていた。
「御父様ぁ、こちら山賊達に襲われた所を助けて頂いた傭兵の方々ですわぁ。」
姫君に紹介される。
「それはそれはぁ。娘の危ない所を救って頂いたと言う事なら何か礼をしなければならないなぁ。」
一際髭が長いドワーフの王が言う。
「実は私達、聖都からの使者なんです。聖都からの通達はすでにお読みですよね?」
白狐が言う。
「むぅ?あの邪神復活の件かねぇ?あと3ヶ月程度で邪神の先兵が攻め込んでくるとかぁ?」
「そうです。その件でドワーフ王国に旗を立てたいのです。」
「旗だぁ?なにゆえだぁ?」
「はい。実は瞬間移動を可能にする魔術があります。ゲートと言うのですがそのゲートで門を開く場所の目印として旗を立てたいのです。」
「瞬間移動ぉ?」
「はい。瞬間移動が可能になれば甲蟲人が攻めてきた際にはそこに戦力を送り込めるようになります。」
「ほぉほぉ。聖都が甲蟲人対策としてやっていると言う事かぁ?」
「その通りです。」
「なるほどなぁ。瞬間移動かぁ。凄いこと考えるだねぇ。」
「それで旗を立てたらそこにきちんと旗を立て続けて欲しいんですよ。誰かが引き抜きてしまうことがないように。」
「なるほどなぁ。それは王城内でもいいのかぁ?街の中じゃ誰が触るかわからんでなぁ。王城の中ならしっかり管理出来るさぁ。」
「馬での移動も考慮して頂ければ。」
「そこは問題ないぞぉ。街中から王城までは馬での行き来が出来るだぁ。」
「では王城内に旗を立てさせて頂いても?」
「あぁ。案内の者をつけるだぁ。」
「あ、御父様ぁ。その案内は私がしましょう。」
「むぅ。そうかぁ。ベアトリス、頼むぞぉ。」
「はい。ではこちらへどうぞぉ。」
俺達は王女ベアトリスに続いて謁見の間を後にしたのだった。




