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黒猫と12人の王  作者: 病床の翁


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231話 ドワーフ王国4

 翌日からの旅には残念ながらドランは連れて行かない事にした。

 と言うのも、朝食の際にまたみんなで集まった時のことである。

「そーいえばドランはどうじゃ?上手く連れて行けとったか?」

 紫鬼に聞かれた。

「そうだな。街に入る時には誰か一緒にいてやらないといけないから必然的に誰か1人は街に入れなくなるが途中の旅自体は問題ないぞ。」

「いえ、1度大空を飛ばせた際にはワイバーンの群れに襲われた時は鳴きながら降りてきたじゃないですか。」

 白狐が言う。

「え?あぁそのおかげでワイバーンの肉が大量に手に入ったよな。」

「なに?ワイバーンな襲われただと?ドランは体は大きくなってきたがまだ子供だぞ。そんな経験がトラウマになって高く飛ぶのを避けるようになるかもしれんぞ。」

 紫鬼に指摘された。

「うむ。その可能性はあるな。しかも1人は街に入れないとなれば東の旅でも同じ事になる。やはりたまには街に入って休んだほうが良かろう。」

「だな。今回の旅では置いて行った方が良くないか?」

 金獅子と銀狼にも言われた。

 確かに西と違って東の目的地は北に南にと移動が多く、立ち寄る街も多くなる。

「確かにそれは一理あるな。もう少し体が成長すればワイバーン如きには負けなくなると思うが今のドランには厳しい。そのせいで苦手意識が芽生えてしまってはのちのドランの為にもならんな。」

 蒼龍が口を開く。

 むう。そう言う事もあるか。

「そもそも普通ドラゴンが親元を離れて1体で狩りをするようになるのも1年後くらいからだ。一緒に空を飛べる親がいないドランにとってはまだ空は危険なエリアになる。」

 蒼龍は龍の谷にいたのでドラゴンの生態にも詳しい。その蒼龍が言うのだ。間違いないだろう。

「そうか。じゃあ旅に連れて行くのは止めとくか。」

 俺は引き下がる。

「代わりに聖都でもたまに郊外に連れて行って大空を飛べるように面倒見て貰いましょう。それならどうです?」

 白狐が言う。

「そうですね。聖都近くにはワイバーンなどの空を飛ぶ魔物は出現しませんし、安全ですね。わたしが責任を持ってドランの空の散歩を引き受けましょう。」

 緑鳥が言ってくれた。

 と言う事で新たに入手した大量の肉を食料庫に移してからドランを残して出発する事になった。


 最初中庭に行った時はドランも戯れてきたが、朝食の餌が運ばれてくると餌を食べるのに夢中になった。

 可哀想だがこの隙に白狐、蒼龍、藍鷲と俺の4人は馬をつれて神殿を出た。

 目指すはドワーフ王国。

 1度義手の作製の為、蒼龍が行っているので途中の道なんかは蒼龍にお任せした。

 ドワーフ王国は大陸随一の鉱山都市であり、周りを高い山々に囲まれている。

 上る道も整備されてはいるので迷うことは無いそうだが、山特有の回り道などもあり、聖都からは8日ほどかかるらしい。

 ドラン用に大量の肉を置いてきた為、食料にちょっと不安が残る。

 その為、聖都の街で買い物してから主出発した。

 おかげで聖都を出たのは昼近くになってからだった。

 昼飯は聖都の街で人気の総菜屋が出している弁当を買ってある。

 ある程度進んだら食べようと言う事で、まずは先を急ぐ事にした。


 街を出て2時間もすると魔物が現れ始める。街道沿いとは言えやはり魔物、魔獣は出てくるのだ。

 出てきたのは5mにもなる巨大な牛型の魔獣、ギガントカウだ。

 それを見つけた白狐が叫ぶ。

「皆さん、ギガントカウですよ!あんな高級食材なかなか出会えません!絶対に倒しましょう!」

 とやる気満々だ。

 ギガントカウはその巨大もさることながら頭の両サイドに生やした2mにもなる角が特徴的だ。

 俺も対峙するのは初めてだが、ギガントカウの猛烈な旨味については聞いたことがある。

 普通の牛とは比べものにならないくらいどの部位も霜降りになっていて口に入れたら蕩ける食感らしい。

 いかん。倒す前からヨダレが出てきた。

 馬を近くの木に結び、いざ討伐に向かう。

 先頭は白狐だ。いつもの鞘に収めたままの抜刀術者の構えでギガントカウに近付く。

 白狐の接近に気が付いたギガントカウは両前脚を高く上げて振り下ろし、強烈な足踏みを行った。

 もはや、それだけで局所的な地震が発生する。

 足を取られてたたらを踏む俺と藍鷲。

 だが白狐と蒼龍はそれを喚んでいたかのように跳躍して地震を避ける。

 そのまま近付き抜剣する白狐であったが、その一閃はギガントカウの角に弾かれた。

 白刃・白百合の一撃を弾くとはあの角もかなりの硬度があるようだ。

 続いて蒼龍が三叉の槍をギガントカウの眉間に突き刺すように振るう。

 ギガントカウは額に突き刺さる前に頭を振り、三叉の槍の突きを額の皮一枚で滑らせた。

 この世界の動物は強いほど美味い。

 そんな世界でどんな部位でも美味いと言わしめるギガントカウが弱いはずがなかった。

 デカイ牛だと思って挑むと痛い目に遭いそうだ。

 俺も両手にナイフを持ち足元に突っ込むが、外皮が硬い用で、上手く刃が通らない。

 こんな相手には魔法に限る。

「藍鷲!頼んだ!」

「お任せ下さい。ウォーターブラスト!」

 猛烈な水流が巨大を後退させる。

「サンダーテンペスト!」

 水で濡らした所に電撃攻撃をブチ込む。

 ウォーターとウィンドでウォーターブラスト。

 サンダーとウィンドでサンダーテンペスト。

 どちらも魔王に選ばれた時点で威力が増しているらしい。

 ずぶ濡れの体に電撃が走り、ギガントカウの巨体からプスプスと肉が焼ける美味そうな匂いが漂ってきた。

 それでもギガントカウは頭の巨大な角を振り乱して俺達に近付かせまいとしてくる。

 そんな角を掻い潜り首の下に移動した白狐が刀を一閃させるとギガントカウの巨大な首が落ちた。

「光速抜刀術、神の人薙ぎ。」

 遅れて技の名前が聞こえた。

 どうやら神徒を探す旅の間に新たな技を生み出したようだ。

 光速で抜刀された刀からは光の刃が伸び、刀身よりも長い距離を斬り裂く。ギガントカウの首回りは2mはありそうだったが、90cm程度の白刃・白百合の一閃で切断された。

 藍鷲宮魔法で痺れされた為に動きが単調になった事で一刀の元に首を落とせたようだ。

「藍鷲さん、ナイスです!」

 親指を立ててサムズアップして見せる白狐。

 釣られて藍鷲もサムズアップを返す。


 さて、ここからは解体タイムだ。

 部位毎に白狐がざっくり切り分けて、解体用ナイフを渡した蒼龍と藍鷲にさらに小さく、影収納に入る大きさに切って貰う。

 なんと言っても5mの巨体だ。解体にもそれなりの時間が掛かった。

 だがおかげで聖都で出庫した分と同じくらいの大量の肉をゲットした俺達。


 ちょうどいいから休憩がてら聖都で勝ってきた弁当を食べる事にした。

 総菜屋が作るだけあって、素朴な味ながらも美味い料理が順か入っていた。

 特に卵焼きは絶品だった。普段作るような巻いて作られたものではなく、もう1つの塊になっていた。どう作るのか機会があれば聞いてみたいところである。


 そんな、こんなで、ドワーフ王国までの道程を進む俺達であった。


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