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黒猫と12人の王  作者: 病床の翁


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225話 クロムウェル帝国6

 モードの村から2日間かけてクロムウェル帝国領の城塞都市モーリス迄やって来た俺達。

 なんと言っても途中に遭遇したオークの数が多かった。

 おかげで影収納にはオーク肉がたんまりある。

 これで暫くはドランの食事にも困らないだろう。


 城塞都市モーリスについた俺達は早速領主のカイゼス・ミルファを尋ねた。

 門番は俺達の事を覚えてくれていたようで、特にアポもなかった俺達をカイゼスに繋げてくれた。

 屋敷に通された俺達は応接室でカイゼスを待った。

 応接室にはそれなりに金の掛かった調度品が置かれているが、全体的に落ち着いた雰囲気で、いかにも金持ちを気取っていない辺りが気に入った。

 30分程度待った頃、扉がノックされ、中に入ってきたのは兵士長のミジャーノだった。

「これはこれは黒猫殿じゃないですか。先日は金獅子殿達が訪問されましたが、まだ神徒とやらをお探しで?」

「いや、神徒はおかげさまで全員揃ったんだ。今日は別件で来たんだ。」

「別件ですか。カイゼス卿もそろそろ参りますので、もう少々お待ち下さい。」

 言うとミジャーノは部屋を出て行った。


 さらに30分程度待った頃、扉がノックされて、カイゼスとミジャーノが入ってきた。

「カイゼス卿、いきなりの訪問申し訳ない。」

 俺が言うと

「なに、先日も金獅子殿達には助けられたばかりでな。その仲間の黒猫殿が訪問されたとあれば、予定をキャンセルしてでも時間を作るとも。して、神徒は見つかったとか?本日は何用かな?」

 カイゼスが問うてきた。

「実は瞬間移動の魔術があってね。甲蟲人が攻めてくるであろう時期にここモーリスに銀狼を派遣したいと考えているんだ。」

「ちょっと待て。瞬間移動の魔術だと?聞いたことが無いぞ。」

「あぁ。世界で使えるのはこの藍鷲だけだ。本来は神の御業である瞬間移動を王化することで使えるようになったんだ。」

「なんでもありだのぅ。王化ってやつは?」

 驚きながらも冷静に受け答えするカイゼス。

「まぁ神通力を使った魔法だとでも思ってくれればいいさ。それで、その瞬間移動の際にゲートと呼ばれる門を開くんだが、その目印をここモーリスに立てたいのだ。」

「目印とはどう言ったもので?その門と言うのもどのくらいの大きさになりますか?」

 ミジャーノが聞いてきた。

「やはり実際に見て頂いた方が早いですかね?」

 藍鷲が言う。

「そうだな。カイゼス卿。庭を借りられるかな?」

「庭か?構わんよ。移動するとしようか。」

 カイゼスはミジャーノを連れて部屋を出ていく。俺達もそれに続いた。


 庭に着いた俺達。早速藍鷲が言う。

「それでは見ていて下さいね。王化。魔王。」

 言うなり左手小指にしたリングにはまった藍色の石から、藍色の煙が立ち上り藍鷲の姿を覆い隠す。

 次の瞬間、煙は藍鷲の体に吸い込まれるように消えていき、残ったのはどことなく鷲を思わせる藍色のフルフェイスの兜と、同じく藍色の全身鎧に身を包んだ魔王の姿であった。

「おぉ!これが王化か。初めて見るな。」

 興奮気味のカイゼス。

「はい。王化です。では、ゲート。」

 藍鷲が短杖を振ると目の前に縦3m、横3m程度の悪趣味な門が現れる。

 そして10m先にも同じように門が現れる。

「おぉ!門だ。門が現れた。」

「カイゼス卿、あちらにも門が現れましたぞ。」

 カイゼスとミジャーノが騒ぎ立てる。

「オープン」

 藍鷲の声で門が開く。

 藍鷲は実際に門を通って10mを瞬間移動してみせる。

「こんな感じでどこにいてもここモーリスに門を開けるように目印となる旗を立てたいんです。」

 言いながら門をくぐり、10mの距離を行ったり来たりしてみせる藍鷲。

「ほぉーこれが瞬間移動の魔術か!」

「はい。このサイズですので馬での行き来も可能です。モーリスだけでなく、ガルダイア辺りに甲蟲人が現れた際にはここから馬で駆けつける事も可能かと考えております。」

 白狐が説明を補足する。

「なるほど。これで移動してくるのか。」

「はい。最初にここに銀狼を派遣しておくように各地に神徒を配置します。で甲蟲人が現れた際にはこのゲートを使って戦力をこの地に集めます。逆に他の地に現れた際にはこちらで待機させておいた銀狼を迎えに来ます。」

「どうやってこの地に現れたと他の地にいる神徒達に通達するのだ?各地に散らばるとなれば早馬を飛ばしても相当な時間がかかるだろう。」

「それはこの通信用水晶を使う。これは離れた場所にいる者同士が連絡を取り合える魔道具だ。」

「ほう。そんな魔道具があるのか。」

「あぁ。マジックヘブンで見つけたんだ。」

「なるほどな。各地に散らばり甲蟲人が攻めてきた場所にいる者がその水晶で連絡をして、この魔術でその場に移動するのか。」

「はい。その想定なんです。クローズ。王化、解除。」

 門が閉まり、藍鷲が王化を解く。

「なるほど、なるほど。馬での行き来も考えるとなると庭にあってはちと困るな。どうだ?ミジャーノ。兵士達の訓練場にして貰っては?あそこなら外との行き来も簡単だろう?」

「そうですね。訓練場にして頂いた方が良さそうです。兵士達には私から旗を触らないように言って聞かせましょう。」

「なら訓練場に連れて行って貰えるかな?」

「ミジャーノ、お連れしろ。私はここで失礼するよ。また何かあれば尋ねて来てくれれば時間を作ろう。」

「カイゼス卿もありがとうございました。」

 白狐が礼を言って頭を下げた。合わせて俺と藍鷲も頭を下げる。


 場所を兵士達の訓練場に移した俺達は、ミジャーノに言われた通り訓練場の端の方に灰色の旗を立てる事が出来た。

 試しに藍鷲が街の外からその旗に向けてゲートを開いてみたが、問題なくゲートは開き、行き来も出来た。

「よし、次は首都ゼーテだな。」

 俺が言うとミジャーノが微妙な顔をした。

「どうかしたか?ゼーテにゲートがあるとマズイのか?」

 俺はミジャーノに問いかけた。

「私達は貴方方を知っているし、何度も助けられたから手放しに受け入れられましたが、首都ゼーテはどうでしょう。下手をすれば他国の侵攻を許すことになる魔術を良しとするでしょうか。」

 気まずそうにミジャーノが言う。

「邪神の復活に甲蟲人の侵攻が迫ってるなかで他国の心配とかしますかね?」

 白狐が最もな疑問をぶつける。

「皇帝は領土拡大を国の一大プロジェクトとして上げているような方です。その様な方ならこのタイミングでも他国の侵攻を気にすると思います。例えば邪神を倒した後に他国が侵攻してくるのではないかと心配されるかと。」

 面倒くさいな。

 いっそのことゼーテは帝国軍に任せておいて、第二の都市ダームールーにでも拠点を構えるか?

 ちょっと翠鷹とも相談だな。

「わかった。考えてみるよ。ありがとう。とりあえず旗はこのままで頼むな。」

 俺はミジャーノに礼を言って街から出て蒼龍達と合流する事にした。


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