223話 モーノ共和国12
翌日になった。
昨晩は白狐がカジノに負けた自分を慰めろと一緒に布団で寝る事を強要してきてひと悶着あった。
そりゃ俺も椅子で寝るのは若干抵抗あったからな。受け入れはしたさ。
でも案の定、白狐はいつも通りベッドで寝るときは素っ裸だし、布団に入りゃくっついてくるしで、ドギマギしてあまり眠れなかった。
そりゃあんなにも自己主張してる双丘を押し当てられたら健全な青年な俺としては当然の反応だろう。
意識するなって方が難しいぜ
。
そんなこんなで寝不足である。
だが、1人で野営してくれてる蒼龍よりは眠れてるだろう。文句は言うまい。
素泊まりで泊まったので、朝食は蒼龍と合流してから摂る事にした。
街は24時間やってるカジノのせいか、朝でも喧騒が飛び交い、酔っ払い達がゾンビのように徘徊していた。
ホントは城にでも行って緑鳥からの手紙を受けてこの国がどう動くのか確認したいところだったが、伝も無いし、今は各地に旗を立てる事が優先だ。
必要ならゲートを使ってまた来ればいい。
と言う事で俺達は3人はさっさと街を出て、蒼龍が野営しているところへと向かった。
蒼龍とドランもすでに起きており、2人でじゃれ合っていた。ホントにすっかり懐いたようである。
「遅くなったが朝飯にしよう。」
俺は薄く切ったグリフォン肉で生姜焼きを作り皆に渡す。
ドランにはまだ残っていた亜竜の肉を塩コショウで焼いたものを出してやる。
「「「「頂きます。」」」」
みんなで声を揃えて食べ始める。
ドランの食欲は凄まじく、大量に焼いてやった肉がすぐになくなった。
「まだ食うか?」
「グギャ!」
まだ食べたそうだったので、追加で肉を焼いてやる。
その間に蒼龍は馬達への餌やりをしてくれてた。
さて、腹も膨れた事だし、サッサと先に進みますか。
モードの村の正確な位置は白狐も把握していなかったので、途中のモノリスの町で聞き込みした。
俺達がモノリスの町に到着したのは首都モリノを出発してから2日後の夕方だった。
街道沿いを進んだ為か、そこまで強力な魔物と対峙することも無く進んで来れた。
ここでも蒼龍がドランと馬達の面倒を見てくれると言うので任せる事にした。
モノリスの町は首都モリノの喧騒とは打って変わって静かなもんだった。
町に一軒しか無いという宿屋に3部屋空きがあったのでチェックインする。
食事は蒼龍とドランと分かれる前に済ませていたが、モードの村の事を聞きに3人で酒場にやって来た。
酒場で聞いた話によればモードの村はここモノリスの町から北に行った所にあり、早馬なら1日半程度で到着するだろうとの事だ。
明日の朝出発して、明後日には到着する見込みである。
俺はついでにモリノの街での噂話を集めた。
悪い噂のあるカジノオーナーなんかがいれば改めて仕事しに行ってもいいかなと思ったのだ。
だが目当ての話は特に聞けず、代わりに20年振りに現れたギャンブルの神の加護を持つ『ダブルアップの獅子獣人』ってやつの噂を聞いた。
なんでも掛け金を勝った分全額賭けていき、2倍、2倍と増やしていく様はギャンブルの神に愛されているか、イカサマしているかのどちらかだろうと話題らしい。
一時様々なカジノでその猛威を振るったかと思えばここしばらくは姿を見せていないのだとか。
見た目の印象なんかを聞いていくと金獅子としか思えないのだが、あいつはモリノで何をやらかしたのだろう。
モードの村の場所も確認したし、今日はもうやる事は無いのでさっさと宿屋に戻って寝る事にした。
やっと1人でベッドを占領出来て快眠を手にしたのだった。
翌日、町を出て蒼龍とドランと合流してから朝飯にする。
今日は亜龍肉のステーキだ。
さっぱり醤油ソースに仕上げた。
ドランには相変わらず塩コショウで味付けだ。
馬達はの餌やりは合流前に蒼龍が済ませてくれていた為、朝食後はすぐに出発となった。
道中オークやハイオークには出くわしたが大した敵ではない。瞬殺だった。
しかしオーク肉は食用になる為、倒した後の解体作業に時間を要した。
手頃なサイズに切って影収納に仕舞っていく。
影収納が無い状態での神徒捜しはなかなかにハードだったようだ。
なにより食事が携行食ばかりであったし、討伐した魔物の素材を持ち歩くのも一苦労だったそうな。
その点について改めて白狐から
「やっぱりクロさんがいてくれると助かりますね。いつもありがとうございます。」
と礼を言われた。
俺は静かに頷き返した。
モノリスの町を出てきっかり1日半が経過した頃、村に到達した。
ここでも蒼龍がドラン達の面倒を見てくれると言うので甘える。
村に入り白狐が第一村人に声を掛ける。
「すいません、ここはモードの村で間違いないですか?」
「あぁ。あんた達は旅人かい?モードの村にようこそ。何も無い村だけどゆっくりしていきなね。」
「あの、私達碧鰐さんの知り合いで村長宛の手紙を預かっているんですが村長さんは何処にいらっしゃいます?」
「碧鰐の?そうかいそうかい。村長宅ならここをまっすぐ行った突き当たりの屋根が三角形の大きめの家だよ。多分行けば分かる。」
「ありがとうございます。」
礼を言ってその場を離れた。
さて、村長の家はわかった。
あとはどう交渉するかだな。
そこは碧鰐の手紙に賭けようか。




