222話 モーノ共和国11
聖都セレスティアを出て10日目にしてモーノ共和国の首都モリノに到着した。
時刻は夜だ。今から入って宿が取れるかな?
「我がドランと一緒に野営しよう。」
蒼龍が言う。
「え?いいよ。俺が野営するって。」
「いや、我は暫く聖都で生活していたからな。お主達よりもベッド生活が長かった分、ここは野営を引き受けよう。」
そう言う事なら任せようかな。
「わかった。ドランを頼む。」
「あぁ。任せておけ。」
と言う事でドランを蒼龍に任せて俺たちは街へと入ったのであった。
街の中は夜だと言うのにあちこちでネオンがたかれ、ピカピカしていて目が疲れる。
ひとまずは3人で泊まれる宿屋を求めて街を彷徨う。
しかし、さすが歓楽街として名高い街だ。空き部屋がない。
歓楽街故に宿屋は多いのだが、ほとんどが満室だった。
どうにか見つけた宿屋はシングルの部屋が二室しか空いてなかった。
どうするか悩んだが白狐が即答した。
「その二部屋でお願いします!」
まぢか。シングルの部屋だぞ。
「クロさんと私は夫婦なので2人で一室で大丈夫です。」
「あ、そう言えばお2人はそう言うご関係でしたね。わかりました。それなら大丈夫です。」
藍鷲も納得してしまった。
仕方ないソファにでも寝るか。
まずは部屋の鍵を貰って部屋に入ってみる。あらまぁソファとかないでやんの。
部屋はホントにシングル用でベッドの他には椅子と丸テーブルしか置いてなかった。
仕方ない椅子で寝るか。
「折角ですからちょっと街に出てみません?」
俺が椅子で寝る事を決定したくらいのタイミングで白狐が言って来た。
まぁモリノはカジノが有名だからな。行ってみたい気持ちも分からんでも無い。
「んじゃ藍鷲にも声掛けるか。」
2つ隣の部屋だった藍鷲にも声を掛けに向かった。
「え?今から街に出るんですか?もう夜ですよ?明日も移動ですよ?寝ましょうよ。」
呆れられた。
「ふーんだ。いいですよー。クロさんと2人で出掛けますから。」
「別にいいですけど明日もちゃんと起きて下さいね。」
藍鷲は小言を言って部屋に入っていった。
そんなこんなで俺は白狐と2人で街に出る事にした。
白狐は勝手知ったる感じで街を歩く。
「白狐はモリノ来た事あるのか?」
「はい。以前何度か。今のところ99勝99敗中なので、世界がどうにかなってしまう前に勝負を付けておきたかったんですよね。」
そう言うと一軒のカジノに入って行く。
俺はモリノは初めてなので素直に後ろを付いていく。
カジノの入り口には換金窓口があって、現金とチップを交換していた。
流石にカジノのと言えばチップを賭けて現金化する場所だって事は知ってる。
でも知っているゲームはブラックジャックくらいだ。
これは親父と2人でも良く遊んだ。
トランプで遊ぶゲームだ。Aは1か11、2から9はその数字のままで10、J、Q、Kの4枚は10になる。
親がプレイヤーと親に2枚ずつカードを配り21、つまりブラックジャックを目指すゲームだ。
親のカードは1枚は表向きに、もう1枚は裏向きにして置かれる為、親の合計数は勝負する時にしか分からない。だから自分の手札が親より21から遠いと思えばヒットしてカードを追加する。すでに21もしくは親より21に近いと思えばスタンドでその手札のみで勝負となる。21を超えたらバーストで負けが確定する為、何処まで手札を追加するかも勝負所だ。ただし親が初手の2枚で21、ブラックジャックだった場合は親の勝ち、もしくはルールによっては引き分けになる。
親の手札が1枚開かれている為、最初の2枚が配られた時点で負けると思えば掛け金半分を差し出すことで勝負から降りる事も出来る。
他にも最初の手札が良かった場合は掛け金を倍に出来たり、最初の2枚が同じ数字だった場合に掛け金を倍にする事で手札を2つに分けられたりと、単純なルールながらも奥が深いゲームだ。
俺がそんな事を思い出していると珍しく白狐が自分の財布から金を出してチップに交換していた。
思わず、
「珍しいな自分で金出すなんて?」
と聞いてみれば、
「ギャンブルは自分のお金でやるからこそ面白いんですよ。」
との事。結構なギャンブラーだったのかもしれないな。
俺も試しにチップ交換所に行ってみたら最低チップ価格が銀貨1枚、つまり1万リラだと聞かされた。そんなチップが何百枚、何千枚と動くのだ。かなりの現金がある事になる。
こりゃ悪徳カジノでも探して仕事に励むべきかと本気で考えた。
が、今日はもう遅い。今から悪徳カジノの聞き込みしてたら朝になってしまう。今回は諦めよう。
俺は試しに大銀貨1枚をチップに交換してみた。
隣を見ればすでに白狐の姿はなく、ブラックジャックのテーブルに着いてゲームを開始していた。素早いな。
俺は白色のチップを10枚持って辺りをうろつく。
すると目の前のブラックジャックのテーブルが一席空いた。
ちょうどいい。少し遊んでみるか。
ブラックジャックの配当は2倍もしくは3倍だ。その為、大きく賭けないと元ではそこまで増えない。
俺は堅実に1枚ずつの勝負をして着実に手元のチップを増やしていった。
1時間ほども遊んだだろうか。俺の手元には青色チップ1枚と赤色チップが3枚に白色チップが2枚になった。
色によってチップの金額的が変わるみたいだけど、いくらになったんだろう?
俺はゲームを切り上げて換金所に向かった。
青色チップが10万リラ、赤色チップが5万リラ、白色チップが1万リラで交換出来て、手元には27万リラが残った。17万リラの勝ちってことだな。
まぁそこそこ遊べたしいいだろう。
白狐は?と思って周りを見渡せはバーカウンターに突っ伏している白狐を発見した。
「その様子じゃ負けたな?いくら負けた?」
「うぅ。金貨10枚です。」
「なに?!」
こいつギャンブルで1千万リラも溶かしやがった。
「もういいだろ?宿屋に戻るぞ。」
「クロさん、金貨1枚でいいから貸して下さいー。」
「さっきは自分の金でやるからこそだって言ってたじゃんか。諦めろよ。帰るぞ。」
「うぅ~。99勝100敗になってしまったぁ~。」
肩を落とす白狐。
俺はそんな白狐を慰めながら宿屋へと戻るのだった。




