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黒猫と12人の王  作者: 病床の翁


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220話 モーノ共和国9

俺達は西に向かいモーノ共和国へと向かった。

 聖都セレスティアからモーノ共和国の首都モリノまでは10日程度の距離だと言う。

 地を走る馬の頭上を2m級のドラゴンが飛んでいる様は、他から見たらどう映るのだろうか。

 そんな心配をよそに旅は順調に進んで行った。


 そんな3日目の昼過ぎである。

 目の前には鈍色の塊が数十。不定形の粘体を持つスライム。しかもその色からしてアシッドスライムだ。

 アシッドスライムは強い酸性を持ち、武器すら溶かすと言われている。

 素手で殴れば肌を溶かされ骨になるとまで言われている厄介な魔物だ。

 ここは俺が王化して呪王形態になって魔術で対処するしかないか、と思っていたら藍鷲が前に出た。

「わたしの戦闘力を皆さんにお見せする良い機会ですね。王化出来るようになった事で魔法の威力も上がったのですよ。」

 そう言いながら馬から下りる藍鷲。


「王化。魔王。」

 藍鷲が言うなり左手小指にしたリングにはまった藍色の石から、藍色の煙が立ち上り藍鷲の姿を覆い隠す。

 次の瞬間、煙は藍鷲の体に吸い込まれるように消えていき、残ったのはどことなく鷲を思わせる藍色のフルフェイスの兜と、同じく藍色の全身鎧に身を包んだ魔王の姿であった。

「ではいきますね。まずはファイアとウィンドでファイアストーム!」

 短杖を目の前に振る藍鷲。

 すると短杖の先から燃え盛る炎の竜巻が発生し、アシッドスライム達を飲み込む。

 これは魔族領でも見せてくれていた複合魔法だが、あの時よりも格段に威力が増しているのが分かる。

 スライムの体の大半は水分である為、見る見る小さくなっていくアシッドスライム達。

 燃え盛る竜巻が通り過ぎた後には体の面積を半分以下にしたアシッドスライムが残った。

 燃やし尽くすまではいかなかったが、相当な熱量と威力である事はわかる。


「次はアイスとウィンドでウィンドカッター!」

 細かな氷の欠片を猛烈な風で飛ばし、対象を切り裂く魔法だ。

 これも魔族領で見せてくれた複合魔法だが、その威力は格段に上がっていた。

 まずは発生時間が長い。以前は一瞬の斬撃だったが今は複数回に及ぶ斬撃に変わっている。

 十や二十じゃきかないほどの斬撃となっている。

 それに地を削る深さを見ても斬撃自体の威力が上がっている事がわかる。

 疾風の風の刃が通り過ぎた後には核を斬られて完全なる水分と化したアシッドスライム達の姿があった。


 あれ程の数のアシッドスライムを2回の魔法行使で倒してしまった。

 これは魔族領にいた頃に比べるとかなりの戦力増強だ。

「凄いもんだな?威力も持続時間も上がってるじゃないか?」

「えぇ。相変わらず生活魔法しか扱えませんがその威力が段違いです。王化した時だけですけどね。お陰でもう複合魔法は別物と言っていいくらいの威力になりました。」

「うむ。やはり魔法とは凄まじいものだな。」

 蒼龍も関心している。

「凄い凄い。これなら複数の敵に囲まれても藍鷲さんだけでも倒せちゃいそうですね。」

 白狐も素直に驚嘆している。

「あはは。実際魔族領から聖都までの移動では1人で戦わないと行けなかったので、他の複合魔法を創造したりと大変でしたよ。」

「そうだよな。1人であの森と岩山を越えたって事だもんな。」

「えぇ。岩山はキツかったですね。」

「あ、折角だから王化は解かずにいきましょう。少しでも王化持続時間を延ばした方がいいでしょうし。」

「そうだな。藍鷲はそのまま王化を続けてくれ。何。次の戦闘では我らも出るから問題ない。」

 白狐の意見に蒼龍も乗る。

「分かりました。王化は勝手に解けるまで継続しておきますね。」

 藍鷲はそう言うと王化状態のまま馬に跨がった。


 その後はオークの集団に遭遇したら他、リザードランナーの群れにも遭遇した。

 王化状態が続いていた藍鷲が複合魔法で全体にまずはダメージを与える。

 その後は俺達が襲い掛かるといった形で戦闘は続いた。

 藍鷲が使える複合魔法は5つ。

 ファイアとウィンドでファイアストーム。

 アイスとウィンドでウィンドカッター。

 サンダーとウィンドでサンダーテンペスト。

 ウォーターとウィンドでウォーターブラスト。

 ロックとウィンドでロックハリケーン。

 どうしても生活魔法は手元に出すものがほとんどな為、それをウィンドの魔法で敵にぶつける事になるそうだ。

 魔王としての権能は魔法創造。自分がイメージした魔法が造れると言ったものらしい。

 ただし、既存の魔法は使えず、新たな魔法を創造する必要があるらしい。

 これは魔神が藍鷲の複合魔法を面白がった事で加護を与えた為にそう言う制限が掛かっているそうだ。

 つまりはまだまだ未知の魔法を創造出来ると言う事だ。

 今は2属性の複合魔法だが、3属性の複合魔法、4属性の複合魔法など、思い浮かぶだけでも結構な数になる。

 ただし、魔術と違って魔法は自身の体内魔力を消費する為、あまり威力の大きい魔法ばかり打っていたら魔力切れを起こすらしい。

 その点、魔術は待機中の魔素を使う為、魔力切れの心配は無い。

 詠唱は不要だが魔力切れを起こす魔法。

 詠唱は必要だが魔力切れを起こす心配の無い魔術。

 どちらも一長一短と言う事だな。


 そんな魔王としての力を確認しながらも俺達の旅は続く。


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