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黒猫と12人の王  作者: 病床の翁


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219話 聖都セレスティア15

 神殿に戻った俺は熱烈な歓迎を受けた。

 ドランだ。

 ドランはすでに2m超えのドラゴンに成長しており、あの可愛かった頃の面影はあまりない。

 凛々しい顔立ちに屈強そうな四肢を持ち広げれば3mにもなりそうな翼を備えていた。

 しかし、その所作はあの頃のままで、俺を親だと思って擦り寄ってくる。

 中庭での体面だったが、俺はすでに地面に倒されて顔をベロベロ舐められていた。

「ふふっ。ドランもクロ様に会えて嬉しそうですね。お世話をさせて頂いてる者にもそんな風には接しませんもの。」

 緑鳥がそんなドランを見ながら微笑ましそうに言う。

 すでに大人の膂力わ超えるパワーがあるので俺は一向に立ち上がれない。

 白狐達も微笑ましそうに見ているがそろそろ助けて欲しいんですけど。


 やっと顔を舐めまわす事に飽きたドランは俺に乗っかるのを止めてくれた。

 だが翼をパタパタしながら傍から離れようとはしなかった。

 確かにずっと聖都の神殿にいたら空も飛べないか。

 俺は思い立ってドランに聞いた。

「お前も一緒に各地を回ってみるか?」

 ドランは一瞬なんの事か考えたような素振りを見せたが、

「グギャッ!」

 と頷いた。言葉をちゃんと理解してる風に見えた。

 と言う事で急遽ドランも旅に連れて行く事にした。

 ドランは中庭に残し、白狐達には蒼龍を呼びに行って貰って、俺は緑鳥に案内されて食料保管庫に移動した。


 皆と別れた際には大量に肉を積んで行ったが、すでにその肉も半分以上無くなっていた。

「いっぱい食べたんだな。」

「えぇ。飼育を任せている者がぼやいてました。沢山食べるのでお肉を運ぶのが大変だって。」

「ははは。だろうな。ここにある分は全部持って行っちゃって大丈夫か?」

「えぇ。ここにはドランさんの分しか置いてませんから。全部持って行って下さい。クロ様の影収納の中の方が鮮度も保てるでしょうし。」

「だな。んじゃ入れてくか。」

 数が減っているとは言えそれでもまだ相当な量が残っており、30分くらいかけて全部影収納に収めた。

 中庭に戻った俺達を蒼龍達が待っていた。

「ドランも連れて行くんだって?」

 蒼龍に聞かれた。

「あぁ。ずっとここに押し込めておくのも可哀想だしな。たまには思う存分空を飛ばせてやりたいかなって。」

「うむ。実は時折我が着いていって街の外で飛ばさせたりしていたのだ。」

「そうなのか?」

「あぁ。もうこの様に大きな体をしておるからな。たまには騎乗して我も一緒に空を飛んだりしていた。」

「もう人を乗せて飛べるのか?」

「あぁ。とは言っても我が乗った時には数mほど飛び上がる程度だったがな。」

 そう言いながらドランを撫でる蒼龍。

 ドランもすっかり懐いているようだ。

「そうか。騎乗用だって言えば街にも入れるかな?」

「さすがにそれば厳しいと思いますよ?ドラゴンを騎乗用に飼うなんて聞いたことありませんから。」

「となると街に着いたら街の外で留守番だな。まぁいいか。俺も一緒に街の外で待てばいいか。」

「うむ。我もいるからな。そこまで心配はいらんだろう。」

「んじゃ街についたらしい交互に街の外で待つとしようか。」

「うむ。そうしよう。」

 話は纏まった。


「で、蒼龍ももう出られる準備は万端か?」

「あぁ。我は準備出来ている。」

「白狐は特に準備いらないだろ?」

「えぇ。大丈夫です。」

「藍鷲は?」

「わたしも大丈夫です。いつでも出られますよ。」

「んじゃ出発するか。」

「あ、すいません。旅の準備は出来てるんですが、ここ聖都に先に旗を立てて行こうと思うんです。そうすれば行きは旅する必要があっても帰りはゲートで戻って来れますから。」

 藍鷲が言う。確かにその方が効率がいいな。

「そうか。よし、どこに旗立てる?」

「どうしましょうか?街が襲われている状況で移動するなら街の外に立てた方がいいと思うんですが、下手な位置だと抜き取られる可能性もありますよね。」

「それでしたらこの中庭に立てたらどうでしょう?広さもありますし、馬でゲートを潜られてもここなら問題ないでしょう。」

 緑鳥が言う。確かにここなら広さも問題ないし、いきなりゲートが開いても騒ぎにはならないだろう。

「そうですね。じゃあここに旗を立てますね。」

 俺は影収納から短槍を出してやる。

「生地は何色にする?」

「白狐さんが待機される場所ですから白色の生地でお願いします。」

「分かった。」

 俺は白地の生地を出してやる。

 藍鷲は器用に生地の端の方に短槍で桟箇所穴を空けて旗を作った。

「そんな感じでいいのか?縫ったりしなくて大丈夫か?」

「あくまでゲートを開く際の目印として機能すればいいですからね。そこまでしっかり旗にしなくて大丈夫でしょう。」

 そう言うと藍鷲は中庭の中心地に短槍を刺した。

 抜けないように全体重をかけて深く刺す。

「よし、これで大丈夫ですね。試しに1回街の外からゲート開いて来ます。少々お待ちを。」

 言うなり藍鷲は駆けて行った。


 暫くして、立てた旗の目の前にゲートが現れた。

 そのゲートが開き、藍鷲が顔を出す。

「はい。問題ないですね。きちんと座標指定出来ます。」

「よし、じゃあこれで出発の準備は整ったな。」

「まずはどこから行きます?」

「あ。獣王国とララ法国なら金獅子と翠鷹に手紙書いて貰った方が良くないか?そしたら王城とかに旗を立てさせて貰えて安心じゃね?」

「それならドワーフ王国とモードの村宛にも茶牛さんと碧鰐さんに手紙書いて貰いましょうか。いきなりよそ者が旗を立てに来たって言うよりはスムーズでしょうし。」

「そうすっか。4人に手紙書いて貰おう。」

 と言う事でドランを中庭に残して皆で祈りの間にやって来た。

 手紙の事を4人に話したら直ぐに書いてくれた。

「これを獣王城に持って行くがいい。」

 金獅子に手紙を渡される。

「ウチのはララ・ダウトの法王城宛にしてあります。」

 翠鷹からも手紙を受け取る。

「儂は王城に伝は無いからなぁ。元いた工房宛にしてあるでぇ。」

 茶牛からも手紙を渡される。

「オラァ村の村長宛に書いたから村長に渡してくれ。」

 碧鰐からも手紙を預かる。

「うぃ。じゃあ行ってくるからな。」

「あぁ。気をつけて行ってこい。」

 金獅子達に見送られて神殿を後にする俺達。

「砂漠超えしなくて済むようにまずはモードの村から帝国を回りましょう。」

 白狐が提案してくれた。正直聖都より西側はよく分かっていないので、地理に詳しい白狐の存在はありがたい。

 街中を歩く時、ドランを連れていたので好奇の目を向けられたが問題はなく馬留にまでやって来た。

 ドランに騎乗出来ると言っても子供だ。疲れて飛べないなんて事もあるだろうし、全員馬での移動とした。

 藍鷲には緑鳥が乗ってきた馬を借り受けた。

 さて、まずは砂漠の北に位置するモーノ共和国だ。

 俺達4人と1匹は旅立つのであった。


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