216話 聖都セレスティア12
祈りの間にやってきた俺達。
するとちょうど中から金獅子と銀狼、蒼龍が出てきた。
「お?白狐ではないか。戻ってきたのか。ったことは、おぉ!黒猫も久しぶりだな。」
白狐の後ろにいた俺に気付いて金獅子が声を掛けてくれた。
「あぁ。久しぶり。」
「ワシには一言もなしか?」
紫鬼が俺の後ろから声を掛ける。
「紫鬼も久しぶりだな。長旅ご苦労様であったな。」
「うむ。ホントに長旅じゃったわい。」
「白狐も紫鬼おかえり。黒猫も久しぶり。」
「白狐、紫鬼久しいな。黒猫もよく戻ったな。」
銀狼と蒼龍にも声を掛けられた。
「はい。ただいまです。」
「久しぶりじゃな。」
「久しぶり。あんな風に出て行ったのに戻って来ちまったよ。」
「ふっ。まぁいいじゃないか。改めてよろしく。」
銀狼が手を差し出してくる。
「あぁ。よろしく。」
俺は差し出された手を握った。
「そっちの2人は初めましてだよな。ちょっと待ってろ。碧鰐達も呼んでくる。」
銀狼が祈りの間に戻っていき、ずんぐりむっくりの小さな髭面と、スキンヘッドの巨漢のおっさんを連れて出てきた。
「まずはオレが戦神の加護を持つ牙王、銀狼だ。よろしく頼む。でこっちの獣人が金獅子。こっちの龍人が蒼龍。こっちのドワーフが茶牛、こっちの巨漢が碧鰐だ。もう1人朱鮫ってのが遅れて合流する事になっている。」
銀狼が紹介してくれる。
「俺様が獣神の加護を持つ獣王、金獅子だ。よろしく。」
「我は蒼龍。龍神の加護を得た龍王だ。よろしく頼む。」
「儂は地王の茶牛だぁ。大地母神の加護を持っとるでなぁ。よろしく頼むだぁ。」
「オラァ碧鰐って言う。守護神の加護を得た仁王だ。よろしくな。」
ずんぐりむっくりが茶牛、スキンヘッドが碧鰐か。大地母神って言うくらいだから大地の力を操るのかな?守護神って何が出来るんだろうか?
「ではこちらの紹介を。私が白狐と言いまして、破壊神の加護を得た破王です。よろしくお願いします。」
「ワシは鬼神の加護を持つ鬼王の紫鬼だ。種族は鬼人だ。よろしくな。」
「ワタシは紺馬。精霊神の加護を持つ精霊王だ。見ての通りエルフだ。」
「ウチは賢王、翠鷹です。軍神の加護を授かりました。宜しゅうお願いします。」
「俺は黒猫って言うんだ。暗黒神の加護を受け継いだ夜王だ。よろしく頼む。」
俺が自己紹介すると茶牛と碧鰐が反応した。
「黒猫ってぇとオメェさんがカレーの奴かぁ?」
「カレーの黒猫か。」
どんだけカレーの話を聞かせてたんだよって感じだが、まぁ悪い気はしない。それだけ俺のカレーが美味いって事だもんな。
「あぁ。こやつがカレーを作らせたら右に出るものはいない黒猫じゃ。」
なぜか紫鬼が俺の事を説明する。
「うん。黒猫のカレーは美味いぞ。」
「ウチも黒猫はんのカレーの虜やわぁ。」
紺馬と翠鷹が追撃する。
ゴクリとつばを吞む茶牛と碧鰐。
「んじゃ今日の昼飯はカレーだなぁ?」
「オラァも食べてみたいわい。」
2人にリクエストされた。
「分かった。今ある分じゃ全員分はないから今から新しく作るよ。待っててくれ。」
「あ。私もお手伝いしますよ。」
俺が言うと白狐も手を上げた。
「この人数分となると大変でしょ?ウチも手伝いますわ。」
翠鷹も手伝ってくれるらしい。
俺達3人はその場を離れて神殿内の厨房に向かった。
厨房に行くと専任のシェフが片付けをしていた。もう昼の支度は終わったようだ。ちょっと話をすると、厨房を借りられる事になったのでさっそく作業に取りかかる。
まだ具材は大量に影収納に収めてあるので、そこから取り出す。
ニンジン、ジャガイモ、トマト、マッシュルーム、タマネギ、ニンニク、肉はグリフォンの肉にするか。
まずはニンジン、ジャガイモ、トマトを粗みじんに切り分ける。これは翠鷹にお願いした。
次にマッシュルームとタマネギを薄切りにスライスする。これは白狐に頼んだ。
俺はニンニクをすりおろし、肉の筋を切りながら小さめの一口サイズに切っていく。
具材を切っている間に大きめのフライパンを熱しておく。
タマネギが切り終わったらフライパンにバターを溶かし、すりおろしニンニクを入れて香りが出たらタマネギを炒め始める。
焦がさないように中火で飴色になるまでよく炒める。ここでカレーの甘さが決まる。
その間に大きめの鍋に油を敷いて肉を炒める。焼き色が着いたらニンジン、ジャガイモ、マッシュルームも入れて炒める。
飴色になったタマネギも鍋に入れたら水を入れて灰汁を取る。灰汁を取ってからトマトを入れる。先にトマト入れちゃうと灰汁を掬う度にトマトも掬ってしまって面倒だからだ。
その後はジャガイモが柔らかくなるまで煮込んで、特製カレースパイスを投入する。
隠し味として醤油を少量入れて味を整えたら完成だ。
ご飯は炊きたてが影収納に入っているので、それを出した。
翠鷹に皆を食堂に呼んで貰いながら俺は白狐とカレーをよそっていく。
「なんか、一緒に料理してると夫婦って感じがしますよね。」
嬉しそうに白狐が言うので、
「そうだな。」
っと頷いてやる。
食堂に皆が集まってくる。緑鳥と藍鷲も一緒だ。
「黒猫のカレー、久々だのう。」
「あぁ。楽しみだ。」
金獅子と銀狼が話している。
皿を配り終えると、
「お!今日はトマト入りか。ワシはこれ好きじゃぞ。」
と紫鬼が言う。
タマネギの甘みとトマトの酸味のハーモニーをお楽しみあれ、だ。
全員が座ったところで金獅子が声を上げる。
「頂きます。」
「「「「「頂きます。」」」」」
皆が手を合わせて食べ始める。
俺は茶牛と碧鰐の反応を見る。2人とも、
「美味いのぅ。」
「これは美味いぞ。」
と上々の反応。
久々に食べる金獅子、銀狼、緑鳥、藍鷲は、
「これだ。このカレーが食べたかったのだ。」
「んー。黒猫のカレーだなぁ。」
「黒猫さんはホントに料理上手ですね。」
「わたしも今度はお手伝いさせて下さいね。」
と良き反応である。
紺馬と翠鷹も、
「美味い。美味い。」
「トマトの酸味が活きてはりますわぁ。」
と上々の反応。
皆の反応を一通り見た俺も口を付ける。
うん。トマトの酸味とタマネギの甘みが良い感じに出来上がっている。
やっぱり俺の特製スパイスが利いてるな。
コリアンダー、クミン、ターメリック、カルダモン、チリペッパー、粒コショウ、バジル、シナモン、ナツメグ、クローブと様々なスパイスを組み合わせた俺の特製スパイスだ。
影収納を得てからは一食分ずつ小分けの袋に入れて保管してある。
都度調合しなくて済むから楽ちんだ。
さて、昼飯は続いているが今後について話す必要もある。
カレーの評価ばかり訊いてはいられない。
と言うことで俺は口を開く。
「藍鷲のゲートの魔法は完成でいいんだよな?」
「はい。目印さえ立てられれば何処にでもゲートを開けます。自分で目印を立てて来ないと行けませんが。」
「あと5か月くらいだろ?そろそろ藍鷲を連れて各地を回っておく必要があると思うんだが?」
「あぁ。それについては俺様達も考えていた。藍鷲に着いていくのはひとまず現状で2時間を超える王化が可能な蒼龍と白狐に頼みたい。」
カレーを食べ終えた金獅子が顎髭を撫でながら言う。
「あ、それなら俺も2時間は行けるぞ?ヨルの王化をそのまま引き継いでるからな。」
「おぉ。そうか。黒猫も一緒に行って貰えたら旅は格段に楽になるだろうな。」
「黒猫。よろしく頼む。」
蒼龍にも言われた。
「あぁ。んじゃ藍鷲と一緒に行くのは蒼龍と白狐と俺で決定だな。」
それから俺達はどう甲蟲人対策を取るか話し合った。




