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黒猫と12人の王  作者: 病床の翁


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204話 聖都セレスティア7

 主神祭はその後も続いた。

 今中央噴水広場の特設会場では主神の世界創造の劇が行われていた。

「いやー。世界の創造を劇にするとか人族は面白い事を考えますね。」

 藍鷲が言う。

「魔族領でも世界創造の話は伝わっているのか?」

 銀狼が問う。

「いえ。魔族領では聖邪戦争からの歴史しか伝わっていません。我々がなぜ北方の地に追いやられたのかを説くものでした。」

「なるほど。やはりその辺りは違うのか。」

 特設会場ではいよいよ聖邪戦争が始まる段階にまで話が進んでいる。

「そのうち魔族領での話を聞かせてくれよ。」

「はい。訓練の合間にでも。」

 2人はそう話し劇に集中する。


 2時間にも渡る劇が終了した。

「いやー世界創造の話は初めて聞きましたが面白いものですね。」

 藍鷲が言うと

「世界創造の話を初めて聞いた?珍しいな。普通子供の頃にでも耳にすると思うが。」

 と碧鰐が驚く。

 そう言えば碧鰐には藍鷲が魔族だとはまだ伝えていなかった。

 茶牛に関しては藍鷲の到着時に話を聞いている為、察しは付く。

「まぁいいでねぇかぁ。人それぞれだぁ。面白いもん見れたなら良かっただぁ。」

 なんとなくぼやかす茶牛。茶牛も魔族が仲間にいる事は隠す方向で考えているようだ。


 その後も露店で買い物をし、買い食いしながら祭りを堪能した6人だった。


 翌日。

 主神祭2日目である。

 なぜ主神祭が1週間も行われるかというと、遠方から参加する者も大勢いる為、客層の移り変わりを想定しての事だった。

 だから世界創造の劇は毎日行われる。

 しかし、連続して参加する者もいる為、他のイベントは日によって変わる。

 今日は美人コンテストではなく、ボディビル大会が催されていた。

 金獅子達は今日も中央噴水広場に来ていた。


 壇上には3名のブーメランパンツ一張のテカテカに身体を光らせた男達が一斉にポージングしている。

「2番いいよ!キレてる!」

「1番の僧帽筋、デカイよ!」

「3番、広背筋仕上がってる!」

 不思議な掛け声があがる。

 その声が上がる度に壇上の男達は様々なポージングを行っている。

「3番、ナイスバルク!」

「1番、ナイスカット!」

「2番、バリバリ!」

 そんなポージングが3分も続く。

「はい、ここで3名の中から準決勝に進む人を決めたいと思います。この人だと思ったら大きな拍手を。」

 美人コンテストとは違い投票券はなく、観客の拍手の大きさで勝敗が決まるらしい。

「それでは1番の選手が良かった方!」

 バチバチバチバチ!

「続いて2番の選手が良かった方!」

 パチパチパチパチ!

「最後の3番の選手が良かった方!」

 パチパチパチパチ!

「はい。では1番の声援が上がった1番の選手が準決勝進出です!」

「「「おー!」」」

 司会の言葉に会場のボルテージもあがる。


 昨日の美人コンテストは客層がほぼ男性だったが、ボディビル大会は女性も半々くらいには観戦していた。

 筋肉好きの女性もそれなりの数いるらしい。

「続いては4番から6番の選手の入場です!」

 また3名の男達が壇上に上がる。

 そこでふと銀狼が気付いた。

「おい。兄貴。あの6番目ってあの勇者パーティーにいたライオネルとか言う奴じゃないか?」

「何?あぁ。確かに似ているな。と言うか奴だな。あれは。」

「全く何してやがんだ。こんな時に。特訓なり訓練なりに力入れろってんだ。」

 呆れたように銀狼が言い放つ。

「ボディビルのような見せる筋肉と実際に使う筋肉は若干異なるからな。」

「そうなのか?」

 碧鰐が聞いてくるので金獅子が答える。

「あぁ。ボディビルは意図的に付けた筋肉で、実戦では付いた筋肉になる。身体への負荷の掛け方などが全然違うからな。実戦ではあまり負荷を掛けないように動くのに対して、ボディビルは負荷を意図的に掛けて筋肉を大きくするだろ?」

「なるほどな。そう言われてみれば違うのか。」

「儂らは実戦を通じて培った筋肉だからなぁ。人に見せる様の筋肉はしとらんなぁ。実戦ではほどほどに脂肪が乗ってる方がいいとも言うしなぁ。」

「そうなのか。我はいつでも人に見せられる状態をキープしているがな。」

 蒼龍が言う。

「蒼龍は武芸者のそれだからなぁ。確かに人に見せても恥ずかしくないレベルだなぁ。」

 茶牛が褒める。


 そんな事を話しているうちに判定のタイミングになった。

 思ったよりライオネルへの拍手が大きい。

「準決勝に進むのは6番の選手だぁ!」

「「「おー!」」」

 ライオネルが準決勝に進出した。

 その後も大会は続き、結局ライオネルは準決勝で敗退していた。

 今年も優勝者は去年に引き続き聖都で食堂を開いている店主が連覇していた。

 なんでも食堂の業務中にも筋トレを欠かさないらしい。


 露店ではおもちゃのような弓矢を用いた射的ゲーム屋に藍鷲が足を止めた。

「やってみるか?」

 銀狼に言われて

「はい!やってみたいです!」

 と自信満々に挑む藍鷲。無能の街では数少ない狩人をやっていたのだ。弓矢には自身があるのだろう。

 銅貨5枚で矢が3本。

 藍鷲は見事に3本目で狙っていた鶏のぬいぐるみをゲットした。

 ブサカワイイとでもいうのだろうか。愛嬌のある顔をしたぬいぐるみだった。

「それが欲しかったのか?」

 銀狼に問われ

「は、はい。緑鳥さんにあげようかと。」

「緑鳥に。へぇ。そうなんだ?」

「な?何がですか?変な意味じゃないですよ。お祭りに来れない代わりに何かお土産をと思いまして。」

「そうかそうか。いいんじゃないか?聖王と魔族がくっつけば魔族に対する偏見も収まるだろうし。」

「いや。だからそう言うのじゃないですって。」

 慌てて否定する藍鷲だったが銀狼は聞く耳を持たない。

「まぁ上手くやってくれ。」

「だから!もーいいですよ。」

 不貞腐れた藍鷲。


 そんな風にワイワイしながら祭り2日目も過ぎていくのであった。


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