200話 聖都セレスティア5
金獅子達が祈りの間に着いたのと、緑鳥が祈りの間を出てくるのはほぼ同時であった。
「おぉ。緑鳥、久しいな。」
「あ!金獅子様。お久しぶりです。長旅お疲れ様でした。」
「あぁ。こうして守護神の加護を持つ王、碧鰐を連れてきたぞ。」
「これはこれは、碧鰐様。わたしは聖王を勤めさせて頂いております。緑鳥、と申します。」
「また、これは丁寧に。オラァ碧鰐だ。よろしく頼む。」
スキンヘッドの頭を下げる碧鰐。
「はい。よろしくお願い致します。」
緑鳥も合わせて頭を下げる。
「ところで主神祭を今年もやる事にしたのだな?」
金獅子が緑鳥に問う。
「はい。聖邪結界崩壊から街の人々にも活気がなくなっていたので、ここで1度に活気を取り戻し手頂こうと。その方が甲蟲人が攻め込んできた際にもプラスに働くと思いまして。」
「なるほどな。民草を元気づける為、か。そう言う事なら納得だ。」
金獅子は顎髭を撫でながら頷いている。
そんな中、蒼龍が緑鳥に問う。
「それで聖神から神器の使い方は聞けたのか?」
どうやら今祈りの間にいたのは神器の使い方にらついての神託を得る為だったらしい。
「はい。ばっちりです。」
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そこは何も無い真っ白な空間。
光る球体が前方に浮かぶのみである。
「聖神様。無事に13名の王が揃いました。」
緑鳥は球体に語りかける。
『それは重畳。13名の力を合わせて邪神の目論見を討ち破って下さい。』
「はい。そこで神器の扱い方についてご教授頂けませんでしょうか?」
『あら。まだ伝えてませんでしたか。各々が持つ武具を神器化するには「神器降臨」と唱えて下さい。もちろん王化した状態でしか神器化は発動しません。』
「『神器降臨』ですね。」
『えぇ。その言葉を合図に神々が更に神力を注ぐ手はずになっています。王化の際の神力とは別立てで神力を送りますから王化持続時間に影響はありません。』
球体の光が強くなる。
「それであれば王化した際には必ず神器化するべきでしょうか?」
『いえ、神器化にも継続時間が存在します。そうですね。大体30分が限界でしょう。』
「神器化出来るのは30分ですか。」
『えぇ。今の神々ではそれが限界でしょう。まだ完全に力を取り戻せてはいないのです。』
「分かりました。神器化は30分。此処ぞという時にのみ、使用するように致します。」
『えぇ。それでお願いします。いざ邪神と戦う際に神器化出来ないなどと言う事がないよう留意して下さい。』
「畏まりました。それで甲蟲人の襲撃までにわたし達が備えられる事は他にありますでしょうか?」
球体が発する光が強く明滅する。
『そうですね。まずは王化持続時間を延ばす事。それと神器の扱いに慣れる事。それに魔王の権能として想像した魔法を扱えるようになると言うものがあります。神々が使うゲートの魔法を習得するようにして下さい。甲蟲人がどこに攻め込んでくるかは未知ですからいつでも現地に飛べる魔法が必要でしょう。』
「そのゲートと言うのはどう言った魔法になりますか?」
『神々が使う際には思い描いた場所に瞬間移動するものになります。魔王が使うとなれば1度でも行った事のある場所に飛ぶと想像した方がスムーズでしょう。』
「1度でも行った事のある場所に瞬間移動出来るのですか?」
『はい。ゲートとはそう言った魔法です。』
「畏まりました。魔王様にはゲートの魔法を習得して頂きます。」
『必ず数人が移動できるモノとして想像するように留意して下さい。1人だけの瞬間移動ではあまり意味がありませんから。』
「畏まりました。そう伝えます。」
『はい。あとは日々の鍛錬を欠かさずにお願いします。敵の数も強さも未知数です。出来ることは何でもしておきましょう。』
「はい。畏まりました。」
『地上界の王達には負担をかけますが、くれぐれも邪神の目論見を打ち砕いて下さいね。』
「はい。精進致します。」
『ではこれで。』
「はい。ありがとうございます。」
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「なるほど。30分限定の強化だと考えるべきか。」
自慢の顎髭を撫でながら金獅子が言うと、
「『神器降臨ね。』覚えやすくていいな。」
と碧鰐が続ける。
「どうなるにせよ、1度に王化した神器化を試すべきだろうな。」
銀狼も続ける。
「それでシュウカイワン、じゃない。藍鷲は今何処に?」
「はい。藍鷲様は1人でゲートの魔法を開発なさってます。イメージが重要との事で1人で集中したいからと自室に籠もられております。」
「瞬間移動だなんて、ホントに神の御業だもんな。」
銀狼は頷く。
「はい。主神祭まではあと4日ほどあります。皆さんも旅の疲れ、特訓の疲れを落とすためにも祭りを堪能して下さいまし。」
「黒猫はどうなった?」
「はい。無事に合流されて、王化も出来たと。今も聖都に向けて旅をしておられます。」
「そうか。問題なく王化出来たのだな。」
安堵の息を吐く金獅子。
自ら戦力外だと去って行った時を思い出す。
「じゃああと4日間は各自訓練して、主神祭には羽を伸ばすとするか。」
銀狼の言葉に全員が頷く。
そうして、まずは碧鰐と茶牛の王化持続時間を延ばす為に祈りの間へと全員で向かうのだった。




