197話 マジックシティ4
マジックヘブンから馬を走らせる事、4日目にして金獅子達はマジックシティに到着した。
夜遅くに到着だった為、その日は馬留に馬を泊めてから自分達の宿を探して部屋を取った。
4日ぶりの布団での就寝である。
夜間に魔物に襲われる心配もない為、いつもよりぐっすり眠れた。
明けて翌日、金獅子は学院にいるであろう朱鮫に通信用水晶を渡すために別行動を取ることにした。
「学院って一般人は入れないんじゃなこったか?」
銀狼の疑問に荷物の中から学院生用のマントを取りだして見せた金獅子が言う。
「俺様は学院生だからな。問題ない。」
「学院生?兄貴か?なんでまた?」
驚く銀狼。
「前に朱鮫に会うために学院に潜入する必要があってな。その時に学院生になったのだ。」
「兄貴が学生ねぇ。似合わないな。」
「まぁな。俺様もそう思うておるよ。」
そう言いながらもマントを羽織る金獅子。
「では学院に行って来る。お前達は街で通信用水晶が売られてないか確認してきてくれ。」
そう言い残し1人学院へと向かった。
学院に入る門に来た金獅子。
そのままノーチェックで敷地内に入る。
学院生の証であるマントを羽織っているので警備に止められることもない。
そのまま、教諭が集まる教諭室に向かう。
教諭室は1階の1番手前にあるので到着はすぐだ。
扉をノックして中に入ると見知った教諭がちょうどいたので声をかける。
「すまんが、マジックヘブンから来ている朱鮫先生に用がある。どこにいるか知らんか?」
自身が獣王国の王である金獅子は教諭に対しても敬語を使うのを忘れている。
「朱鮫先生?朱鉸先生なら訓練場で生徒と一緒に魔石魔術の実地調査中のはずだよ。」
「そうか。ありがとう。」
礼を言うと教諭室を後にする金獅子。
暫くはきちんと通っていた為、訓練場の位置もきちんと把握している。
訓練場に着いた金獅子は朱鮫の姿を探す。
すると何やら生徒と談義しているようだ。
話に割って入るのは躊躇われた為、話が終わるまで待機する。
やがて話が終わったらしい朱鮫はちょうどこちらに向かって来た。
「朱鮫。久しぶりだな。」
「お?あんさんは金獅子殿でしたな。もうマジックシティからは出立したと思ってたんやけど?」
金獅子に気が付いた朱鮫が立ち止まる。
「あぁ。ここを出立してから各地を回ってな。どうにか神徒は揃った。それで今、俺様達は聖都に向かう途中でな。」
「ほう。皆見つかったんかいな。それは良かったなぁ。」
「あぁ。これで朱鮫が合流すれば全員揃う。そこでだ。」
金獅子は荷物の中から通信用水晶を1つ取り出して朱鮫に渡した。
「なんや、これは?」
「これは通信用水晶。離れた土地にいる者同士が会話出来る魔道具だ。マジックヘブンとマジックシティで売っているのを見つけた。」
「通信用水晶?!結構お高くてなかなか手が出ぇへんやつやないか!」
「あぁ。高額だった。」
「その1つをワイに?」
「あぁ。これから他の王達は聖都に集まる。お前だけが離れた土地にいる事になるからな。渡しておこうと思って昨日マジックシティに立ち寄ったのだ。」
「そうか。わかったわ。何かあればこれで連絡する。魔石魔術の技術が確立出来たらワイもすぐ合流するかて。」
「あぁ。それともう1つ。今の王化の最大持続時間はどのくらいだ?」
「さぁ。最大言うてもいつも30分くらいで解いてまうからなぁ。」
「そうか。その最大持続時間は延ばせるはずなのだ。だから毎日最大持続時間まで王化を継続する特訓をしておいて欲しい。最低でも2時間は王化を継続出来るようにしておきたいと考えておる。」
「甲蟲人との戦闘言うんは2時間くらいは覚悟せい言う事やな?」
「あぁ。敵の規模もわからんからな。」
「わかったわ。これから毎日最大持続時間までの王化を続けるわ。」
「うむ。また何かあれば今度は通信用水晶で連絡をする。」
「あぁ。分かった。」
「では、魔石魔術の件、健闘を祈る。」
「あぁ。ありがとさん。」
そう言ってその場を後にする金獅子だった。
学院を出て街に戻ってきた金獅子。
「さて、俺様も街でも買い物でもするか。携行食も仕入れておかにゃいかんな。」
1人旅をしてからというもの、1人になった時の独り言が増えた金獅子であった。
携行食を取り扱う店を見つけて1週間分の食料を追加購入しておく。
その間にあった魔道具屋でも通信用水晶を探す事は忘れない。
だがやはり件の品はなかなか見つからなかった。
次の魔道具屋に向かった時、ばったりと銀狼と碧鰐に遭遇した。
「お!兄貴じゃないか。学院での用事は済んだのか?」
「あぁ。無事に通信用水晶を届けてきた。これでいつでも朱鮫とも連絡が取れるぞ。」
「おぉ。流石は学院生。タワーからの研究員にも直ぐ会えたんだな。」
「あぁ。ついでに王化の最大持続時間についても伝えてきた。奴も最大持続時間までの王化を続けてみるとの事だ。」
自慢の顎髭を撫でながら金獅子が言う。
「そうだな。オレ達も早く聖都に戻って特訓だな。特に碧鰐はまだ30分程度が限界だろ?そこから2時間程度には延ばさないとな。」
「おぅ。オラァ頑張って特訓するよ。」
碧鰐は力こぶを見せてくる。
「それで魔道具屋巡りで通信用水晶は見つかったか?」
「いや。見つからないね。やっぱり希少品なんだろうな。店の者に聞いても知ってる者の方が少なかった。」
「やはりか。では諦めて聖都に向かうか。」
「そうだな。」
「おう。行くか。」
「携行食は買い足した。水はまだあったよな?」
「あぁ。水は砂漠越えの時に大量に仕入れたからな。まだ余裕があるよ。」
「では向かうか。いざ聖都へ。」
「「おー。」」
そうして3人は聖都に向けて出立したのであった。




