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黒猫と12人の王  作者: 病床の翁


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195話 マジックヘブン1

 金獅子達が死の砂漠を越えるのに5日かかった。

 途中、ジャイアントセンチピートが2体同時に出た時は焦ったが、馬と駱駝を碧鰐が守り、金獅子と銀狼が1体ずつ相手にしてどうにか被害なしでくり抜けた。

 それ以外でもやはりジャイアントアントが大量に発生したり、夜でも構わずジャイアントスコーピオンが襲ってきたりと大変ではあったが、1人で砂漠を越えた時に比べれば楽なものだった。

 交代でちゃんと眠る事が出来たから体調的にも問題はない。

 だが、やはり四六時中緊張状態が続いてはいた為、魔術大国マジックヘブンの首都マジックヘブンに着いたら駱駝を牧場に売りに行き、そのまま直ぐに宿屋に入って3人ともに即座に眠りについた。


 翌日は思い立って街の商店を回ることにした。

 あの通信用水晶をさらに仕入れようかと思ったのだ。

 マジックシティで5つ購入しているので、今は全部で8個あるのだが、何処に甲蟲人が攻め込んでくるか分からない以上、これを各地に置いておけば直ぐに連絡が取れると思ったのだ。

 しかし、すでに10軒は回っているのに件の魔道具は見つからない。

 そもそも魔道具は多義に渡り、素人目では何に使う物かも分からないような物が多い。

 マジックヘブンにはそんな魔道具屋が数十軒あり、目当ての魔道具を探すのも一苦労なのである。

 そんな中での捜索となり、1日目は20軒回った所でタイムアップとなった。

 金獅子はタワーで魔石魔術を研究している朱鮫にも通信用水晶を渡しておけば後々便利だと思い、タワーに向かった。

 しかし、朱鮫はまだマジックシティから帰ってきていないらしい。

 金獅子達は朱鮫に通信用水晶を渡すのを諦めて夕飯を食べてから宿屋に戻り、1日の疲れを癒すのだった。


 翌日も魔道具探しに魔道具屋をはしごした。

 朝からすでに5軒回ったが収穫なし。

 そんな風に街を彷徨っていると、前方から人だかりが近づいてきた。

 よく見れば数人の男を取り囲むように複数の女性が群がっているようだ。

 ワーワーキャーキャーと騒ぎ立てている。

「あれはなんだ?」

 金獅子が呟くと隣にいた老人が教えてくれる。

「知らんのか?あれはクロムウェル帝国の第二皇子、アルイ・クロムウェル様じゃよ。」

「帝国の第二皇子?そんな身分の者がなぜマジックヘブンに?」

「さぁ。なんでも魔道具研究の為にタワーに来ているらしい。」

「何?タワーに?あそこは一般人は入れない研究機関だろうに。」

「あぁ。普通は入れんわな。だが相手は帝国の第二皇子じゃ。タワーの方も気を遣ったんじゃろ。」

「他国の皇子を研究機関に入れたと言うのか。」

「あぁ。数日前に突然やって来たと思うたらいきなりタワーに住み着いたんじゃ。女子共は帝国の重鎮と知って我先にとアピール合戦が始まったわい。」

「タワーに、ねぇ。」

 銀狼も話に加わる。

「オレ達も魔道具屋を巡って知った事だが魔道具ってのは多義に渡るようだ。一国の皇子がタワーに入ってまで何を研究するのかねぇ。」

「さぁ。それはわからん。そもそもタワーがどんな研究をしとるのか、研究結果が出るまでは一般公開されんからな。皇子だけじゃない。他の研究員も何を研究しておるのやら。」

「そうか。ひとまず帝国の第二皇子がマジックヘブンにいると言う事はわかった。ありがとうな。爺さん。」

「なに、世間話じゃ。こんな爺様の相手をしてくれてありがとな。」

 金獅子が礼を言ってその場を離れた。

「邪神復活の事は帝国にも伝わっているはずだ。そこに来て今頃帝国の皇子がマジックヘブンに来ると言うのはおかしな話だよな。」

 銀狼が金獅子に言う。

「そうだな。今頃軍備を整えている頃だと思うておったが、何やら考えがあるのかもしれんな。」

「帝国の皇子がマジックヘブンにいるのがそんなにおかしな事なのか?」

 碧鰐が問う。

「いやな、以前から来ておったなら話はわかるんだが、このタイミングでとなるとな。甲蟲人が攻めてくる事を知っているはずの帝国の動きだ。普通は自国の守りを固めるだろ?」

 金獅子が説明する。

「なるほどな。もしかしたら帝国が甲蟲人に滅ぼされた時の為の避難かもしらんな。」

 碧鰐がすばり正解を口にする。

「避難か。それならいいのだが、甲蟲人の侵攻に合わせて国土を広げる腹づもりかもしれん。皇帝のデュアロ・クロムウェルと言う奴は自国を広げる事に執念を燃やしている男だからな。」

「でも死の砂漠のおかげで今の国土で収まってるんだよな?」

「あぁ。砂漠越えが難しいからと言う理由で西の一体を併呑するに留まっておると聞く。」

「何にせよ、甲蟲人が攻めてくるって時に人族同士で争うような事だけはして欲しくないな。」

 そんな事を話しながら次の魔道具屋へと向かう金獅子達であった。


 結果的に目当ての通信用水晶は37軒目で見つけた。ただ数は少なく、4つだけだった。

 これで手持ちは12個になった。

 各地に配るにはまだ数が足りない。

 翌日も行っていない店を回ったが通信用水晶は何処にも置いていなかった。

 これ以上の捜索は不要だろうと言う事で滞在5日目にしてマジックヘブンを発つことにした。

 出立するに当たり、馬を購入する。

 駱駝を売った牧場に再度向かい、馬を見せて貰う。

 どれもまだ若く力強いと言う事で、その中でも脚の速い馬を2頭購入した。

 価格は大金貨4枚。ここに来てモリノのカジノで稼いだ金が活きてきた。

 3人は一路、聖都方面のマジックシティに向けて旅立つのであった。


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