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黒猫と12人の王  作者: 病床の翁


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188話 聖都セレスティア2

 その連絡があったのは緑鳥が金獅子に通信用水晶で翠鷹合流を伝えた日の夕方頃であった。

「聖王様、聖王様に会いたいと申す者が訪問しております。如何致しましょう?」

 側近の1人が緑鳥に言って来た。

「訪問者ですか?わたしに会いたいと?何のご用でしょう。」

 首を傾げながら緑鳥が言うと側近の1人は声を小さくして答えた。

「それが、神徒について、との事なのです。他の用事なら我々で相手にする所ですが、神徒の事となれば聖王様にお伝えしない訳にはいかないと思いまして。」

「神徒?確かに神徒と言ったのですか?」

「はい。間違いありません。神の使者、神徒と申しております。」

「会いましょう。応接室にお通しして。」

「は。畏まりました。」

「神徒について…何でしょうね。蒼龍様達にも、同席して頂きましょうか。」

 緑鳥はまだ祈りの間で訓練中の蒼龍と茶牛を呼びに向かった。


 暫くして、応接室に着いた緑鳥ら3人。

 件の人物はすでに応接室に案内済みだと言う。

「神徒についてと言う事は、神徒が自らやって来たと言う事か?」

 蒼龍も疑問を口にする。

「どうでしょう。他の神徒を知っている人物かもしれませんし、噂話を持ち込まれたのかもしれません。」

「もう、すぐそこにいるんだべぇ?入って聞くのが早いだろぉ」

 茶牛に言われて緑鳥達は応接室に入る。

 そこにいた人物は思いがけない、緑鳥達がよく知る人物だった。


「シュウカイワン様!どうしたのですか?」

 緑鳥は驚いて人物の名を呼ぶ。

「シュウカイワンではないか?魔族領から来たのか?1人で?」

「お久しぶりです。緑鳥さん。蒼龍さん。」

 そこに居たのは魔族領で共に旅をしたシュウカイワンであった。

 今頃無能の街で街の人に複合魔法を伝授しているはずの人物である。

「久しぶりだな。どうしたんだ?シュウカイワン?人族領にまで来て。」

 驚きを隠せない蒼龍が問う。

「えぇ。初めて人族領に来たので結構迷ってしまいました。でも聖王様に会いたいと言ったら皆さんここ、聖都に来れば会えると教えて下さって。お会いできて良かった。」

「お久しぶりです。何かあったんですか?」

 緑鳥も驚きを隠せないでいる。

 一方茶牛は始めた見る人物の為、1人落ち着いている。

「まぁ話は長くなりますし、一旦座りましょうか。」

 シュウカイワンは椅子を指して言う。

 緑鳥達も椅子に座った。


「まずはわたし、魔神の加護を授かりまして、魔王になりました。」

「「え?!」」

 シュウカイワンの衝撃発言に驚く緑鳥と蒼龍

「それと人族領で『シュウカイワン』と名乗ると魔族だと喧伝しているようなものなので、名前を変えました。漢字表記だとシュウカイワンは鳥の鷲に海の海湾になります。でも海湾鷲(かいわんしゅう)だとおかしいので皆さんに習って色プラス鷲と言う事で海湾色の藍色を付けて藍鷲(らんしゅう)と今は名乗っています。」

「藍鷲…か?魔王になった?」

「シュウカイワン様が魔王で藍鷲様?」

「えぇ。藍鷲と呼んで下さい。」

「ちょっと待ってくれ。話について行けない。シュウカイワン、いや藍鷲か。藍鷲が魔神の加護を得ただって?」

 蒼龍が話を整理しようとする。

「はい。街の皆に複合魔法を教えていた時です。いきなり眩い光に包まれたと思った次の瞬間、わたしは真っ白い空間にいました。」

「うむ。それで?」

「はい。目の前に光る球が浮いていて、頭の中に直接語りかけてきたんです。『複合魔法とは面白い魔法の使い方をする。気に入った。お前に加護を与えよう』と。」

「うむ。それが魔神だったと?」

「はい。『我は魔神、お前は今から魔王を名乗るが言い』と言われました。そして気が付いたら元の場所にいて、手には皆さんのような石がついたリングがはまっていました。」

 そう言って藍鷲は左手小指にはまったリングを見せてきた。

 確かにそのリングには藍色の石がはまっていた。

「それで、王化は試したのか?」

「はい。見ていて下さい。」

 そう言って藍鷲は立ち上がると広い場所に移動する。

「王化。魔王。」

 言うなり左手小指にしたリングにはまった藍色の石から、藍色の煙が立ち上り藍鷲の姿を覆い隠す。

 次の瞬間、煙は藍鷲の体に吸い込まれるように消えていき、残ったのはどことなく鷲を思わせる藍色のフルフェイスの兜と、同じく藍色の全身鎧に身を包んだ魔王の姿だった。

「た、確かに王化ですね。」

「うむ。王化だな。」

「はい。王化です。では、王化、解除。」

 藍鷲がそういうと藍色の全身鎧は藍色の煙になり、左手小指にしたリングにはまった藍色の石に吸い込まれていった。


 藍鷲が再び座る

 1人話について行けない茶牛が問う。

「それで3人は知り合いなんだなぁ?その知り合いが知らないうちに神徒に選ばれていたとぉ?」

「そうです。そうです。シュウカイワン様、じゃなくて藍鷲様は一緒に魔族領を旅していたのです。」

 茶牛の問いに緑鳥が答える。

「魔族領を、かぁ。一緒に大魔王と戦ったと言う事かぁ?」

 茶牛の言葉に首を横に振る藍鷲。

「いえ。貴方は初めましてですね。藍鷲です。よろしくお願いします。わたしは当時は何の力も持たない一般人でしたから大魔王との戦いの際には外で待っていました。」

「おぅ。儂は茶牛と言うもんだぁ。大地母神様の加護を授かった地王だぁ。」

「茶牛さんですね。」

「あぁ。要するにお前さんが6人目の神徒で間違いないんだな?」

「あ、もう他の神徒は集まってるんですね。そしたらわたしが6人目です。」

「驚きが勝って喜びが薄いが、これで6人全員揃ったと言う事になるな。」

 まだ驚きが継続中の蒼龍が言う。

「あぁ!わたし皆様にもこの事を伝えて参ります!6人目も揃ったと。」

 そう言うなり緑鳥は応接室を出て行った。

 白狐達と金獅子達にも6人目が現れた事を伝えに行ったのだ。

「そうか。シュウカイワン、じゃなくて藍鷲が魔王になぁ。」

 感慨深そうに蒼龍が言う。

「驚きますよね?わたしも自分の事ながらびっくりです。」


 こうして、追加の神徒が揃ったのだった。


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