185話 ララ法国7
謁見の間に入って行く白狐達3人、謁見の間は奥が一段高くなっており、玉座が設置され、そこに法王が座していた。
法王の左右には文官らしき格好をした大臣や鎧を着込んだ武官など、高齢から壮年の男達が並ぶ。
そんな中、珍しく鎧を着込んだ、肩先で髪を切り揃えた妙齢の女性の姿もあった。
衛兵について行く形で法王の目前まで進む白狐達。ひとまず跪き3人ともに頭を下げる。
「陛下、手紙の人物を連れて参りました。」
衛兵が法王に声をかけると、鷹揚に頷く法王。
ゆったりとした口調で法王が話始める。
「うむ。余が法王サルサ・ララである。お主らがサルマの言う神の加護を持つ神徒とやらか?」
頭を上げろと言われない為、頭を下げたまま白狐が答える。
「はい。私達はそれぞれがそれぞれの神の加護を得た神徒です。」
「ふむ。それで我が国の軍師に会いたいとか?」
「はい。軍師殿のお噂はかねがね。是非とも1度お目に掛かりたいと思いまして。」
「そうか。余に会いたい理由は軍師に会う為か。まぁ良い。頭をあげよ。」
そこでようやく頭を上げるように言われて跪いたままに頭を上げる3人。
「では早速で悪いがその神の加護とやらをここで見せてはくれるか?サルマが見たというのだ。余も見てみたいと思ってな。」
サルサは出し物でも見るかのように3人を眺めて言う。
「分かりました。では私が失礼して。」
白狐が立ち上がる。
僅かに鎧を着込んだ武官に緊張が走る。
「では参ります。王化!破王!!」
言うなり白狐の右耳にしたピアスにはまった真っ白い石から、白い煙が立ち上り白狐の姿を覆い隠す。
次の瞬間、煙は白狐の体に吸い込まれるように消えていき、残ったのはどことなく狐を思わせる真っ白いフルフェイスの兜と、同じく真っ白い全身鎧に身を包んだ白狐の姿だった。
周りの武官、文官からもどよめきが上がる。
「ほうほぅ。これが神より授かった加護の力か。」
どこか落ち着いた様子のサルサ。
「はい。神から借り受けた神通力で鎧を形成しているのです。もう宜しいですか?」
「あぁ。面白いものを見せて貰った。」
「では、王化、解除。」
白狐がそういうと真っ白い全身鎧は白い煙になり、右耳にしたピアスにはまった真っ白い石に吸い込まれていった。
また跪く白狐。
武官、文官達はまだざわついている。
「それで軍師に会いたい理由は何なのだ?ただ噂を聞きつけてと言うだけではあるまい?」
サルサが続けて白狐達に問う。
「はい。実は私達は他の神の加護を持つ人物を探しておりまして、ここ最近の軍師殿のご活躍の噂から軍師殿も神の加護を得たのではと思った次第です。」
白狐は素直に話す。
「やはりそうか。では邪神復活の件は本当なのだな。」
サルサは鷹揚に頷く。
「陛下は邪神復活の事を御存知で?」
「うむ。軍師から聞いておる。邪神の復活と異界からの侵攻であろう?」
サルサの言葉に武官、文官達がさらにどよめく。
「軍師殿から?ではやはり軍師殿は神徒?」
「うむ。軍師、翠鷹よ。前に。」
「はっ。」
前に出たのは鎧姿の妙齢の女性だった。
「ウチが軍神の加護を得た賢王、翠鷹です。」
「軍師と言うから男性だとばかり思っていました。」
白狐が素直に感想を言う。
「おぉ!やはり軍師が神徒であったか!」
思わず立ち上がる紫鬼。
それを見た武官が声を上げる。
「おい!貴様!法王陛下の御前だぞ!控えよ。」
「ワタシ達は神徒に用があって来たのだ。お前達は黙っていろ。」
紺馬も立ち上がる。
「なっ!?なんだと、引っ捕らえて牢に入れてくれようか!」
顔を赤らめた武官が言う。
「またワタシを牢屋に閉じ込めると?次はワタシも黙って捕まったりしないぞ?」
ぐいっと前に出る紺馬。
「まぁまぁ。紺馬さんも落ち着いて。」
紺馬を宥める白狐。
「邪神復活の事を知っているのに、何故このタイミングで戦争など起こしたのだ?」
分からないと言う風に紫鬼が問う。
これに答えたのは翠鷹だった。
「このタイミングだからだわ。異界からの侵攻に備えて国同士が力を合わせられるよう、軍事的に配下に置いたのよ。」
「力を合わせるなら軍事衝突など必要あるまい?」
「有事の際にどちらが主導権を握るかで揉めるのが人間言うものですからね。先にどちらが上かを決めておいたほうが、いざという時にスムーズだわ。」
「そんなもんかね。」
「そんなものなのよ。」
そこにサルサが割って入る。
「兎に角、邪神の復活などと翠鷹が言い出した時は何を突飛な事をと思い、他の者達には伝えんかったが、こうも他の神の加護を持つ者達が現れては事実だと思う他あるまいな。」
邪神復活については法王と軍師だけの共有事項だったらしい。
サルサの言葉に一同がどよめいた理由が分かった。
「その前に1つ確認させて頂いても?そこの軍師殿が神徒だと言う証拠はありますか?」
「うむ。翠鷹。見せてみよ。」
「はっ。王化。賢王。」
翠鷹が言うなり右手薬指にしたリングにはまった翠色の石から、翠色の煙が立ち上り翠鷹の姿を覆い隠す。
次の瞬間、煙は翠鷹の体に吸い込まれるように消えていき、残ったのはどことなく鷹を思わせるフルフェイスの兜と、翠色の全身鎧に身を包んだ賢王の姿だった。
「なるほど。事前に賢王の王化を御存知だったから先程私が王化しても驚かなかったんですね。」
「うむ。そう言うことだ。」
「これで軍神の神徒だと信じて貰えたかしら?」
「えぇ。もう大丈夫です。」
「じゃあ、王化、解除。」
翠鷹がそういうと翠色の全身鎧は翠色の煙になり、右手薬指にしたリングにはまった翠色の石に吸い込まれていった。
「さて、これで神徒同士の顔合わせは成ったな。あとは当事者のみで話をするといい。おい、会議室を用意してやれ。」
サルサは1人の文官に指示を出す。言われた文官は急ぎ謁見の間を出て行った。
「あ、最後に邪神復活については近々聖都から聖王の名で正式な書状が届くと思います。」
白狐の言葉に頷くサルサ。
「ではこれで謁見を終わりとする。」
サルサのその一言で法王への謁見は終了したのだった。




