184話 ララ法国6
白狐達がララ・ライカを出発して首都ララ・ダウトに到着したのは8日目の事だった。
ララ・ダウトの街並みは煉瓦造りの家や石材で出来た家、木造で出来た家など、統一性のない作りになっていた。
これはララ・ダウトの周りの土地に森もあれば岩山もあり、様々な資材が手に入る環境だからこそだろう。
街の人達はやっと戦勝モードが終わり日常を取り戻しつつあった。
白狐達は宿屋に部屋を取ると早速法王の居住区となる貴族階級の住まう区画にやって来た。
どの家も家の前に大きな門を擁し、中には門番まで立たせている家もあった。
そんな貴族階級の住まう区画にあっても目を引くのが法王の住まう城、法王城である。
白狐達の目からしても国の規模の割にデカイ城だなと言った印象である。
石材仕立ての4階建てである。
法王城の周りにはぐるりと高い塀が取り囲み、侵入者の侵入を拒んでいた。
そんな法王城の門にはもちろん門番が立っていた。
その門番に近付きながら懐からララ・ライカの領主サルマ・ララから預かった法王向けの手紙を取り出す白狐。
「む?貴様らここが法王城と知っての訪問か?何用であるか?」
門番の片方に声をかけられる。
「はい。ララ・ライカの領主、サルマ・ララ様からのお手紙を預かって参りました。」
「む?手紙の運搬を傭兵に頼むとは珍しいな。しかし、確かにサルマ様の封蝋であるな。分かった。法王様へお渡ししておこう。」
「あー出来れば直接お渡ししたいんですけど?」
「何?どこの馬の骨とも知れぬ者達を法王様の前に立たせる訳にはいかん。手紙は預かる。さっさと去ね。」
しっしっと手を振る門番。
「そうですか。ですが、手紙を読んで頂けたら私達の事も書いてあると思います。私達は鳥籠亭に宿泊しておりますので、ご用の際にはそちらをお尋ね下さい。」
「あぁ?わかった、わかった。鳥籠亭だな。分かったからさっさと去れ。」
再びしっしっと手を振られて白狐達は門の前から離れた。
「気にくわん奴だな。」
「まぁ、何処に行っても城の門番なんてあんなもんですよ?」
「ワシらを犬のように扱いおって。気に入らん。」
「まぁまぁ、お2人とも抑えて。世間での傭兵の扱いなんてあんなもんです。特に城勤めなんかしてる人達から見ればフラフラしてる放蕩者だと思っているかもしれません。」
「むぅ。そんなものか?」
「そんなもんですよ。」
紫鬼の問いに答える白狐。
「まぁ、暫くは使者も来ないでしょうし、どこかの食堂でご飯にしましょう。もう夕飯の時間ですし。それからギルドに顔出して情報収集しましょう。」
「そうだな。ワタシは腹が減った。」
「ワシもだ。久々に携行食じゃない、まともな飯にありつけるな。」
「そうですね。そしたら何にしましょうか?肉系?魚系?」
「そうさな。ワシは久々に食うならカレーが良いのぅ。」
「カレーかワタシもそれでいいぞ。」
「じゃあカレー屋さんに行きましょうか。」
そうして3人はカレー屋へと向かうのだった。
カレー屋での食事を終えて傭兵ギルドに向かう途中。
「やはりクロの奴が作るカレーより美味いカレーにはなかなか出会えんな。」
「クロさんのは絶品でしたからね。」
「そこまで美味いのか。是非食べてみたかったな。」
「全て終わったらクロさんに会いに行きましょう。そしたらカレーも食べさせて貰えますよ。」
「そうだな。」
そんな会話をしながら傭兵ギルドに到着した。
傭兵ギルドでの情報収集は空振り。
神徒も王も情報なしだった。
肩を落として宿屋に戻ると衛兵らしき装備に身を固めた壮年の男が出迎えた。
「お前達が白狐とその仲間達か?」
「えぇ。そうですけど?」
「法王陛下が謁見されるそうだ。明日の朝10時に城まで来るように。」
「おお。手紙の効果があったのぅ。」
喜ぶ紫鬼。
「来るようにって命令口調なのは気に食わんな。」
苛つく紺馬。
「分かりました。明日10時に城に参上しましょう。」
「うむ。用件は以上だ。」
それだけ言うと壮年の衛兵は帰っていった。
「早速手紙の効果があって良かったわぃ。」
「そうですね。思った以上に素早い呼び出しでした。流石は法王の従兄弟の手紙ですね。」
「うん。手紙を書いてくれたアイツには感謝だな。」
三者三様の喜び方ではあるが、思ったよりもずっと早く軍師に会えそうである。
「寝坊する訳にはいかないですから、今日は早く寝ましょう。」
「うむ。」
「うん。分かった。」
そうして3人は眠りについた。
明けて翌日。
10時にとのことであったが、念の為10分前には法王城に着いた3人。
門番に訪問を伝えると、
「む?貴様らの入城許可は10時になっておる。暫く待て。」
との事でしっかり10分待たされた。
「折角10分前行動したのに無駄だったな。」
「融通の利かん奴らよな。」
「まぁ郷に入っては郷に従えってやつですよ。仕方ありません。」
長い事生きているだけあってこう言う事には慣れているのか、白狐だけは冷静だった。
「よし、入城を許可する。ついて来い。」
門番に言われてその後を追う。
城の中は高価そうな壺やら花瓶が並び、花瓶には色鮮やかな花が生けてあった。
門番は真っ直ぐに謁見の間に連れて行くようだ。
2階に上がり、一際大きい扉の前で止まる。
扉の左右には衛兵らしい兵士も待機している。
門番は衛兵に申し送りすると白狐達を置いて戻って行った。
「さぁ、法王陛下がお待ちだ。準備はいいな?」
衛兵に声をかけられて3人は頷く。
衛兵も頷き返すと1拍おいてから大きな扉が開かれたのだった。




