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黒猫と12人の王  作者: 病床の翁


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183話 クロムウェル帝国3

 オークエンペラーの襲撃から明けて今日は領主邸に行く約束の日である。

 午前中には昨日のオーク討伐の報酬を貰いに傭兵ギルドに赴き、更に情報収集をしたがやはりこれと言った話はない。

 これまでにも街の食堂や酒場で情報収集したが、全くこれと言った話は聞けなかった。

 領主とミジャーノの情報に何か希望があることを祈りつつ、午後に領主邸へと向かった3人。

 門番にも今日の訪問事は伝わっており、すぐに屋敷内から案内人が現れる。

 まだ若いが執事の格好をした青年だった。

 青年は先日と同じく応接室に3人を案内すると部屋から出て行った。

 この前と同じようにソファに座って暫し待つ。


 思ったよりは待たされる事無く、領主カイゼスと兵士長ミジャーノが部屋に入って来た。

 その顔は浮かない表情であり、聞くまでもなく情報がなかった事を物語っていた。

「申し訳ないが私の周りや聞ける範囲で確認したが神の加護を得たというような人物には皆心当たりがないようだった。」

「私の方も兵士達に聞き込みしましたが該当の人物の情報はありませんでした。」

 カイゼスに続いてミジャーノも言う。

「そうか。まぁ簡単には見つからんとは思うておった。探してくれただけでも感謝する。」

 頭を下げる金獅子達。

「次は第三の都市ガルダイアに、第二の都市ダームールー、そして首都ゼーテに向かわれると言っていたな?私の方で各地の領主向けに紹介状を書いておいた。流石にゼーテの領主となると帝王になるからゼーテでは大臣向けにはなるが是非持って行ってくれたまえ。」

 カイゼスは3通の手紙を寄越してくる。

「おぉ。それは助かる。モーリス以外には伝がなかったのでな。ありがとう。」

 手紙を受け取ると礼を言う金獅子。

 これ以上留まる理由もない為、領主邸を後にする3人。


 モーリスからガルダイアまでは4日間ほどの道程であると傭兵ギルドで聞き込み済みだ。

 街で1週間分の携行食と水を買い込むと早速次の街へと向かう事にした。

「次はガルダイアだな。」

「あぁ。俺様も行くのは初めての土地だ。」

「オラァ若い頃、少し立ち寄った事がある程度だな。森に囲まれた街だったな。」

「オレも傭兵団での仕事で少し寄ったくらいなもんだ。確かに森の中にあった記憶があるな。」

「ふむ。みなあまり知らない土地か。まぁそれも良かろう。」

「それにしても紹介状を貰えたのは僥倖だったな。」

「だな。感謝せねばな。」

 そう話しつつ、馬留に向かい、停留料を払い、馬に跨がる。

 3人は次の街へ向けて南下を始めたのだった。


 碧鰐は王化持続時間を延ばす為、定期的に王化しながら、最大王化時間までの王化を繰り返しての移動となった。

 まだ最大王化持続時間は30分程度だ。


 南下を初めての5時間程度、目の前には森が見えてきたが、もう辺りは暗くなってきている為、平原で野営の準備をする。

 今日の夕飯はまだ街に近い事もあり握り飯が入った弁当を買ってある。

 明日からは携行食になる為、しばらくまともな飯の食べ収めである。

 自然と身の上話が始まった。

「ほう。では2人は元々同じ傭兵団に所属していたのか?」

 碧鰐が金獅子と銀狼の話を聞いて言う。

「あぁ。最初は別の傭兵団に一緒に所属してたんだが、意気投合してな。その傭兵団を離れて一緒に別の傭兵団ファングを結成したんだ。」

「一緒に元の傭兵団を抜けた訳か。」

「あぁ。で、俺様が獣王就任のタイミングで傭兵団ファングを抜けてな。その後は銀狼に引き継いだ訳だ。」

「それで傭兵団シルバーファングに名前も変えたんだ。」

「なるほど。で、その傭兵団がガダン襲撃の際に壊滅したと。」

 フォークで弁当をつつきながら話す3人。

「そうだ。当時はまだオレも神徒に選ばれていなくてな。Aランク相当の傭兵20人にもなる大所帯だったんだが、1人の魔人に手も足も出なかった。相手は魔法使いだったんだ。」

「魔法使い…魔族だけが使える魔法か。見た事はないが詠唱いらずの魔術なのだろ?」

「あぁ。詠唱もないからポンポン連射が出来たようでな。次々と仲間が倒れていったよ。」

「魔術も大概だと思っていたが、それを上回るのが魔法か。世界は広いな。まだ知らない事が沢山ある。ある程度傭兵稼業やって色々と知ったつもりになっていたがな。」

「あぁ。オレも同じさ。傭兵やってても魔族の事なんてほとんど知らなかった。」

「それは俺様も一緒だな。そもそも200年もの間、聖邪結界で分断さるておったのだ。魔族の情報も片鱗しか人族領には残っていなかったのだ。」

 顎髭を撫でながら言う金獅子。

「で、王になった銀狼が金獅子を尋ねたのが久々の再会だった訳か。」

「そうだ。5年ぶりの再会だったな。」

「あぁ。他の王と聞いてすぐに獣王を頭に思い浮かべてな。」

「なるほどなぁ。それでそこから1年以上旅してた訳か。」

「そうだな。他の神徒探して、魔族領に行って1年以上は一緒にいるかな。」

 弁当を食べ終えた銀狼は食後のコーヒーの準備をしながら会話を続ける。

「それにしてもオラァ達も知らない所で魔族の人族領侵攻が計画されてて、それを阻止してたってんだから驚きだな。もっと広まっててもおかしく無いだろうに。」

「最初の被害がガダンだけであったからな。帝国にしか影響も出なかったから他の国々にはガタン崩落の話しか流れんかったのだろう。」

「そうだな。最初は聖邪結界崩壊の影響で、魔族が攻めてきてガタンが滅びたって話だったのが、途中で魔物のスタンピードで滅びたって話に変わってたくらいだしな。」

 銀狼が入れてくれたコーヒーを受け取りながら碧鰐が言う。

「まぁ人の耳に入ろうが入るまいが魔族の侵攻は食い止めたんだ。今度の甲蟲人侵攻も食い止めねばな。」

 銀狼が入れたコーヒーを啜りながら金獅子も言う。

「あぁ。世界を護ってモードの村も護るんだ。」

 力強く碧鰐が言う。

「その為にもまずは王化持続時間を延ばすための特訓だな。寝る前まで続けるといい。魔物が出てもオレと金獅子の兄貴で対処するから。」

「むぅ。そうさせて貰おう。王化。仁王。」

 コーヒーも飲み終わり早速王化する仁王。

 こうしてモーリスを出発しての1日目が過ぎていく。


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